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「DCU」「ドラゴン桜」「下町ロケット」…阿部寛が「日曜劇場」で起用され続ける理由

日曜劇場「DCU」で主演を務める阿部寛さん。「ドラゴン桜」「下町ロケット」「新参者」など多くの日曜劇場作品で起用が続く背景に筆者が迫ります。

阿部寛さん(2019年3月、時事通信フォト)
阿部寛さん(2019年3月、時事通信フォト)

 きょう3月20日、最終回を迎える日曜劇場「DCU」(TBS系)。海上保安庁に新設され、水中の事件や事故の捜査を行う架空の組織「DCU」(潜水特殊捜査隊)のメンバーたちの活躍を描いた同作で、主人公の新名正義を演じているのが阿部寛さんです。

 横浜流星さん演じる若手隊員・瀬能陽生をはじめ、個性あふれるDCUのメンバーをまとめ上げ、毎回、堅固なリーダーシップを発揮。これまで、さまざまな難事件を解決してきたDCUですが、阿部さん演じる新名の勇姿もこれで見納めとあって、少なからず寂しい思いをしている人も多いのではないでしょうか。

 阿部さんといえば、「新参者」(2010年)にはじまり、「下町ロケット」(2015・2018年)、「ドラゴン桜」(2021年)、そして今回の「DCU」で、日曜劇場の主演を務めるのは5回目。まさに“日曜劇場の顔”と言っても過言ではありません。

 ではなぜ、それほどまでに阿部寛という俳優が日曜劇場にハマっているのでしょう。

人気と実力に裏打ちされた主役の座

 その理由の一つは、阿部さんの安定した人気です。

 1983年にモデルデビューし、1987年に俳優デビューした阿部さん。長いキャリアの中でスキャンダルが全くないことからも、視聴者の好感度が非常に高いことがうかがえます。

 他局のドラマですが「TRICK」シリーズ(テレビ朝日系)や「結婚できない男」(関西テレビ・フジテレビ系)、「まだ結婚できない男」(同)で阿部さんが演じた、カタブツだけど面白いキャラクターは、男性を中心にかなりの人が親近感を抱いているのではないでしょうか。

 また、ファンにはおなじみですが、公式サイト「阿部寛のホームページ」は、そのシンプルさが人気なだけでなく、もともとファンサイトだったものが、後に事務所公認になったというエピソードもすてきです。

 モデル出身という華やかなキャリアを持ちながら、まったく偉ぶらないその控えめで律義な性格と、バラエティー番組などで時折見せるチャーミングな一面に、男女問わず多くの人が引かれるのだと思います。

 そしてもう一つが、確かな演技力です。

 クセのある刑事、不屈の精神を持った町工場の社長、型破りな弁護士、そして潜水特殊捜査員。これほどまで幅広いキャラクターを演じられる俳優はなかなかいませんし、しかも、それぞれがドラマの中でしっかりと個性を確立しています。それは、まさに阿部さんが毎回、一役入魂のごとく、与えられた役に全身全霊で生命を吹き込んでいるからだと思います。

 最近では、「ドラゴン桜」で阿部さんが演じた主人公・桜木健二が、お笑いコンビ・ラパルフェの都留拓也さんによって、モノマネのネタにされるまでに至りました。ファンからすると複雑な心境かもしれませんが、1人の俳優が演じたキャラクターがモノマネのネタとして成立するには、田村正和さんや木村拓哉さん、福山雅治さん、織田裕二さん、藤原竜也さんといったトップクラスの個性がないと難しく、ほとんど見当たりません。

 裏を返せば、そこまで阿部さんが演じた役が世の中に浸透しているという証拠でもあり、俳優としてはむしろ名誉なことではないでしょうか。

看板を背負う責任感と使命感

「日曜劇場」という歴史のある、まさに局の看板とも言える枠を担うにふさわしい俳優となると、その数はおのずと限られてきます。また、「次はどんなドラマを見せてくれるのか」と視聴者の注目度が常に高いため、制作サイドとしては、なかなか冒険することはできませんし、失敗が許されないプレッシャーは相当なものでしょう。

 となると、やはりある程度の人気と数字の見込めるキャスティングや、間口の広い王道のストーリー展開を用意するのは、やむを得ないことなのかもしれません。

 しかし、主役としてその期待に応えて結果を出すということは、実はものすごく難易度の高いミッションでもあります。「下町ロケット」の佃航平しかり、「ドラゴン桜」の桜木健二しかり、「DCU」の新名正義しかり、近年の阿部さんの演技に、重圧をはねのけるような力強さが感じられるのは、そのためかもしれません。

 同時に、主役として看板を背負う責任感・使命感がそれらの役と絶妙にオーバーラップし、見ている私たちも思わず、一緒になって応援してしまうのではないでしょうか。

 いずれにせよ、ここ数年続く起用は俳優としての期待値の高さでもあり、阿部さんにとって大きな勲章であることは間違いありません。確かな人気と実力を兼ね備えた阿部さんなら、きっと日曜劇場をこれからもたくましくリードしてくれると思います。

(ライター 中村裕一)

中村裕一(なかむら・ゆういち)

ライター

Yahoo!ニュース個人エンタメオーサー。主な執筆媒体は「マイナビニュース」「週刊SPA!」「日刊SPA!」「女子SPA!」「フジテレビュー!!」「テレ朝POST」「AERA dot.」など。テレビドラマをはじめ、エンタメ関連のインタビューや記事を手掛ける。ツイッター(https://twitter.com/Yuichitter)。

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