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自社商品を強制購入させる「自爆営業」、なぜなくならない? 法的問題は?

売り上げ目標を達成するため、会社が社員に自社の商品やサービスを強制的に購入させる「自爆営業」が問題となっています。なぜ、なくならないのでしょうか。

過大ノルマで自爆営業、なぜなくならない?
過大ノルマで自爆営業、なぜなくならない?

 会社が売り上げの向上を図るため、社員に対し自社の商品やサービスを強制的に購入させる、いわゆる「自爆営業」が以前から問題となっています。特に、営業ノルマが厳しい会社を中心に、こうした行為が横行しているようですが、なぜ、自爆営業はなくならないのでしょうか。社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。

見えを張ろうと、実力以上の目標を設定

Q.そもそも、「自爆営業」のどのような点が問題なのでしょうか。

木村さん「自爆営業とは、企業の売り上げの増大やノルマ達成を目的として、従業員が自己負担で自社の商品やサービスを購入することをいいます。上記の目的以外、例えば、従業員があくまでも自分の意志で自社物品やサービスを購入した場合は、自爆営業とはいいません。

自爆営業を行うケースでは通常、会社から従業員本人か所属する部署全体に、通常の営業活動では達成不可能な重いノルマが課せられており、ノルマを達成できない場合は、上司からの叱責や減給、人事考課がマイナス評価となるなど、該当従業員の処遇に影響する行為が日常化されています。

要するに、自爆営業をしてでもノルマを達成しないと職場に居づらくなるのです。自爆営業が問題となった代表的なケースとしては、郵便局(年賀はがき、ふるさと小包、かんぽなど)、アパレル(自社製品の洋服)、金融機関(生命保険など)、コンビニ(クリスマスケーキ、恵方巻きといった季節商品)があります」

Q.会社側が社員に厳しいノルマを課し、自爆営業を事実上強制した場合、法的問題はあるでしょうか。

木村さん「企業が従業員に対して、売り上げ目標やノルマを設定すること自体は、企業の営業活動において日常的に行われていることであり、違法ではありません。しかし、自爆営業に至る原因となる『目標が達成できなかった場合に、商品買い取りの強制や減給など何らかのペナルティーを科す』ことは問題であり、違法となります。

法的な根拠は労働基準法16条『使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない』、同24条1項『賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない』です。法律に違反した場合の罰則は、16条は『6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金』(同119条)、24条1項は『30万円以下の罰金』(同120条)となります」

Q.目標未達成時のペナルティーは決められていないものの、未達成時に上司から激しいプレッシャーをかけられるために自腹で自社商品やサービスを購入した場合、自爆営業と見なされるのでしょうか。

木村さん「部下の営業ノルマが達成されないと、部下だけではなく上司の評価も下がることになります。そのため、上司が部下に過度なプレッシャーをかけることがよくありますが、この行為は部下に対するパワハラと見なされる可能性があります。パワハラが認められた場合は自爆営業と見なされ、企業が責任を負うこともあり得ます」

Q.なぜ、自爆営業はなくならないのでしょうか。

木村さん「一般的に解釈すると、会社とは『営利を目的として経済活動を行う団体』であり、会社を継続させるためには、絶えず利益を上げていく必要があります。

売り上げ目標の設定値が会社の体力や周囲の状況からみて順当であればよいのですが、中には『毎年必ず右肩上がりで利益を出さなければならない』『同業他社や社会に対し、業績が好調であるように見せたい』などの理由で、会社側が過大な売り上げ目標を掲げる場合もあります。また、そのようなケースは、企業内でも部署間の競争のような形で起こり得ます。

その結果、売り上げ目標がほぼ達成不可能な設定値となり、従業員やフランチャイズ店のオーナーが自爆営業せざるを得ない状況になると考えられます」

Q.自爆営業に関する相談は増えているのでしょうか。

木村さん「具体的な件数は不明ですが、労働基準監督署や弁護士などの専門家へ相談しているケースはあります。特に、今回の新型コロナウイルスの感染拡大で景気が後退すると、売り上げが落ち込む企業が多くなり、落ち込んだ利益を補う目的で従業員が自爆営業を行うケースがさらに増え、相談件数も増加すると考えられます。

主な相談内容は『会社から売り上げやノルマ達成の目的で、物品やサービスを強制的かつ複数回にわたり購入させられた』『営業職で、支給された給料より自腹で支払う営業経費の方が高くついた』『営業ノルマが達成できないと上司から強い叱責を受け、その結果、自爆営業をせざるを得ない状況になった』などです」

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木村政美(きむら・まさみ)

行政書士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

1963年生まれ。専門学校卒業後、旅行会社、セミナー運営会社、生命保険会社営業職などを経て、2004年に「きむらオフィス」開業。近年は特にコンサルティング、講師、執筆活動に力を入れており、講師実績は延べ700件以上(2019年現在)。演題は労務管理全般、「士業のための講師術」など。きむらオフィス(http://kimura-office.p-kit.com/)。

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1件のコメント

  1. 旧現業の民営・分社化されたあるグループ会社は、ノルマ営業やそれに伴うパワーハラスメントなどで社内処分が先日「とりあえず形だけ」行われたと報道がありましたが、曲がりなりにも株式会社なので、一部の株主からの訴訟問題に発展してもおかしくない事例ではないのかと、一般常識としては思うのですが・・・。