新宿の男性首つりでも…事件の被害者などを撮影してネットにさらす行為、法的責任は?
拡散だけでも損害賠償の可能性
Q.撮影された被害者が亡くなっていた場合はどうでしょうか。
伊藤さん「刑法230条2項は、『死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない』と規定しています。逆に解釈すると、虚偽の事実を摘示しているのであれば、死者に対しても名誉毀損罪が成立し得るということです。“さらす”行為についても、写真とともに投稿したコメントに虚偽の事実があれば、名誉毀損罪に問われる場合があります。
一方で民事の場合、死者に対する名誉毀損やプライバシー侵害については、現在は認められ難い状況となっています」
Q.さらし行為に遭った人が亡くなっていた場合、遺族や友人が何らかの法的手段に訴えることは可能でしょうか。
伊藤さん「遺族が何もできないわけではありません。故人に対する遺族の『敬愛追慕の情』についても、法律上保護されるべきであるとした裁判例があり、損害賠償請求や、写真の削除請求ができる可能性があります」
Q.ネット上でさらされた現場や人物のショッキングな画像の拡散に加担した場合、罪に問われる可能性はあるのでしょうか。
伊藤さん「拡散に加担するだけでも、民事上の責任を負う可能性はあります。実際、過去の裁判例では、ツイッター上でリツイートをしたことをもって名誉毀損に該当するとして、損害賠償請求を認めたものがあります。理論上は、刑事上の責任を問われる可能性もないとは言い切れません」
Q.ネット上でさらされた現場や人物のショッキングな画像を思いがけず目にして精神的苦痛を受けた場合、撮影者や投稿者に対して何らかの法的措置を取ることはできますか。
伊藤さん「仮に、精神的苦痛を受けたことをもって、撮影者や投稿者に対して民事訴訟を起こしたとして、実際に損害賠償請求が認められる可能性は低いでしょう」
Q.ネット上でのさらし行為について、過去の事例・判例はありますか。
伊藤さん「路上を歩いていた女性の写真を許可なく撮影し、ネット上にアップした事例で、写真を撮影してサイトに掲載した行為について女性の肖像権を侵害するものであると認められました(東京地裁判決2005年9月27日)。写真をアップした目的は『ファッションの紹介』でしたが、写真が掲示板サイトに転載され、心ないコメントが多数つけられて訴訟に至っています。
被害者の写真を勝手に撮影し、アップロードすれば、これと同様に転載されて誹謗(ひぼう)中傷にさらされてしまう可能性があります。その場合、自分に誹謗中傷の意思がなくとも、損害賠償責任を負うことがあり得ます。法律的にも倫理的にも、勝手に他人の写真を撮影したり、アップロードしたりするのはやめましょう」
(オトナンサー編集部)
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