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沢尻エリカ逮捕でテレビに欠落する“心の問題”という視点 「復帰後押しを」と専門家

問題発言を流布し続けるワイドショー

 以前、芸能人の逮捕を受けてワイドショーで、「薬物更生プログラムを続けている限り、その間に薬物の再使用があっても犯罪として処罰しない」という対策を提案した弁護士がいましたが、猛反対されました。このケースでは、反発する方に依存症の知識がないと田中さんは指摘します。

「司会者は『治療してた方がずっとやれちゃうじゃん』とばかなことを言い出しました。弁護士は『治療中に再発したら何らかの処罰は受けます』と説明したのですが、司会者は『おかしなことを言ってる』『絶対反対』と言い出しました。依存症の回復プログラムを続けている私たちへの冒とくで憤りを覚えます。

再発した当人は、回復プログラムを受けている仲間が集まっていると、罪悪感でつらくてたまらなくなります。再発はやがて仲間に知られてしまうので、タイミングを見て『またやり直そうよ』と介入があります。治療の現場は、なあなあでやっているのではなく、自分と仲間の命を守るために必死に向き合っています。現実を知りもしないのに、でたらめをたれ流しても平気という人がワイドショーを仕切っているのが現実なのです」

「『再犯の薬物依存症者は10年でも20年でも刑務所に入れろ』と言う人がいますが、そんなことをしたら刑務所があふれ返り、とんでもない税金がかかる上、刑務所に閉じ込めていても病気は治りませんから、出てきた途端に再発します。刑務所は年間400万円ほどの税負担ですが、治療ならその半分以下の負担で済み、なおかつ、再犯者率はずっと少なくなります」

 無知なコメンテーターがスケープゴートとして出してくるのが「犯人薬物使用説」です。報道されることで、人々の間で「薬物凶悪犯説」が強化されていきます。実際は、薬物を使っていない人の凶悪犯罪の方がずっと多いと、田中さんは指摘します。

 薬物がダメであることは間違いありません。しかし、薬物を使用したから「人間終了」では、思考停止で非現実的です。つるし上げた方が抑止効果があると言う人がいますが、研究で否定され、世界的にもうまくいっていません。薬物問題はつるし上げやいさめで解決しないのです。

 短絡的な思考や単なる精神論、道徳論ではなく、きちんとしたエビデンスを取り入れ、効果のある薬物対策を行うべきで、今がまさに時代の転換点ではないかと思います。

(コラムニスト、明治大学サービス創新研究所客員研究員 尾藤克之)

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尾藤克之(びとう・かつゆき)

コラムニスト、明治大学サービス創新研究所客員研究員

東京都出身。代議士秘書、大手コンサルティングファームにて、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎首相夫人)をライフワークとしている。NHKや民放各社のテレビ出演や、経済誌などからの取材・掲載多数。著書も多く、近著に「頭がいい人の読書術」(すばる舎)がある。埼玉大学大学院経済学研究博士課程前期(経済学修士、経営学修士)。

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