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立花孝志・N国党代表の政見放送が「過激」「NHKびっくり」と話題に、法的問題は?

7月21日投開票の参院選で、「過激」だと話題になった政見放送がありました。政見放送では、どのような発言も許容されるのでしょうか。

参院選で議席を獲得し、喜ぶ「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表(中央)(2019年7月、時事)
参院選で議席を獲得し、喜ぶ「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表(中央)(2019年7月、時事)

 7月21日投開票の参院選で、政治団体「NHKから国民を守る党」が比例代表で1議席を獲得しました。同党は得票率によって政党要件も満たしましたが、選挙期間中、NHKでの政見放送で立花孝志代表が“わいせつ”とも取れる言葉を連呼しており、SNS上では「誰がどう見ても過激」「NHKにびっくり」「聞かされる国民が一番不幸」などと話題になりました。政見放送でのわいせつな言葉や過激な発言に法的問題はないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

NHKアナウンサーの問題を取り上げた

Q.テレビやラジオなどのメディア、または人が集まる場所でわいせつな言葉を発しても罪に問われないのでしょうか。立花代表は政見放送内で、過去のNHKアナウンサーの問題に関する報道を取り上げる際、「不倫路上カーセックス」という言葉を計9回発していました。

牧野さん「公然わいせつ罪(刑法174条、6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料)は『公然とわいせつな行為をした者』を処罰するものです。また、わいせつ物頒布等の罪(刑法175条、2年以下の懲役または250万円以下の罰金もしくは科料)は『わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、または公然と陳列した者』を処罰するものです。『不倫路上カーセックス』という『言葉』を連呼しただけでは両罪の構成要件には該当しません。

ただし、わいせつな言葉が『放送禁止用語』にあたる可能性はあります。放送禁止用語とは、テレビやラジオなどのマスメディアで使用が禁止されている言葉ですが、法的に禁止されているわけではなく、マスコミの自主規制であり、差別的な言葉や暴力的な言葉、下品な言葉、その他、公序良俗に反する言葉が放送禁止用語となっているようです。今回の立花代表の発言が放送禁止用語に該当するかどうかは即断できません」

Q.公職選挙法で、政見放送でのわいせつな言動を規制するルールはありますか。

牧野さん「公選法150条の2(政見放送における品位の保持)は、候補者や政党が政見放送を行うにあたって、『善良な風俗を害する』言動などをしてはいけないと定めています」

Q.わいせつとも受け取れる発言をNHKがカットせずに放送したことは、法律上問題ないのでしょうか。逆にカットすることで「選挙運動の自由」の妨害になる可能性があるのでしょうか。

牧野さん「そのまま放送することが、先述した公選法150条の2に違反する可能性はありますが、同条違反については特に罰則は規定されていません。逆にカットすることで『選挙運動の自由』の妨害というよりも、憲法が保障する『表現の自由』の侵害になる可能性があるでしょう」

Q.カットすることが「表現の自由」の侵害になる可能性があるということは、政見放送でNGとなる発言はないということでしょうか。

牧野さん「もちろん、ヘイトスピーチや差別発言などの反社会的発言は侮辱罪や名誉棄損(きそん)罪にあたる可能性があり、犯罪を助長するような発言はその犯罪のほう助罪にあたる可能性があります。政見放送での発言を含む『表現の自由』は、必ずしも無制限に認められるものではありません。他の自由や利益と衝突し、それらとの調整が必要な場合は、制限されます」

Q.政見放送で、発言がカットされた実例があれば教えてください。

牧野さん「ある候補者の政見放送で、公選法150条の2が適用されて音声の一部がカットされた事例があります。男性器の俗称を言ったケースや、性器の名称といったわいせつな言葉を連呼したケースです。150条の2によると、『善良な風俗を害すること』の他、『他人や政治団体の名誉を傷つけること』『特定商品の広告など政治活動とは関係のない宣伝行為』も禁じていますが、明確な基準があるわけではなく、非常に曖昧なものです。

また、他人の名誉を傷つけることや善良な風俗とはいっても、人それぞれの基準があり、言論の自由にも関係することから、公選法150条の2の適用は極めて慎重に行われるべきものとされています。例えば、他の政治家の批判を『他人の名誉を傷つける』と理由づけてカットするようなことは、あってはならないわけです」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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