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皇居を本籍にできるって本当? 「戸籍」「本籍地」とは何か、「謄本」「抄本」の違いは?

「戸籍謄本や抄本が、本籍地以外の市区町村でも取得できるようになる」というニュースがありました。そもそも「戸籍」「本籍地」とは何なのでしょうか。

本籍地を「大阪城」とすることは本当に可能?
本籍地を「大阪城」とすることは本当に可能?

「2024年をめどに、戸籍謄本や抄本が本籍地以外の市区町村でも取得できるようになる」というニュースが5月下旬に流れました。法改正で、パスポートを取得する際などに便利になるとのことですが、そもそも「戸籍」「本籍地」とは何なのでしょうか。ネット上では「皇居を本籍地にしている人が多い」「2番目は大阪城らしい」といった情報もあります。「戸籍」「本籍地」について、グラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士に聞きました。

「住民登録」とは何が違う?

Q.そもそも「戸籍」「本籍地」とは何でしょうか。「住民登録」と何が違うのでしょうか。

刈谷さん「『戸籍』とは、国民各個人の親族法上の身分関係を公的に証明する制度のことをいいます。また、『本籍(地)』とは、戸籍の所在する場所のことをいいます。

一方、市町村(特別区、つまり東京23区を含む)の区域内に住所(生活の本拠)を有する者のことを『住民』といい、その者は、その市町村及びそれを包括する都道府県の住民たる地位を有します。そして『住民登録』とは、当該住民が、属する地方公共団体の住民であることを登録するものとなります。

以上のように、『戸籍』が人の親族法上の身分関係を公に証するためのものであるのに対し、『住民登録』は、当該地方公共団体に属する住民であることを記録するためのものである点に違いがあります」

Q.謄本と抄本はどう違うのですか。

刈谷さん「謄本とは、原本の内容を同一文字符号により全部写したもので、原本の内容を証明するために作られる書面のことをいいます。一方、抄本とは、原本の一部を抜き写したもので、原本のうち必要な部分の証明のために作られる書面のことをいいます。

『戸籍謄本』は『戸籍全部事項証明書』とも呼ばれ、その戸籍に入っている全員の氏名や生年月日、続柄など全部を写したものです。『戸籍抄本』は、その戸籍に入っている人のうち一部(通常は1人分)を写したものです」

Q.戸籍謄本や抄本が必要になるのは、どんな場合ですか。

刈谷さん「戸籍謄本が必要になるのは、相続手続きや婚姻届の提出など関係性の情報が必要な場合です。他方、戸籍抄本が必要になるのは、パスポート申請など当該個人だけの情報の証明が必要な場合です」

Q.本籍地を「皇居」「大阪城」にしてもよいというのは本当ですか。北方領土や竹島、無人島でもよいのでしょうか。

刈谷さん「本籍(地)を皇居や大阪城にしてもよいというのは本当です。本籍は、日本国領土内で不動産登記上の地番を有する地であればどこにでも設定できます。北方領土や竹島、無人島であっても、不動産登記上の地番を有する地であれば、本籍にしてよいということになります」

Q.本籍地を現住所から遠い場所にした場合、不都合はあるのでしょうか。

刈谷さん「従来、戸籍謄抄本を取得するには本籍地市区町村に請求しなければなりませんでした。それが法改正により、本籍地以外の市区町村においても戸籍謄抄本を取得できるようになりますので、その不都合は解消されたといえます」

Q.本籍地は自由に変更できるのでしょうか。

刈谷さん「本籍の変更(移転)、いわゆる『転籍』は自由に行うことができます。手続きは、本籍地、届け出人の所在地、(新本籍地となる)転籍地の市区町村のいずれでも行うことができます。また、届け出人となるのは、戸籍の筆頭者と配偶者で、単身で筆頭者となっている場合はその筆頭者本人となります」

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刈谷龍太(かりや・りょうた)

弁護士

1983年千葉県生まれ。中央大学法科大学院修了。弁護士登録後、都内で研さんを積み、2014年に新宿で弁護士法人グラディアトル法律事務所(https://www.gladiator.jp/)を創立。代表弁護士として日々の業務に勤しむほか、メディア出演やコラム執筆などをこなす。男女トラブル、労働事件、ネットトラブルなどの依頼のほか、企業法務において活躍。アクティブな性格で事務所を引っ張り、依頼者や事件に合わせた解決策や提案力に定評がある。

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