大騒ぎするだけで逮捕!? 迷惑な“酔っ払い”の責任を問う「酔っぱらい防止法」とは
大量にお酒を飲んで飲食店や路上などで大騒ぎをすると、法的責任を問われることがあります。「酔っぱらい防止法」とは。

新年会でお酒を飲む機会も増えますが、酔った勢いで飲食店や路上などで大騒ぎをすると、周囲に迷惑をかけるだけでなく、法的責任を問われることもあります。暴力を振るったり、けがをさせたりしなくても逮捕されることがある法律として、「酔っぱらい防止法」があるそうです。グラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士に聞きました。
過度の飲酒による迷惑を防止する
Q.「酔っぱらい防止法」とはどのような法律ですか。
刈谷さん「俗に『酔っぱらい防止法』と呼ばれている法律は、正式名称を『酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律』といいます。正式名称のとおり、酩酊者(アルコールの影響により正常な行為ができない恐れのある者)を保護するなどの措置を講ずることによって、過度の飲酒による公衆への迷惑防止を目的とする法律で、1961年に制定されました。
酩酊者が保護されるケースは『公共の場所または乗物において、粗野または乱暴な言動をしている場合に、その言動や酔いの程度および周囲の状況等に照らして、本人のため、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当の理由がある』と警察官が判断したときです。
簡単にいうと、酩酊者が公の場所または乗り物で暴れるなどしている場合に『このままでは、けがしたり、周りに迷惑をかけたりする恐れがある』と警察官が判断したときに、保護されることになります」
Q.逮捕されることもありますか。
刈谷さん「この法律には『酩酊者が、公共の場所又は乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をしたときは、拘留又は科料に処する』との罰則規定がありますので、この罪の嫌疑に基づき、逮捕されることもあります。
逮捕の実例として、『銭湯で、ひどく酒に酔った状態で元妻や従業員らに暴言を繰り返した』『酒に酔って、電車内で他の乗客ら4人に暴言を吐いた』『路線バスに酒に酔った状態で乗り込み、女性運転手に、函館バスの本社に向かえなどと乱暴に命じた』といったケースがあるようです」
Q.飲食店や路上でなく、自分の家で酒を飲んでいても適用される場合がありますか。
刈谷さん「『立ち入り』という形で適用される余地があります。『警察官は、酩酊者がその者の住居内で同居の親族等に暴行をしようとする等、当該親族等の生命、身体又は財産に危害を加えようとしている場合において、諸般の状況から判断して必要があると認めるときは、警察官職務執行法第6条第1項の規定に基づき、当該住居内に立ち入ることができる』との規定があります。
すなわち、酩酊者が住居内で同居する親族、たとえば妻や子ども、親などに危害を加えようとしている場合には、警察官はその住居に立ち入ることができるということです」
Q.「保護」と「逮捕」の違いは。
刈谷さん「『本人のため』なのか、『事件の捜査のため』なのか、という違いがあります。
『酔っ払い防止法』における保護は、酩酊者本人のために、救護施設や警察署など保護するのに適当な場所で行われます。そして、酩酊者の親族、知人その他の関係者に保護していることを通知し、親族などが引き取りにくれば引き渡し、引き取り手がいない場合は、24時間以内に身柄を解放します。
一方、逮捕は、被疑者の逃亡や罪証隠滅を防ぎ、事件の捜査のために行われる身柄拘束で、逮捕されている間は、捜査として取り調べを受けることになります。また、捜査のため留置する必要がある場合には、最大72時間身柄が拘束されます」
Q.「酔っぱらい防止法」の適用について、あまり聞いたことがありません。
刈谷さん「酩酊者を逮捕する場面においては、他の罪の嫌疑、具体的には暴行罪や傷害罪のほか、公務執行妨害罪や器物損害罪の嫌疑に基づき逮捕しているケースが多いと思われます。
酩酊者を保護する場面においては、泥酔だけではなく精神錯乱している者なども保護できる規定が『警察官職務執行法』という法律の3条にあるので、同条を適用して保護しているのではと思われます。また、『保護』は『逮捕』とは違うので、仮に『酔っぱらい防止法』が適用されて保護された人がいてもニュースにならず、皆さんが気付いていないだけかもしれません」
(オトナンサー編集部)
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