きょうは「節分の日」 お相撲さんや芸能人が豆をまくことには、どんな意味がある?
きょう2月3日は節分です。有名な神社やお寺では、大相撲の力士や芸能人が豆をまくことがありますが、どんな意味があるのでしょうか。

きょう2月3日は節分です。「鬼は外、福は内」と豆まきをする家庭も多いと思いますが、そもそも、なぜ節分に豆をまくのでしょうか。また、有名な神社やお寺では、大相撲の力士や芸能人が豆をまくことがありますが、それは単に『人気者だから』という理由なのでしょうか。和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。
「シコ」で「悪鬼を踏みつける」
Q.節分に豆をまくのは、なぜでしょうか。
齊木さん「節分とは本来、季節の節目を表す二十四節気の立春・立夏・立秋・立冬それぞれの前日、つまり、1年に4回ありました。しかし、旧暦では、立春は一年の始まりとして、特に尊ばれたため、江戸時代以降は『節分』といえば立春の前日を指すようになりました。
節分に豆をまくのは、新年が始まる前の日に邪気(鬼)を払い、新しい年の厄除(やくよ)けをするためです。これは中国の習俗が伝わったものとされており、豆は『魔滅(まめ)』に通じ、無病息災を祈る意味があります。
昔、京都の鞍馬に鬼が出たとき、毘沙門天のお告げによって大豆を鬼の目に投げつけたところ、鬼を退治できたという話が残っており、『魔の目(魔目=まめ)』に豆を投げつけて『魔を滅する(魔滅=まめ)』ということに通じます」
Q.豆をまく役目は、どのような人がよいのでしょうか。年男や年女、厄年の人がよいと聞いたことがあります。
齊木さん「一般的に、家庭で豆をまくのは家の主の役目になります。それぞれの部屋の窓を開けておき、まき終わったら閉め、一家の幸せを祈ります。また、年男や年女、厄年の人がよいのは、年男や年女は『縁起がいい=神が宿る』とされ、神様の加護をより多く受けられるとされているからです。
一方、厄年の人がまくのは、自らの厄を払う目的です。豆をまく役目は、『祓(はら)い・清めの役として災厄や穢(けが)れに関わる卑しい役目』とされ、室町時代は豆まきの役を避けたがるのが一般的でした。そこで、厄年の男が自らの厄払いを兼ねて務めるようになりました」
Q.掛け声が一般に「鬼は外、福は内」なのはなぜですか。
齊木さん「『鬼は外、福は内』と豆をまくのは、鬼は『悪いモノ』『目に見えない物は鬼』とされており、すなわち疫病や災いをもたらすと考えられていたためです。豆をまくことによって、自分の家から鬼を打ち払おうとしたのです。『鬼は外』で疫病や災いを外に出し、『福は内』で『春と共に幸せがやってこい』という意味が込められています。
ただ、成田山新勝寺では『鬼は外』とは言いません。掛け声は『福は内』だけです。これは、ご本尊の不動明王の霊力が極めて強力であるため、鬼は外に追い立てなくても屈服させているという考えからです。また、日本の鬼には『悪い』以外に『強い』という意味が含まれているため、各地の鬼子母神や鬼王神社では『鬼も内』と言うところもあります」
Q.大相撲の力士が豆をまくことに、特別な意味はあるのですか。
齊木さん「相撲は天下泰平・子孫繁栄・五穀豊穣を願って執り行う神事とされています。相撲取りの『シコ』は『四股』と書きますが、元は『醜(しこ)』で凶悪な鬼を表しました。シコを踏むとは、それらの悪鬼を踏み付け、鎮める悪魔払いのことを指します。節分の豆まきに力士が招かれるのは、悪魔払いのために適しているからです」
Q.それでは、芸能人が豆をまくのは。
齊木さん「芸能人が豆をまくのは、人が集まり話題になるということもありますが、芸能人がいわば『呪術者』だからです。日本の芸能の歴史をたどると、天照大神が天の岩戸に姿を隠した際、アマウズメノ命が神がかりとなって踊ったのが最初とされます。そこから儀礼が伝わり、神楽となって、猿楽、田楽と発展し、中世には能楽や狂言となりました。その芸能が、呪術的要素を多分に含み、陰陽道(おんみょうどう)と芸能の民が密接に結びついていました。
日本の芸能を行う者は、悪霊を鎮める呪術者であり、五穀豊穣を祈願する神事をつかさどる者とされていました。そこで現代では、その担い手として芸能人が呼ばれ、豆をまくようになりました」
Q.豆はいくつくらい食べるのがよいのでしょうか。
齊木さん「豆は、年齢より1つ多く食べると、その新しい年を無病息災で過ごせると言われています。節分の豆は、豆を炒る(魔目を射る)ことで邪気を払った豆ということから、『福豆』といわれます。この『福』を体に取り入れることで一年の健康を願います。地域によっては、年の数だけ頂く場合があるので、それぞれのしきたりに従って頂きましょう」
Q.豆まきのほか、節分にまつわる風習があれば教えてください。
齊木さん「節分に行われる風習として『やいかがし』があります。節分の夜に、イワシの頭を刺したヒイラギの枝を門口に掲げます。ヒイラギのとげが痛いのと、鬼がイワシの臭いに弱いとされることから、鬼が家に寄りつかないよう戸口に置くものです。邪気が家に入り込まないよう追い払うという意味があります。
春の慶(よろこ)びを祝い、家族の幸せを願った先人の心に思いをはせながら、旧暦の一年を締めくくり、新しい年に希望をつないでみてはいかがでしょうか」
(オトナンサー編集部)
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