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SNS「メークが付いていた」…テーマパーク売店の「ぬいぐるみ」触って汚したら“器物損壊罪”に? 弁護士に聞く

もしテーマパークの売店に行った際、購入する意思がないのに商品のぬいぐるみに何度も触れて汚してしまった場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。弁護士に聞きました。

買う気がないのに、テーマパークで売られている「ぬいぐるみ」を触って汚した場合の法的責任は?(画像はイメージ)
買う気がないのに、テーマパークで売られている「ぬいぐるみ」を触って汚した場合の法的責任は?(画像はイメージ)

 休日にテーマパークに行く人は多いと思います。テーマパークの売店に行くと、その施設にちなんだキャラクターのぬいぐるみが売られていることがあります。ぬいぐるみは袋に入っていない状態で売られていることが多く、中にはぬいぐるみをベタベタ触ったり、ぬいぐるみと一緒に自撮りをしたりするなどした後、そのまま売り場にぬいぐるみを戻す人がいます。そのため、ぬいぐるみが汚れることも珍しくないようです。

 こうした状況について、ネット上では「(テーマパークの売店で)ぬいぐるみを手に取ったらよだれのようなものが付いていた」「ぬいぐるみにメークのようなものが付いていた」「買わないのに(ぬいぐるみを)抱きしめて撮っている人いるよね」という内容の声が上がっています。

 もしテーマパークの売店に行った際、購入する意思がないのに商品のぬいぐるみに何度も触れたり、商品と一緒に自撮りしたりして汚してしまった場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

器物損壊罪や損害賠償責任を問われる可能性

Q.テーマパークの売店に行くと、その施設にちなんだキャラクターのぬいぐるみがビニール袋にかぶせられていない状態で売られていることがあります。もし来店時にぬいぐるみの表面に汚れを付けたり、破損させたりしてしまった場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。故意に汚した場合、誤って汚した場合のケースについて、それぞれ教えてください。

佐藤さん「商品であるぬいぐるみを汚してしまった場合、法的責任を問われる可能性はあります。故意に汚した場合には、器物損壊罪に問われることも考えられます。器物損壊罪は、他人の物を故意に損壊すると成立します(刑法261条)。『損壊』とは、物理的に壊すだけでなく、物の効用を害する一切の行為が含まれます。ぬいぐるみを汚した場合、商品として販売する目的を達することができない程度に汚せば、『損壊』に当たる可能性があるでしょう。

器物損壊罪は、被害者から『加害者を罰してほしい』という意思表示がないと検察官が起訴できない、いわゆる『親告罪』に該当するため、告訴がなければ罪に問われません(刑法264条)。器物損壊罪の法定刑は、『3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料』です。

また、故意に汚した場合であれ、誤って汚した場合であれ、民事上、損害賠償責任を問われる可能性があります。生じた損害に応じて、ぬいぐるみの代金全額の弁償を求められるケース、クリーニング費用を求められるケースなどが考えられるでしょう」

Q.では、店舗で売られているぬいぐるみを汚したり、破損させたりしたにもかかわらず、弁償せずに商品を売り場に置いてそのまま立ち去った場合、どうなるのでしょうか。

佐藤さん「商品を汚したり、破損させたりしたまま立ち去ったとしても、犯罪は成立しますし、損害賠償請求権も変わらずに存在します。従って、故意に汚したり、破損させたりしたことが疑われる事案では、後日、器物損壊罪に問われる可能性があります、過失であったとしても、後に損害賠償を求められる可能性があります。

防犯カメラの設置も進んでおり、そのまま立ち去れば逃げ切れるというものではありません。誤って商品を汚したり、破損させたりした場合は、素直に店員に告げ、謝罪するようにしましょう」

Q.テーマパークの売店では、商品のぬいぐるみを手に取って撮影した後、そのまま売り場に商品を戻す人を見掛けることがあります。この場合、何らかの法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。写真撮影時にぬいぐるみを汚損させた場合、汚損させなかった場合とでそれぞれ教えてください。

佐藤さん「店内での商品の写真撮影は、テーマパークや店ごとにルールが異なります。特に、商品を汚損することなく、商品の撮影をした場合、写真撮影可の店舗であれば原則、法的責任を問われることはありません。写真撮影不可の店舗で商品の写真を撮った場合、店員から撮影しないよう求められるでしょう。それにも従わず撮影を継続すると、店から退去するよう求められることも考えられ、それにも従わないと不退去罪が成立する恐れもあります(刑法130条)。

写真撮影時に商品を汚損させてしまった場合は、撮影可の店であれ、撮影不可の店であれ、先述した通りの汚損に対する法的責任を負う可能性があります」

(オトナンサー編集部)

【要注意】あなたはやってない!? これがテーマパークで違法となり得る行為です!

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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