食べ物がおいしい? 疲れにくくなる? 「禁煙」による体の良い変化とは? 医師に聞く
禁煙すると体にどんな変化が起きるのか、との疑問がSNS上で話題に。医師に聞きました。

禁煙すると体にどんな変化が起きるのか――。このようなテーマが先日、SNS上で話題になりました。きっかけは、お笑いコンビ・さまぁ~ずの三村マサカズさんがテレビ番組で明かした「禁煙による体の変化」。三村さんは医師に促され、31年間続けてきた喫煙を10日間(収録日時点まで)やめてみたところ、においや味に敏感になるなど「細胞が活性化したのか」と感じるほどの変化があったといいます。
SNS上でも「これ分かる!」「私も禁煙したら食べ物をおいしく感じるようになった」「運動しても疲れにくくなった気がする」「『たばこをやめなければよかった』と感じることは一つもない」と賛同する声が相次いでいます。実際、禁煙効果とはどのようなものでしょうか。医師の市原由美江さんに聞きました。
味覚や嗅覚が改善、胃腸の調子も良好に
Q.禁煙することで、食べ物をおいしく感じるようになるのは事実でしょうか。
市原さん「事実です。喫煙すると、ニコチンが脳の『ニコチン受容体』に結合し、ドーパミンが放出されることで快感を得ます。30分もするとニコチンが減ってくるため、イライラしたり、落ち着かなかったりと離脱症状が出現します。
この離脱症状を乗り越えて48時間が経過すると、体内のニコチンが消失します。すると、徐々に味覚や嗅覚が改善し、胃腸の調子も良くなるため、食事をおいしく感じられるようになるのです」
Q.禁煙によって見られる「良い変化」とはどのようなものでしょうか。
市原さん「喫煙すると、血管が収縮して血圧の上昇や脈拍数の増加が起こりますが、吸い終わってからの時間経過とともに、次のような変化が見られるようになります」
・20分後…血圧や脈拍数が正常化する
・8時間後…血中の一酸化炭素濃度が下がり、酸素濃度が上がる
・24時間後…心臓発作のリスクが低下する
・48時間後…体内のニコチンが消失し、2日目以降には味覚や嗅覚が改善する。この頃から「食事をおいしく感じるようになる」「朝の目覚めが良くなる」「肌の調子が良くなる」といった良い変化を感じ始める
・2週間~3カ月後…心臓や全身の血管の循環が改善される
・1~9カ月後…咳(せき)や喘鳴(ぜんめい)が改善し、疲れにくくなる
・1年後…肺の機能が改善する
・2~4年後…虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが低下する
・5~9年後…肺がんのリスクが低下する
・10~15年後…喫煙による、さまざまな病気の可能性が非喫煙者と同じレベルになる
Q.逆に、禁煙によって「悪い変化」が見られるケースもあるのでしょうか。
市原さん「食事をおいしく感じるようになることで、過食傾向になったり、間食が増えたりして体重が増えることがあります。しかし、喫煙のさまざまなリスクに比べると、体重増加によるリスクは軽度で、禁煙後の生活に慣れてきたら自分で体重をコントロールできる可能性が高いので、体重増加を恐れて禁煙しないのはナンセンスです。
また、ニコチンは腸を刺激する働きがあるため、禁煙すると便秘傾向になることがあります」
Q.禁煙による体の変化・効果が特に出やすい人の特徴はありますか。
市原さん「喫煙年数が長いほど効果を感じやすいと言われていますが、はっきりとは分かっていません」
Q.その他、禁煙がもたらす体へのメリットはありますか。
市原さん「喫煙により起こる病気には、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、腹部大動脈瘤(りゅう)などの血管の病気、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺自体の病気、その他さまざまながんもあります。具体的には、鼻腔(びくう)・副鼻腔がん、口腔(こうくう)・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、膵臓(すいぞう)がん、膀胱(ぼうこう)がん、子宮頸(けい)がんです。また、2型糖尿病の発症率を上げることも分かっています。
禁煙すると、これらの病気にかかる可能性が喫煙者よりも減ることになります」
(オトナンサー編集部)
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