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眼精疲労だけじゃない…受診せずに「眼鏡」作るリスクとは 眼科医が解説

眼鏡を作るときは事前に眼科を受診した方がよいのでしょうか。眼科医に聞きました。

眼鏡を作るときは眼科を受診しないとダメ?
眼鏡を作るときは眼科を受診しないとダメ?

 「遠くのものが見えにくくなった」「視力が下がり、運転免許の更新時に眼鏡が必要になった」などの理由で眼鏡を作る人は多いと思います。中には、多忙を理由に眼科を受診せず、眼鏡店で直接、眼鏡を作る人もいるようです。眼鏡を作るときは事前に眼科を受診すべきなのでしょうか。また、眼鏡は定期的に作り直した方がよいのでしょうか。いわみ眼科(兵庫県芦屋市)理事長で眼科医の岩見久司さんに聞きました。

眼鏡は細かい度数調整が必要な医療機器

Q.そもそも、眼鏡を作るときは事前に眼科を受診するのが望ましいのでしょうか。それとも、眼鏡店でそのまま視力検査を受けて眼鏡を作っても問題はないのでしょうか。

岩見さん「実は眼鏡は医療機器に属します。眼鏡の使用が健康を害するリスクは低いとされていますが、やはり自分に合った眼鏡を使わないと眼精疲労や頭痛などを引き起こします。さらに、老眼用の眼鏡や子ども用の眼鏡、乱視や斜視がある人の眼鏡などは細かい調整が必要なため、処方が難しいです。基本的に眼鏡を作る際はまず眼科を受診し、処方箋をもらってからがよいでしょう。

では眼鏡店で度数を合わせられないかというと、店によって異なります。2022年に『眼鏡作製技能士』という国家資格が誕生しました。それ以前は国家資格がなく、民間資格として認定眼鏡士というものが使われていました。つまり、最近になってやっと眼鏡店のスタッフの腕を保証する国の基準が生まれたことになります。処方箋なしで購入する場合は、せめて資格を持つスタッフがいるかどうかを確認するのがよいかもしれません」

Q.人によっては、作った眼鏡を使ったときに頭痛やめまい、肩こりなどが生じることがありますが、なぜなのでしょうか。

岩見さん「遠視、近視、乱視のピントが合っていないことが考えられます。まず遠視、近視、乱視などのピントが合ってないと、見るものの像がぼやけて脳が疲れます。ピントの位置がずれると姿勢も悪くなり、肩こりなどを誘発することもあります。

乱視については、レンズで補正し過ぎるとかえって像のゆがみが増えて眼精疲労を起こすこともあります。目の位置も鼻から右、左の位置も微妙に異なるものなので、左右のバランスが悪いときちんと見えません。

特に老眼世代の遠近両用眼鏡は、左右の位置ズレを眼鏡で補正しないと使えないものになります。眼科を受診せず、眼鏡店で度数を合わせるとそのような状況になるリスクは高いですし、眼科で処方箋をもらった場合でも微調整が必要な場合があります。何らかの症状があれば、眼科に相談してください」

Q.眼鏡は定期的に作り直した方がよいのでしょうか。例えば、同じ眼鏡を10年以上使い続けても問題はないのでしょうか。

岩見さん「20代、30代の人は目の度数があまり変わらないため、レンズの傷やフレームのゆがみだけ気をつけていれば、ずっと同じものを使ってもよいでしょう。一方、40代、特に45歳以降は老眼が確実に始まるため、老眼に合わせた度数の設定が必要です。50代に入ると軽い白内障も始まり、乱視も変動してきます。

このように、中年期以降は度数が変動するため、眼鏡も数年に1回は作り直す必要があるでしょう。老年期に入り、白内障手術が終わった後は度数がしばらく安定します。しかし、80歳以降は加齢に伴って乱視が増えるケースもあるため、そうなるとやはり数年に一度は眼鏡の更新が必要になります。そのためにも、少なくとも年に一度は眼科で検診を受けておくべきでしょう」

Q.もし眼鏡の度数が合わない状態を放置した場合、日常生活にどのような影響を及ぼす恐れがあるのでしょうか。

岩見さん「眼鏡の度数が合ってないと、眼精疲労の蓄積や情報の取り損ねが生じる可能性があります。例えば『字幕の文字が読めなくなって、映画を見るのをやめてしまう』ということが生じるかもしれません。ある程度、年齢が若い人であれば問題ないかもしれませんが、65歳以上の高齢者がそのような生活をしていると、脳への刺激が少なくなり、脳が衰える恐れがあります。

外界の情報の8割は目から入ってくるといわれており、眼鏡の度数が合っていないということは、正確な情報が脳に入らなくなることを意味します。

また、度数が合っていない眼鏡に慣れてしまうと、物が見えないときに眼鏡が悪いのか、目が悪いのかの判断もつきにくくなります。より良い人生を送るためには、やはり眼鏡の度数はきちんと合わせるべきでしょう」

(オトナンサー編集部)

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岩見久司(いわみ・ひさし)

医師(眼科専門医、レーザー専門医、医療法人社団久視会 いわみ眼科理事長、兵庫医科大学非常勤講師)

大阪市立大学医学部卒。医学博士。1日100人を超す外来診療をこなしながら、若手医師の教育や医師・医療関係者向けの講演も頻繁に行っている。加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などを得意とする網膜内科医。近年、網膜の病気につながる可能性のある子どもの近視が急増しており、近視治療にも積極的に取り組んでいる。多くの人が「100歳まで見える目」を維持できるよう、2023年度から啓発活動を展開している。いわみ眼科ホームページ(https://iwami-eyeclinic.com)。ドクターズ・ファイル(https://doctorsfile.jp/h/189711/df/1/)。いわみ眼科チャンネル(youtube)(https://www.youtube.com/@dr.iwami911eye)。

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