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【発達障害】通常学級・特別支援学級・特別支援学校は、どう選ぶ? 自閉症児を育てた母の“実体験”

発達の凹凸があるわが子が、もし「通常学級」に通ったら…? 進級先に悩む親に、自閉症児を育てた筆者が経験を伝えます。

発達が気になるわが子、もし通常学級に通ったら…?(画像はイメージ)
発達が気になるわが子、もし通常学級に通ったら…?(画像はイメージ)

 わが子に発達の凹凸があると、小学校の進級先について「通常学級」「特別支援学級(支援級)」「特別支援学校」のどれを選べばよいのか迷います。

「定型発達児の中にいて刺激を受けた方が、障害児のクラスに入るよりも、伸びるのではないか」。そんなふうに思ってしまうのが親心です。果たしてそうなのでしょうか。

 私の息子は知的障害を伴う自閉症で、現在24歳になりました。小学校1年生と2年生の2年間は特別支援学校に在籍し、行政からの指示により、小学校3年生から支援級に転校しました。つまり、息子自身は特別支援学校と支援級の両方を経験したことになります。

 現在、子育て本著者・講演家として活動している私は、息子が生まれる前の1995年、特別支援学校の教員免許を取得するため、実習生として特別支援学校に入り、わずかな期間ですが教壇に立ったことがあります。その後は20年間、学習塾を経営していました。その学習塾は、受験目的の塾ではありませんでしたから、発達障害ではなくても、学力が低い子を補習塾のような感覚で通わせる保護者も多くいました。

 こうした自分の経験からですが、発達が気になる子どもが通常学級に通った場合、考えられることをお話ししたいと思います。

通常学級とは

息子が当時、特別支援学級で使っていた教科書の内容(立石美津子さん提供)
息子が当時、特別支援学級で使っていた教科書の内容(立石美津子さん提供)

「通常学級」とは、教科書の内容を理解する知能があるかどうかを前提にしてつくられています。

 知的障害がなく、支援級に通っていない「境界知能(境界型知能)」と呼ばれる子(おおむねIQ71以上85未満)が、個人面談で担任から「勉強についていけていないので、塾に通い、学力をつけてください」と言われているケースもありました。こう聞くと、担任が無責任に見えるかもしれませんが、通常学級では学年末までに教科書を最後まで終えなくてはなりません。「理解できていない子がいたので、算数は教科書の半分までしか進みませんでした」は通じないのです。

 この画像は、息子が中学生の頃、特別支援学級で使っていた教科書の内容です。お金の計算や時計の読み方など、日常生活に必要なことが分かりやすく載っていました。一斉指導の時間もありましたが、個別の教育支援計画に基づき、個々の学習時間が多く取られ、その子の能力に応じたきめ細かな指導がありました。

 通常学級に在籍していても、自治体に人的予算があれば、加配の先生がついてくれることもあります。そうした環境下で、身辺自立(衣服の着脱など)ができていない子どもの場合についてお伝えします。

 特別支援教育では、子どもからは見えにくい上の2つのボタンは先生や支援者が留めてやり、子ども自身の目ではっきりと捉えられる下の方のボタンを自分で留めさせるなど、時間をかけて“スモールステップ”でできることを増やしていこうという考え方のもとで、指導が進みます。

 仮に、衣服の着脱が苦手な子どもが通常学級に在籍していた場合、体育の時間の後、「着替えが遅くなると授業に間に合わなくなる」と考え、加配の先生がボタンを全部留めてやったり、親切な友達が助けてくれたりして、受け身の姿勢がしみついてしまうこともあります。クラスに35人いる通常学級では、授業の流れについていくために、スピードも必要になるからです。

 一方、支援学校では、排せつの自立ができそうな子に対しては、時間を計り、ぼうこうが満杯になる直前にトイレに誘って排尿させる、いわゆる定型発達児が3歳くらいになるまでに行う「トイレトレーニング」をしていました。

 ところが、息子がいた支援級には、排せつの自立ができていない子がいました。支援級では小学校6年間の間、介護人がおむつ替えをしていました。ある程度おむつが濡れたら替えるだけで、支援学校のように本人の前回の排尿時刻を記録し、タイミングを見計らってトイレを促すトレーニングはしていませんでした。

 どうして、このようにしているのかというと……これはあくまでも私が感じたことですが、支援級には中度、軽度の知的障害のほか、情緒的な問題行動がある子もたくさんいました。時計を読んだり、文字の読み書きをしたり、簡単な計算をしたりといった習得可能な学力を目的としているところもありました。

 加配の先生は、1人の子のためにいるわけではなく、クラス内にいた「脱走してしまう子」「他害をする子」を含めた複数人を見ている状態でした。そのため、排せつ訓練が必要な子に付きっきりになることが難しい状況だったのだと思います。

【画像】「えっ…そうだったの…?」 これが「発達障害児」にみられることのある行動です(5つ)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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