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閉店前の“安売り” 「ケーキ店」が行わないワケ 専門家が解説

ケーキ店では、閉店前でも売れ残りを安売りしないことがあります。飲食店コンサルタントが理由を解説してくれました。

「ケーキ店」が安売りしないワケとは…
「ケーキ店」が安売りしないワケとは…

 ショッピングセンターや駅ナカなどの総菜店で、閉店前や時間帯によって、売れ残ったケーキに値引きのシールなどが貼ってあったりします。しかし、ケーキ店では、閉店前でも売れ残りを安売りしないことが多いように思います。ケーキは生もので、基本的に販売した当日が消費期限となっています。

 なぜ、総菜店のケーキは安売りするのに、ケーキ店は安売りしないことが多いのか、飲食店コンサルタントの成田良爾さんが解説してくれました。

有名店は「安売りしない」 クリスマスケーキは…

 総菜店が利益を落として安売りする理由について、成田さんは「総菜が売れ残って廃棄することを防ぐため」と説明します。“フードロス削減”という観点と共に、売れ残った総菜を廃棄すると「全ての原材料費が損失」になり、「安売りをして、粗利益が少なくなったとしても、損失を出すよりはよいという考え」から、安売りを行っているということです。

 では、ケーキ店が安売りをしない理由は何なのでしょうか。成田さんは、個人経営など小規模なケーキ店では安売りをしている店もあるが、「著名なパティシエがいるケーキ店や、ブランディングされた洋菓子専門店の多くは閉店前でケーキが残っていても、安売りはしません。安売りをすると値崩れが起きて、ブランド価値が下がるためです」と分析しているということです。

 個人経営や小規模なケーキ店の安売りの理由について、「小規模なケーキ店でも、値崩れを防ぎたい気持ちはありますが、どうしても、原材料費分くらいは売り上げないと経営の維持が困難なため、安売りするのです」と解説してくれました。

 製造したその日に売れ残ったケーキはどうなるのかも気になり、質問してみたところ、成田さんは「売れ残ったケーキを毎日廃棄する店もあれば、手直しして、翌日に販売する店も実際はあります。賞味期限切れのケーキの多くは業者に依頼して廃棄処理します。中には、ケーキ店で働くスタッフや関係者に配ったりする店もあります」と教えてくれました。

 売れ残ったケーキを安売りせずに廃棄すると、利益はもちろん、材料費や人件費も全く回収できないと思います。それでも、安売りしないメリットについては「ケーキは誕生日やクリスマスに食べたり、贈り物にしたりするなど特別感があり、多少、価格が高くても売れる商品です。売れ残った日に安売りすると、ケーキの特別感がなくなると同時に値崩れしてしまいます」とコメント。客が、安売りを狙って買いに来るようになると、「結果的に売り上げも落ち込んでいく」と続けながら、「ケーキ店としては『ケーキは特別な食べ物なので、少々値段が高くても買う』という顧客イメージがよい」と語ってくれました。

 今年のクリスマスが24日、25日に控えています。25日にケーキ店が閉店前にクリスマスケーキを安売りしている様子を見かけたことがある人もいるのではないでしょうか。その理由には「一般的にクリスマスケーキは25日まで、おいしく食べられるように製造されています。また、クリスマスが終わると、世の中は正月ムードに一気に切り替わるため、ケーキの需要が落ち込みます。仮に、スポンジなどを再利用して、別のケーキをつくり、再販売したとしても、なかなか消費期限までに売れにくいので安売りをする」のが考えられるということです。

※記事の一部を修正しました。(2023年12月24日 1308)

(オトナンサー編集部)

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成田良爾(なりた・りょうじ)

飲食店専門経営コンサルタント

ヴィガーコーポレーション代表取締役。厚生労働省公認レストランサービス技能士(国家資格)、文部科学省後援サービス接遇検定準1級、食生活アドバイザー2級、他。飲食業界25年以上。ミシュランガイド掲載の高級レストランから個人経営の小さな大衆店まで幅広いジャンルの飲食店に携わり、その経験に基づく統計解析および枠にとらわれないアイデアで多くの赤字店を黒字化させてきた実績を持つ。「100年続く店づくり」をモットーに、次世代育成や飲食業の働き方改革などにも力を入れており、食文化普及の他、職業訓練校講師(フードビジネス科)や子育て女性就職支援事業講師なども歴任。現在も多くの飲食店経営者のサポートを手掛ける。飲食店専門のコンサルティング「オフィスヴィガー」HP(http://with-vigor.com/)。

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