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「障害のある子は天使」だなんて思えない…障害児を育てる親を苦しめる“励ましの言葉”

障害児を育てる親を勇気づけたくてかける「天使だよね」という言葉。よかれと思っていても、その言葉は相手を苦しめているかもしれません。自閉症児を育てた筆者の思いとは――。

「障害のある子は天使」と言うけれど…(画像はイメージ)
「障害のある子は天使」と言うけれど…(画像はイメージ)

 障害のある子どもに対して、「こういう子って天使だよね」と言う人がいます。子育て本著者・講演家である私の息子は23歳で、知的障害を伴う自閉症です。幼い頃、息子はこだわりが強く、それが通らないとパニックに陥り、暴れ、自傷行為をし、私は疲労困憊(こんぱい)状態でした。そんな息子を育てながら、決して“天使”とは思えませんでした。

 あるとき、息子が街中で迷子になったことがあります。必死で探しながら、心のどこかで「永遠に見つからなければいいのに」とさえ思いました。「ひどい母親だ」と責める人もいるかもしれませんが、そのときの私は瞬間的に、自然とそう思ってしまったのです。

 障害児を育てているママに、「親を選んでやってきた」「神様が与えてくれた天使」と励ます人もいますが、受け止める側は内心「選ばれたくなんかなかった」と思っていることもあります。

障害の上に「性格」「個性」がある

 障害児ではなく、定型発達の子を育てていても、夫婦間の子育てやしつけの仕方に対する考え方の相違が生じ、家庭内で言い争いが絶えない家庭があります。

 また、母親は「食事の前にお菓子を食べてはいけません」「ゲームは一日1時間だけ」と厳しくしているのに、父親がお菓子を食事前に与えたり、「好きなだけゲームしていいよ」と言ったりすることで、子どもがダブルバインド状態に陥り、相手を見て態度を変えるようになり、そのことがきっかけで、夫婦間でいさかいが絶えなくなることもあります。

 もし、わが子が発達障害だった場合、子育てやしつけの仕方だけではなく、子どもの障害を認めるか認めないかで、定型発達児の子育て以上に、さらに夫婦間に溝ができることがあるかもしれません。

 例えば、妻側は子どもの障害を受け入れて療育手帳を取ったり、療育を受けさせたりしたいのに、夫側が「こんなに小さいうちから障害児のレッテルを貼る気か! 伸びるものも伸びなくなる!」と拒否したり、小学校の進学先を通常級にするか支援級にするかで争ったり……。家庭内でそうした状況に陥っているとき、「こういう子って天使だよね」と言われたら、とても嫌な気持ちになります。

「障害のある子の存在が、家族の絆となる」といったテーマが、時々テレビで取り上げられることがあります。“美談”や“感動ポルノ”とやゆされることもあります。しかし一方で、子どもの障害によって夫婦間に溝ができ、離婚に至るケース、また、育てにくい子として虐待に発展しているケースもあります。「発達障害児が虐待を受けているケースは、定型発達児の4倍」というデータもあるようです。

 障害がある子を育てている親の中には、たとえ励ますつもりでも「こういう子ってピュアだよね」「秘めた才能があるよね」「天使だよね」などと言わないでほしい、と感じている親もいます。

 そもそも障害は、染色体異常や脳の機能障害といったことが原因です。性格や個性は障害の上に、育った家庭環境や幼稚園、保育園、学校環境、友人関係などが複雑に影響してつくられていきます。

 私の周りには、素直なダウン症児も、自閉傾向が強いダウン症児も、いじわるなダウン症児もいます。同じ障害があっても、性格や個性はその子によってさまざまなのです。

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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