母乳の“飲み過ぎ”で赤ちゃんに異変? 生後1カ月から注意すべき「過飲症候群」って何? 産婦人科医に聞いた
「母乳は欲しがるだけ与えてよい」と指導を受けるママが多い中、赤ちゃんが母乳やミルクを飲み過ぎると「過飲症候群」のリスクが高まるようです。産婦人科医が解説します。

「母乳は欲しがるだけ与えてよい」。産後、そうした指導を受けたママは少なくないと思います。しかし一方で、赤ちゃんが母乳やミルクを飲み過ぎてしまうことによる「過飲症候群」が起こるケースもあるようです。
母乳の飲み過ぎによって起こる、赤ちゃんの「過飲症候群」とはどのようなものなのでしょうか。神谷町WGレディースクリニック院長で産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。
「泣きやまないのでミルクを追加」のケースが多い
Q.赤ちゃんの「過飲症候群」とは何ですか。
尾西さん「『過飲症候群』とは、赤ちゃんが母乳やミルクを飲み過ぎた結果、体重が増え過ぎる、吐き戻す、おなかが張るといった症状がみられることをいいます。病気ではないので正式な医学用語ではありませんが、一連の症状がみられるため、『症候群』と名前がついています。授乳の仕方を工夫することで改善できるので、『病気だ』と思って不安になる必要はありません。
過飲症候群は生後1カ月程度の、まだお母さんも赤ちゃんも授乳リズムが出来上がっていない時期に起こることが多いです。目安としては体重が1日に50グラム以上増加している場合、過飲症候群の可能性があります」
Q.もし、赤ちゃんに過飲症候群の症状が出た場合、どうすればいいですか。
尾西さん「先述の通り、過飲症候群は病気ではないので、よっぽどおなかが張って苦しんでいるといったことがなければ、病院に連れて行く必要はありません。それよりも、授乳の量や回数を見直してみましょう。
ただし、吐き戻しがひどい場合やおなかがずっと張っている場合、便秘や腸閉塞など体の病気が潜んでいる場合があるので、判断が難しい場合は早めに相談しましょう」
Q.「母乳は欲しがるだけ与えてよい」との指導を受けるママも多いため、過飲の目安の判断に迷ったり、不安になったりするケースもあるようです。判断のポイントを教えてください。
尾西さん「最近多いのは、『母乳をあげた後にまだ泣きやまないので、足りていないのかなという不安があって、ミルクを追加してあげている』というケースです。
母乳は消化がよく、胃にとどまる時間は約90分ですが、ミルクは消化が悪く、約180分も胃に滞留しています。きちんと消化される前に、次の授乳時間になってしまうと、胃がいっぱいになって吐き戻す原因になります。
栄養素の面でも、母乳はタンパク質が多いので、多少取り過ぎても急に体重が増加するということはありませんが、ミルクはカロリーが高く、体重増加につながりやすいので注意が必要です。まずは、赤ちゃんが実際どのくらい飲んでいるのか、泣いている原因は足りないのか、それともおなかいっぱいで苦しいのか…など、きちんと判断してあげるようにしましょう。
なお、授乳前後の赤ちゃんの体重を測ったり、たまに搾乳をして、1回でどのくらいの量の母乳が取れるのかを見てみたりすると、赤ちゃんがどのくらい飲んでいるのかを把握することができます。次の授乳回数と授乳間隔を目安にしてみてください。
【生後1カ月ごろ】
・授乳回数…8〜10回(1回の量が少ない場合は12回程度あげることもあります)
・授乳間隔…2〜3時間(1回あたり5〜10分が目安)
ミルクの場合は消化が悪いので、最低3時間は空けるようにしましょう。
【生後3カ月ごろ】
・授乳回数…6〜8回
・授乳間隔…2〜3時間(1回あたり10〜15分程度になる)
赤ちゃんもお母さんも授乳のリズムが分かってくる時期で、赤ちゃんの満腹中枢も発達してくる時期なので、授乳も楽になります。
ただ、個人差も大きいので、これらはあくまで目安です。あまりこだわり過ぎず、体重がきちんと増えているか、増え過ぎていないか、飲んだ後の様子が苦しそうではないかなど、観察するようにしましょう」
(オトナンサー編集部)
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