学校での熱中症、教師の「権威」が原因かも…心理的メカニズムを専門家が解説
熱中症を防ぐには?
こういった問題を起きにくくするためには、強過ぎる権威勾配を弱める工夫が必要です。医療や航空の分野でも、上下関係に関わらず、積極的に全員の意見表明を求め、否定的な反応をせずにメンバーが感じる心理的安全性を高め、発言しやすい雰囲気を醸成することが推奨されています。
また、上の立場の人が、優先順位を明確に伝えることも重要です。例えば「先生の話を静かに聞くこと」「計画的に水分補給すること」などは教育上重要なことかもしれません。
しかし、これらは子どもたちの健康や命より優先されるべきものではありません。こういった優先順位は大人なら分かるかもしれませんが、大人ほど判断力がない子どもに対しては、「健康や命が最優先、原則やルールは二の次」だということを大人が積極的に伝える必要があります。
さて、ここまで学校での熱中症を題材に話を進めてきましたが、権威勾配の問題はあらゆる組織や人間関係に影響する問題です。強過ぎる権威勾配は、先述のコミュニケーションや情報共有の阻害によるリスクの上昇のほかにも、さまざまな問題を引き起こします。
意見表明をしづらい、あるいは表明しても受け入れられないので、下の立場の人は考えるのをやめてしまいます。考えるのをやめれば、考える能力は徐々に低下するし、有益なアイデアが生まれる可能性も下がってしまいます。組織運営は他人事になり、目的意識や責任感は希薄になります。モチベーションも低下するので、結果的に組織のパフォーマンスが低下してしまいます。
このように考えてみると、あらゆる組織の上に立つ人には、「権威勾配が強くなり過ぎていないか」「メンバーが発言しやすい文化や雰囲気が醸成されているか」を常に確認し、適切な状態に近づけていくことが求められます。
熱中症に話を戻しますが、これからの季節、先生方は子どもたちが体調不良を言い出しづらい雰囲気がないか、改めて点検するとともに、健康と命が最優先であることを周知し、熱中症をはじめとする体調不良の早期発見に努めていただきたいと思います。
(近畿大学生物理工学部准教授 島崎敢)

コメント