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年利122%もあり得る? 「節電」を“投資”として考えてみた

世の中のさまざまな事象のリスクや、人々の「心配事」について、心理学者であり、防災にも詳しい筆者が解き明かしていきます。

「節電」が“投資”になる?
「節電」が“投資”になる?

 電力各社が電気料金の値上げを発表しました。政府の支援策による一時的な値下げもありますが、家計の負担増は避けられそうにありません。また、冬場は電力需給が逼迫(ひっぱく)する時期でもあり、政府は節電を呼びかけています。世間を見渡せば、物価は上昇しているのに給料は上がらず、銀行の金利もすずめの涙ほどです。そこで今回は少し視点を変えて、節電を「投資の一種」と考えて、節電によって、どのくらいもうかるのか考えてみたいと思います。

LEDへの「投資」

 もしあなたの家に白熱電球や蛍光灯があるなら、ある程度のお金をかけてでも、すぐにLED(発光ダイオード)照明に交換すべきです。どのくらいの投資効率があるのか、いくつかの具体例で考えてみましょう。

 例えばトイレの60W(ワット)の白熱電球を同等の明るさの6.9WのLED電球に交換したとします。その差は53.1Wです。4人家族の1日のトイレの使用時間は1時間程度だそうです。消費電量の差は53.1W×1時間×365日÷1000≒19.4kWh(キロワットアワー)となります。最後に1000で割るのはWh(ワットアワー)を電気代計算のしやすいkWhに変換するためです。

 電気料金は電力会社によってさまざまですが、少し前の資料では1kWhあたり平均約27円とのことです。しかし、電力会社によっては40%を超える値上げを発表していますので、これからは、少なく見積もっても1kWhの電力は30円を超えそうです。そこで、仮に1kWhあたり30円で計算してみると、トイレの電球交換によって年間582円の電気代節約になります。

 60W型のLED電球(消費電力は6.9W)は650円のものが通信販売で見つかりましたので、この価格を計算に使ってみましょう。LED電球の寿命は4万時間程度なので、年間365時間の点灯だと100年以上持つ計算です。ただし、100年後までの投資を考えるのは現実的ではないし、100年後も同じトイレを使っている可能性は低いので、ひとまず10年先までで考えます。

 650円で買ったLED電球は10年間交換する必要はなさそうです。一方、白熱電球の寿命は1000~2000時間程度なので、10年間で3回ぐらいは交換が必要です。60Wの白熱電球の値段は100円前後なので、白熱電球を使い続ける場合には、先ほどの電気代の差額に加えて10年間で300円の追加コストがかかります。

 つまり650円の投資額に対して、10年間で節約できる金額は、電気代582円×10年+電球代300円=6120円となります。今ここで650円のLED電球に投資をして10年間に節約できるコストを年利に直すと、なんと94%にもなります。

 もう一つ例を挙げてみましょう。リビングの68Wの蛍光灯式のシーリングライトを33WのLED式に交換したとします。その差は35Wです。リビングの明かりを1日8時間つけたとすると、年間の消費電力の差は35W×8時間×365日÷1000=102.2kWhとなります。1kWhあたり30円で計算すると3066円、シーリングライトは調光機能の有無などで値段に幅がありますが、比較的安価なものは3000円程度で手に入ります。

 点灯時間は先ほどのトイレの8倍ですが、それでも10年間で4万時間には達しないので、この場合もLED式のシーリングライトは10年間交換の必要がありません。一方、蛍光灯の寿命は6000~1万2000時間程度で、1日8時間使うとやはり3年に1度程度の交換が必要になります。価格は2000円前後です。

 従って、蛍光灯を使い続けた場合には、電気代3066円×10年+蛍光灯代6000円=3万6660円の追加コストがかかります。今ここで3000円のLEDシーリングライトに投資して節約できる10年間のコストを年利に直すと、122%という信じられない数字になります。

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島崎敢(しまざき・かん)

近畿大学生物理工学部准教授

1976年、東京都練馬区生まれ。静岡県立大学卒業後、大型トラックのドライバーなどで学費をため、早稲田大学大学院に進学し学位を取得。同大助手、助教、国立研究開発法人防災科学技術研究所特別研究員、名古屋大学未来社会創造機構特任准教授を経て、2022年4月から、近畿大学生物理工学部人間環境デザイン学科で准教授を務める。日本交通心理学会が認定する主幹総合交通心理士の他、全ての一種免許と大型二種免許、クレーンや重機など多くの資格を持つ。心理学による事故防止や災害リスク軽減を目指す研究者で、3人の娘の父親。趣味は料理と娘のヘアアレンジ。著書に「心配学〜本当の確率となぜずれる〜」(光文社)などがあり、「アベマプライム」「首都圏情報ネタドリ!」「TVタックル」などメディア出演も多数。博士(人間科学)。

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