繰り返し使えておトクな「充電式電池」 使用NG製品はある? メーカーに聞く
繰り返し使用可能で便利な「充電式電池」ですが、使ってはいけない製品はあるのでしょうか。メーカーに聞きました。

家電製品のリモコンや懐中電灯、玩具などを使うときに、乾電池が必要になることがあります。その際、乾電池の代わりに「充電式電池(以下、充電池)」を使う人も多いのではないでしょうか。充電池は繰り返し使うことができるので、乾電池をその都度買うよりもお得と言えます。
ところで、充電池を使ってはいけない製品はあるのでしょうか。充電池の一つ、ニッケル水素電池の適切な使い方について、乾電池や充電池などの開発、製造、販売を手掛けるパナソニック エナジー(大阪府守口市)エナジーデバイス事業部国内営業部の李佳霓(リ・ジャーニー)さんに聞きました。
充電池からガスが発生
Q.そもそも、乾電池とニッケル水素電池は、どのような違いがあるのでしょうか。原料や性能の違いなどについて、教えてください。
李さん「公称電圧(電池を通常使用した場合に、両端子間で得られる電圧の目安)や、使用時の電圧の下がり方などに違いがあります。例えば、乾電池の公称電圧は1.5ボルト、ニッケル水素電池の公称電圧は1.2ボルトですが、いずれも機器が作動するには十分な電圧です。
また、機器が作動する間、乾電池は電池を放電(使用)するに従って、電圧が徐々に下がっていくのに対し、ニッケル水素電池は1.2ボルト付近で電圧が一定となり、電池の容量がなくなった時点で電圧が一気に低下していきます。そのため、ニッケル水素電池は、乾電池が対応するほとんどの機器で使用可能です。
このほか、繰り返し充電に対応できるよう、ニッケル水素電池は電池内部の構造や電極に使う材料が乾電池とは大きく異なります」
Q. ニッケル水素電池を使ってはいけない製品はあるのでしょうか。
李さん「次のような場合、ニッケル水素電池は使用できません。
(1)密閉された機器
ニッケル水素電池は、過放電や電池のショートによる発熱で電池内部からガスが発生します。そこで、発生するガスの内圧上昇による電池の破裂を防ぐために、ニッケル水素電池はガス抜き構造を備えており、ガスを放出します。
もし水中ライトなどの密閉された機器で使用すると、ニッケル水素電池から放出されたガスが外に抜けないため、機器を破損させる危険性があります。
(2)機器に「使用不可」の指定がある場合
機器メーカーが取扱説明書などで『ニッケル水素電池使用不可』、もしくは『充電池使用不可』と指定している場合は使用しないでください」
Q.では、密閉された機器や「ニッケル水素電池使用不可」「充電池使用不可」と書かれた機器でニッケル水素電池を使用した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。
李さん「ニッケル水素電池は、過放電すると引火性の高い水素を含むガスが電池内部から発生する場合があります。電池ボックスが完全に密閉された機器の場合、ガスが内部にたまります。そのため、火気の近くに置くと引火する恐れがあります。
機器の仕様によっては、乾電池の電池電圧を検知して、電池残存容量を表示する製品があります。このような機器でニッケル水素電池を使用すると、電池電圧の特性により電池残量容量が表示されない場合があります。
また、乾電池の初期の高い電圧領域をメインに動作する機器もあり、そのような機器でニッケル水素電池を使用すると、動作や液晶の表示などに不具合が発生する場合があります」
Q.ニッケル水素電池は、何回程度繰り返して使うことができるのでしょうか。寿命について、教えてください。
李さん「ニッケル水素電池の種類により、繰り返し使える回数は異なります。例えば、当社の『エネループ スタンダードモデル』(単3形・単4形)の場合、JIS(日本産業規格)で定められた条件では約600回繰り返して使うことができます。
ただし、実際は、より過酷な使い方になるケースが一般的なため、寿命がより短くなることがあります」
Q.ニッケル水素電池の適切な充電方法について、教えてください。使い切らない状態で充電すると、電池の寿命が短くなるのでしょうか。それとも、使い切らない状態で充電しても、電池の寿命に影響はないのでしょうか。
李さん「『電池容量が約3分の1になった時点』を目安に充電することをおすすめします。機器が使用できなくなるまで使い切ると、電池全体がダメージを受けます。特に容量が少ない電池は、すぐに残量がなくなってしまうため、充電せずに放置すると、ダメージを受け続ける時間が長くなります。こうしたダメージは電池の寿命に影響し、ダメージが大きい場合は液漏れを引き起こします。
このようなことを防ぐためにも、電池容量が約3分の1になった時点で、充電することをおすすめします」
Q.ニッケル水素電池を長期間使わない場合、どのように保管するのが望ましいのでしょうか。
李さん「長時間使用しない場合は、不要な電池の消費を防ぐために、充電器や使用機器から取り出してください。その上で、湿度の高い場所や直射日光が当たる場所、ストーブなど熱がこもる場所の近くを避け、10度から30度までの乾燥している場所で保管するのがおすすめです。
特に、冷蔵庫での保管は、取り出した際に電池が結露(冷えた物体の表面に、空気中の水蒸気が凝縮し、水滴となって付着する現象)し、その水滴で電池の表面にさびが発生することがあるため、おすすめしません。
電池の性能を維持するために、使用しない状態でも6カ月から1年に一度は充電してください」
Q.ニッケル水素電池を長期間入れっ放しにした場合、どのようなリスクが想定されるのでしょうか。
李さん「機器によっては、スイッチがオフの状態でも、電池を入れっ放しにすることで、電流が漏れて流れるため、長期間入れっ放しにすると電池の性能低下や液漏れの原因となることがあります。これは乾電池も同様です」
Q.寿命を迎えたニッケル水素電池は、どのように処分するのが望ましいのでしょうか。
李さん「ニッケル水素電池を含む充電池は、乾電池とは異なり、法律によりリサイクルの体制が構築されています。不要になった充電池は家庭ごみとして捨てずに、電池端子にテープを貼ってから、電気店などのリサイクル協力店に設置されている『充電式電池リサイクルBOX』に入れてください」
(オトナンサー編集部)
グローバル化が悲しい。落ち目のパナソニックゆえ。