「成果を上げたら報酬を上げる」という“当然”に見える人事制度の問題点
目標達成後に手抜き?
悪気はなくても、立てた目標が簡単過ぎたという場合もあります。期中に追い風が吹くなどして、期初に立てた目標をさらっと達成できてしまったら、人は手抜きをするかもしれません(私なら、そうしてしまうかもです)。
約束した成果目標は達成したわけですから、文句を言われる筋合いはありません。本当は、期初の目標など関係なく、「行けるところまで行く」のが、会社全体のためには正解なのですが…。もし、全社的に目標が簡単過ぎた場合に、全社的に手抜きが行われてしまったら、同じく追い風が吹いて「ここがチャンスだ!」とばかり頑張った同業他社にボロ負けしてしまうかもしれません。
「プロセス評価」「結果の相対評価」が対策
成果主義や目標管理の問題点ばかりを挙げてしまいましたが、これを改善するポイントを最後に少し述べたいと思います。一つはやはり、「プロセスも見ましょう」ということです。
このプロセスというのは「中間成果物」のように厳密な「スモールゴール」ではなく、その人の「行動」や「姿勢」などのことです。明確な成果につながらないものを見ようということですので、当然曖昧ですが、360度評価などを取り入れることで、その仕事に対して、なすべき行動を取っているかどうかを、何とか「見る」のです。
目標設定を厳密化しすぎないことも重要です。「これが100%」を決めるのではなく、「目安」の基準を決める、あるいは最初から「100%」は決めずに、出した結果を後で相対評価するということです。100メートル走は「何秒で走ったら金メダル」と決まってはいませんよね。他者より速く走れたら金メダルとするということと同じです。そうすれば、楽な目標で手抜きをすることはなくなります。
以上、今では当然の存在となった「成果主義」の問題点について述べてみました。空気のように当たり前の存在になっているものこそ、一度改めてその存在意義を見直してみることは、重要かもしれません。
(人材研究所代表 曽和利光)
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