「熱中症になりやすい猫」はいる? 注意点は? 獣医師に聞く
夏場は人間だけでなく猫の熱中症にも注意が必要ですが、猫の種類によって熱中症になりやすい、あるいは暑さに弱いということはあるのでしょうか。獣医師に聞きました。

夏場は人間だけでなく猫の熱中症にも注意が必要ですが、猫の種類によって熱中症になりやすい、あるいは暑さに弱いということはあるのでしょうか。獣医師の増田国充さんに聞きました。
長毛種は特に注意
Q.猫の熱中症の原因と症状を教えてください。
増田さん「人間や猫は、外気温にかかわらず体温を一定に保つ必要があります。そのために猫も、暑い場合は汗をかいたり、呼吸数を増やしたり、血管を拡張させたりして熱を逃がします。これが暑熱(夏の暑さ)などにより十分に機能しなくなるほどの状態になると、高体温を引き起こします。全身の臓器に影響が及び、対応が遅れると、命を落とす可能性があります。
熱中症の初期では、耳や四肢など体の末端が普段よりも熱く感じられ、呼吸数や飲水量が増加し、猫であっても犬のように口を開けて呼吸するようになります。体温が39度以上になると、そうした開口呼吸がみられるようになります。
さらに進むと食欲の低下や嘔吐(おうと)、下痢を誘発します。体温が40度以上となる深刻な状態になると、けいれんや意識の低下、脱力、血尿などを生じ、体内のたんぱく質が変性して生命維持が困難になる事態に至ります」
Q.猫の種類によって、熱中症になりやすい、あるいは暑さに弱いということはあるのでしょうか。
増田さん「被毛(体の表面を覆う毛)の長さが、時として熱中症のリスクにつながることがあります。猫は被毛と被毛の間に空気の層を作り出して断熱効果を得ることができ、そうすることで外気温と体温との差を調整するのですが、あまりにも環境中の温度が高い場合は、本来断熱効果を得る部分に熱がこもってしまい、高体温になる可能性が生じます。
例えば、メインクーンやノルウェージャンフォレストキャットといった被毛が長い猫は、特に注意した方がいいかもしれません。
被毛の長さ以外にも熱中症を起こしやすい条件はいくつかあります。年齢、病歴を含めた基礎体力、住環境による影響も十分に考慮しなくてはいけません」
Q.熱中症になりやすい猫について、夏場はどのような点に注意すればよいのでしょうか。
増田さん「熱中症になる要因で重要なのは体感温度です。環境中の温度、風通し、湿度、照り返しが暑さを感じる要素になります。猫の場合、窓を開けっ放しにすることがなかなか難しいため、冷房をつけて窓を閉めておくことが多いかと思います。
猫にとっての適温は個体差がありますが、およそ27度付近となります。その中でも、日差しを遮ることができる場所や十分な飲み水を確保しておき、猫自身がストレスなく快適に過ごせる場所に行き来できるような工夫をしておくことが望まれます」
Q.猫の毛を短く刈る「サマーカット」は効果があるのでしょうか。
増田さん「長毛の場合、目的に応じてサマーカットを行うのであれば、一定の効果があるのではないかと思います。短毛で、かつ室内飼育であれば、カットを行う必要性は基本的にありません。
また、極端に短く刈られた状態で日中に屋外に出ることは、かえって危険を招く恐れがあります。日光が直接皮膚に届くこととなり、急激な高体温を招く恐れがあります。
従って、愛猫をサマーカットしたいとお考えの場合は、生活環境や、持病の有無などを考慮の上、念のためかかりつけの獣医師に相談することをお勧めします」
Q.ちなみに「マヌルネコ」は季節によって夏毛と冬毛になりますが、暑さには強いのでしょうか。
増田さん「マヌルネコは『モウコネコ』と呼ばれることがある、野生に生息する猫の一種です。このマヌルネコは、中東あるいは中央アジアの高地や内陸の乾燥した地域に生息しているため、季節あるいは日中を通して寒暖の差が激しい環境で生活しています。
そのため、厳寒となる冬季は被毛が密集し、モコモコな風貌になります。逆に夏場は、被毛のボリュームが減り、暑さをしのぐための機能として被毛が活躍することとなります。被毛は直射日光による皮膚に与える刺激を防ぐ働きがあるため、完全に抜け落ちることはなく、一定の暑さ対策をします。その地域の環境に合わせた体の変化を獲得した例といえるのではないでしょうか」
(オトナンサー編集部)
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