7月10日は「納豆の日」 からしと一緒に食べるのはなぜ?
納豆にからしを入れて食べるのはなぜなのでしょうか。全国納豆協同組合連合会とメーカーの担当者にそれぞれ聞きました。

7月10日は「納豆の日」です。これは、「7(なっ)10(とう)」という語呂合わせで読めることから、納豆の製造業者による業界団体が定めたとされています。ところで、市販の納豆には、たれとともに「からし」が入っていることが多いですが、なぜワサビではなく、からしと一緒に食べるのでしょうか。からし入りの納豆が売られるようになった時期や、地域によってたれの味が違う理由などについて、業界団体とメーカーの担当者にそれぞれ聞きました。
原料のからし菜の栽培が容易
まずは、全国の納豆の製造業者で構成される、全国納豆協同組合連合会(東京都荒川区)の広報担当者に聞きました。
Q.7月10日を「納豆の日」と定めたのは、いつごろなのでしょうか。また、「納豆の日」を定めた目的について、教えてください。
担当者「納豆の販売促進のために、1975年に関西納豆工業協同組合が、関西地域限定の記念日として定めました。やがてこの動きが全国に広がるようになり、当連合会も納豆の消費拡大のために、1994年に毎年7月10日を全国的な『納豆の日』と定めました。販促活動を展開するほか、制定初年度の1994年には、ボランティア活動の一環として、全国の福祉施設の高齢者向けに健康食である納豆を贈呈しました」
Q.納豆にからしを入れて食べるようになったのは、いつごろからなのでしょうか。
担当者「江戸時代の後半からだと言われていますが、当時、納豆にからしを入れて食べるのは、江戸とその周辺の地域だけだったようです。
江戸時代の前半まで、納豆は『たたき納豆』(たたきつぶした納豆に青菜と豆腐を添えたもの)が主流で、納豆汁にして食べられることが多かったのですが、その後、江戸の庶民の嗜好(しこう)が変わり、1830年代以降は、現代と同様、粒納豆が食べられるようになりました。ただ、粒納豆は、発酵が進んでにおいがきつくなりやすかったため、食べ物の消臭や殺菌などの働きが期待できるとされるからしと混ぜて食べられるようになりました。当時、からしは別の料理を食べるときにも使われていて、例えば、江戸の庶民に好まれていた初ガツオの刺し身は、からしみそと一緒に食べられていたようです。
香辛料といえばまずワサビを思い浮かべるかもしれませんが、納豆や初ガツオの刺し身にワサビではなくカラシが使われたのは、からしの原料であるからし菜の栽培がワサビに比べて格段に容易だったためです。
戦後、納豆の大量生産が始まりましたが、当時の商品は現在のように個包装されておらず、容量は300グラムほどありました(現在、市販されている納豆は、1パック当たり40グラム前後)。また、商品にからしが付いているわけではなく、納豆を購入したときに、店がからしを無料で提供してくれることが多かったです。
なお、東日本と西日本とでは、納豆の食べ方が異なります。東日本では、納豆を白米にかけて食べるのが一般的ですが、西日本では納豆をそのまま食べる人が多いと言われています」
では、からし入りの納豆が売られるようになったのは、いつごろからなのでしょうか。「おかめ納豆」のブランドで有名な、タカノフーズ(茨城県小美玉市)営業推進部門納豆営業推進の市村真二マネジャーに聞きました。
Q.からし入りの納豆が販売されるようになったのは、いつごろなのでしょうか。
市村さん「からし入りの納豆が販売されるようになったのは、個包装の技術が発達した1960年代以降です。それ以前は、納豆にからしが入っておらず、からしは店が客に無料で提供することが一般的だったようです。なお、北海道や九州では、からしが入っていない納豆も多く販売されています」
Q.納豆に付いているたれは、地域によって味に違いがあるのでしょうか。
市村さん「納豆のたれの味は、地域によって違います。例えば、東日本は濃い口しょうゆをベースにしたたれ、関西はだしをベースにしたたれ、九州は甘口しょうゆをベースにしたたれが特に人気があります。当社は、ロングセラー商品の『極小粒』シリーズを全国展開する一方、地域限定商品も製造、販売しています。例えば、主に西日本で販売する『おかめ仕立てミニ3』は、『まろみだし』(近畿、北陸、東海、中国、四国エリア)入りと『うまかたれ』(九州・沖縄エリア)入りの2種類があります。
なぜ地域によってたれの味が違うのかというと、食文化が関係しています。東日本では、納豆を白米にかけて食べるのが一般的ですが、西日本では納豆を白米にかけずに、そのまま食べる人が多いため、しょっぱいたれはあまり好まれません。関東から九州に転勤した人が、『納豆のたれが甘い』と驚くケースも多いですし、反対に九州から関東に転勤した人が、たれのしょっぱさに驚くケースもあります」
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