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子どもを連れて「事実婚」 子の名字や親権はどうなるの? 弁護士に聞いた

事実婚を「解消」したら、子どもはどうなる?

Q.事実婚は、何をもって「解消」とするのですか。また、解消した場合、「事実婚前の子ども」「事実婚後に生まれた子ども」はそれぞれどうなるのでしょうか。

佐藤さん「事実婚は、お互い納得して夫婦同然の生活を終了させれば『解消』になります。離婚届の提出といった手続きは必要ありません。ただし、パートナーが解消したくないと言っているのに、一方的に解消するためには『正当な理由』が必要と考えられており、正当な理由がないまま別居に至ったような場合、パートナーから慰謝料などを請求される可能性があります。

事実婚を解消した場合、『事実婚前の子ども』と事実婚のパートナーとの関係は変わりません。先述したように、養子縁組をしなければ、事実婚前の子と事実婚のパートナーは法律上、もともと何の関係もないからです。養子縁組をしていた場合、事実婚が解消されたとしても、そのままだと『養親と養子』のままになってしまいます。事実婚の解消に伴い、養子縁組も解消するためには、『離縁』が必要となります。

なお、『事実婚後に生まれた子ども』について、父親が認知していなかった場合、法律上の父親ではないため、子どもに対して扶養義務を負いません。そのため、事実婚を解消した相手に養育費の支払いを請求したい場合には、認知を求めた上で請求することになるでしょう」

Q.その他、子どもがいる人が事実婚をする場合に注意した方がよいこと、確認しておいた方がよいこととは。

佐藤さん「事実婚の場合、特に、2人の間に子どもが生まれた場合に、大きな違いが生じるように思います。法律上の婚姻をしていれば、父母の共同親権となりますが(民法818条)、事実婚の場合、実の親であるにもかかわらず、父母2人ともが親権を持つことはできず、多くの場合、母親の単独親権となります。また、父親と子どもの名字も別になります。父親が認知をすれば法律上の父子関係は生じますが、法律上、どうしても父子関係が不安定になる面はあるでしょう。

ただし、2013年12月より、相続分について、結婚している親から生まれた子と、結婚していない親から生まれた子との間にあった不平等が解消され、子どもにとって、親が結婚しないことによる法律上の明らかなデメリットはなくなっています。家族のあり方が多様化している今、それぞれの価値観に合わせて、さまざまな選択が尊重される社会になっていくように思います」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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