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子どもを連れて「事実婚」 子の名字や親権はどうなるの? 弁護士に聞いた

「事実婚」を選択するカップルの中には、前パートナーとの子どもを伴って、新しい“親子”の関係を築く人もいます。この場合、法的にはどのように扱われるのか、弁護士に聞きました。

事実婚による“親子”の法的解釈とは…
事実婚による“親子”の法的解釈とは…

 タレントのSHELLYさんが先日、自身のYouTubeチャンネルで、第3子の妊娠とともに、現在のパートナーとの事実婚を選択したことを発表し、話題となりました。動画によると、SHELLYさんは前夫との間に授かった長女、次女と、新たなパートナーとの同居生活を1年以上前からスタートさせており、事実婚の選択も、パートナーとの話し合いを重ねて出した結論とのこと。2人の子どもはSHELLYさんと同じ名字だといい、「生まれてくる子も私と同じ名字になる」ことも、事実婚を決めた要因の一つだったことを明かしています。

 ネット上では事実婚について、「当人同士が納得していることが大事」という声が多くを占める中、「子どもを連れて事実婚をすると、どうなるの?」「子どもがいる場合、メリットよりデメリットの方が多い気が…」「子どもにとって、本当によい選択なの?」など、疑問の声もあります。

 前パートナーとの子どもを伴って事実婚をする場合、新しい“親子”の関係は、どのような法的解釈がなされるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

外からは“親子”のように見えても、法律上は…

Q.そもそも、「事実婚」とは何ですか。婚姻届を出す「法律婚」とはどう違うのでしょうか。

佐藤さん「事実婚とは、婚姻届を提出せずに、双方が婚姻の意思を持ち、社会生活上、夫婦同然の生活を送る関係のことです。『法律婚』が婚姻届を提出して、法律上の婚姻関係になる(民法739条)のに対し、事実婚は婚姻届を提出していないため、法律上の夫婦にならないところに違いがあります。

事実婚であっても、法律婚に準じるものとして、法的に保護されるものもあります。例えば、事実婚のパートナーであっても、健康保険の被扶養者になることができますし、要件を満たせば遺族年金も受け取ることができます。しかし事実婚は、法律婚とは異なり、パートナーが亡くなっても法定相続人にはなれません。遺言をすることによって、パートナーに財産を残すことはできますが、その場合でも相続税の関係で不利になるといったデメリットもあります。その他、さまざまな手続きで、事実婚であることを証明する手間がかかるなど、法律婚と異なる点もいろいろとあります」

Q.事実婚をする2人のどちらか、または両方に子どもがいる場合、親と子の関係は法的にどう扱われるのですか。

佐藤さん「前パートナーとの子どもを連れて事実婚をする場合、事実婚するパートナーと子どもとの間には、法的に何ら関係は生じません。事実婚のパートナーは、事実上、新しい親のように振る舞い、外からも親子のように見えるかもしれませんが、法律上は親子ではないため、親権もありませんし、子は法定相続人にもなれません。これは、子どもを伴って法律婚をした場合も同様です。

親子関係を生じさせたいのであれば、子どもと事実婚のパートナーが養子縁組をする必要があります。養子縁組をすると、事実婚のパートナーは、『養親』として親権を持つことになり(民法818条2項)、子は法定相続人になることもできます(民法809条、887条)。

事実婚前の子どもの名字は、親が事実婚をしただけでは変わりません。なお、子どもと事実婚のパートナーが養子縁組をした場合には、子は養親である事実婚のパートナーの名字を名乗ることになります(民法810条)」

Q.子どもを連れて事実婚をした2人の間に、新たに子どもを授かった場合ではどうでしょうか。

佐藤さん「事実婚をした2人の間に子どもが生まれた場合、法的には、『婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)』として扱われ、子どもと父親との間に、法的な父子関係を生じさせるためには『認知』が必要です。

父親が認知することにより、法的な父子関係が生じたとしても、父母の協議で父親を『親権者』と定めない限り、親権は母親が持つことになります。また、子どもは母親の戸籍に入り、名字も母親のものを名乗ることになります」

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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