「初ガツオ」の季節だけど、本当は「戻りガツオ」の方がおいしいって本当?
カツオの旬は、「初ガツオ」と「戻りガツオ」の2回ありますが、「戻りガツオの方がおいしい」という人が多いように感じます。本当なのでしょうか。
昔から日本には、5月を中心とした春から初夏に取れるカツオを「初ガツオ」と呼び、旬の食材としてありがたがる風習があります。また、8月から9月に取れるカツオを「戻りガツオ」と呼び、こちらもカツオの旬とされています。しかし、同じ旬であっても、「初ガツオよりも戻りガツオの方がおいしい」という人が多いように感じます。戻りガツオの方がおいしいのは本当なのでしょうか。料理研究家の長田絢さんに聞きました。
脂ののったものを好む日本人の特性?
Q.日本で昔から「初ガツオ」がありがたがられているのはなぜですか。
長田さん「江戸時代の歌人である山口素堂が、『目には青葉 山ほととぎす 初鰹』と俳句で詠んでいるように、初ガツオなどの初物は、縁起が良いと昔から重宝され、食べると運気が上がり幸運が訪れるとされてきたからです。
初物は、パワーや生命力、生気があふれ、それを食べることで新たな生命力が宿り、寿命が75日延びると言い伝えられていたようで、中でも初ガツオは、その生きの良さからエネルギーや生命力の強さを感じられ、特に人気の初物でした。
さらに、初ガツオのシーズンは、実りや収穫の季節である秋に比べて初物が少なかったため、『新茶』と『初鰹』が初物の主となり、それも大変貴重と感じられる理由になりました」
Q.カツオの旬に、「初ガツオ」と「戻りガツオ」があります。両者の違いは何ですか。
長田さん「カツオは、南の海から黒潮に乗って、イワシなどを追いながら北上し、夏には三陸沖から北海道沖に達し、水温の低下とともに南下する回遊魚です。新緑の頃に取れるカツオを『初ガツオ(上り鰹)』と呼び、まだ魚肉の脂が少なく、透明感があり赤々として、淡泊な味わいが特徴です。
一方、イワシなどをたくさん食べ成長し、秋口に南下を始めて取れるカツオを『戻りガツオ(下り鰹)』と呼びます。脂がたっぷりとのっているため、初ガツオに比べて濃厚でもっちりとした食感が特徴です。『脂カツオ』『トロカツオ』とも呼ばれ、秋の味として好まれています」
Q.「“初ガツオ”よりも“戻りガツオ”の方がおいしい」と言われています。本当でしょうか。
長田さん「例えば、好きなすしネタのランキングでは、中トロやサーモンがよく上位に挙げられます。このように、日本人は脂ののった刺し身を好む傾向が強いので、『戻りガツオ』の方がおいしいと感じる人が多いのかもしれません。
ただし、初ガツオと戻りガツオのどちらがおいしいのか、決め付けることはできません。マグロでも、赤身派とトロ派に分かれるのと同様、お好みだと思います」
Q.カツオは1年中、売られている印象があります。「初ガツオ」や「戻りガツオ」のカツオと、それ以外のカツオでは、味はそんなに違うものでしょうか。
長田さん「旬の時期以外に出回っているカツオは、近海ものではなく、遠洋の巻き網船で取れたカツオを冷凍したものです。巻き網船が取ったカツオは、本来はかつお節にするためのものですが、品質が良いものが解凍され、スーパーなどに並んでいます。
季節外れのカツオは、初ガツオほどフレッシュな味わいでも、戻りガツオほど濃厚でもない味わいです。一方、最近人気が高まっている『迷いガツオ』は、冬に日本海沿いの漁港で水揚げされます。
研究機関によると、九州より南の海域から黒潮が流れる太平洋ではなく、日本海へ向かっているカツオの群れがあるようで、入荷が少なく、身質の良さが知られてきたこともあり、非常に高値で取引されていて、高級すし店などでも人気があるそうです」
Q.「初ガツオ」に向いている料理、「戻りガツオ」に向いている料理があれば、教えてください。
長田さん「定番の『刺し身』と『たたき』はどちらもお勧めですが、しいて言えば、初ガツオは『たたき』、戻りガツオは『刺し身』がお勧めです。
初ガツオは、身が引き締まっていて食感が良いのですが、火を通すと身が硬くなり、パサパサとした食感になってしまいがちです。そのため、加熱調理にはあまり適していません。刺し身やたたきの他は、カルパッチョや漬けがお勧めです。
漬け丼にして、締めはだし茶漬けもおいしいです。脂ののった戻りガツオは、生食も加熱調理にも向いています。カツオのステーキ、竜田揚げ、カツオ南蛮などもお勧めです」
(オトナンサー編集部)
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