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ネットでは賛否両論 「カツオの刺し身にマヨネーズ」は本当においしい?

アニメ「美味しんぼ」に、主人公がカツオの刺し身にマヨネーズを付けて食べ、「おいしい」と語るシーンがあります。本当においしいのでしょうか。

カツオの刺し身にマヨネーズ?
カツオの刺し身にマヨネーズ?

 人気アニメ「美味しんぼ」で、主人公の山岡士郎がカツオの刺し身にマヨネーズを付けて食べるシーンがあります。このシーンを見た人が「本当においしいの?」と実際にカツオの刺し身にマヨネーズを付けて食べ、検証したリポートがネット上にも数多くアップされていますが、「おいしい」だけではなく、「まずい」という声もあり、賛否両論です。9月は戻りガツオが旬を迎える時季ですが、本当に、カツオの刺し身にマヨネーズを付けるとおいしいのでしょうか。料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。

ポン酢しょうゆに薬味が一般的だが…

Q.カツオの刺し身は、ポン酢しょうゆにショウガやネギ、ニンニクなどの薬味をのせて食べることが一般的です。カツオの刺し身にマヨネーズを付けて食べると、おいしいのでしょうか。

関口さん「刺し身や、調理した魚にマヨネーズは合うと思います。マヨネーズあえやマヨネーズ焼きなど、マヨネーズを使った魚料理のレシピが数多く存在するからです。特にマヨネーズ好きの人であれば、カツオの刺し身に合わせる食べ方はおいしいと感じるのではないでしょうか」

Q.見た目の印象では、カツオの刺し身にマヨネーズが合うようには思えません。なぜ、おいしいといえるのでしょうか。

関口さん「日本では、カツオといえば、ポン酢しょうゆと薬味が一般的ですが、イタリア料理のカルパッチョでは、刺し身にオリーブオイルや塩、ビネガー(西洋風の酢)を基本にハーブなどをのせていただきます。マヨネーズの材料は油、卵、酢、塩なので、洋風の食べ方を考えると、それほどとっぴな組み合わせではないと思います。

日本でも、サーモンのすしにマヨネーズをのせたり、刺し身サラダという食べ方もあります。新鮮で生臭みのないカツオであれば、マヨネーズ好きにとってはおいしい食べ方といえるのではないでしょうか。

ただし、マヨネーズが好きでも嫌いでもない人からすると、『カツオの刺し身にマヨネーズ』は違和感を覚えるかもしれません。例えば、和食店で注文した刺し身の盛り合わせにマヨネーズが添えてあったら、多くの人は『刺し身はしょうゆで食べたい』と思うのではないでしょうか。そもそも、魚としょうゆの相性は科学的にも証明されており、魚のうま味成分であるイノシン酸は、しょうゆのうま味成分のグルタミン酸と塩分を合わせることで、よりうま味が強く感じられる相乗効果が起こります。

その点、マヨネーズは正統派ではないと思う人もいるでしょう」

Q.アニメ「美味しんぼ」では、主人公の山岡士郎がカツオの刺し身にマヨネーズを付けて食べたことを、海原雄山が「決まった食べ方をしないのは邪道だ」と怒るシーンがあります。懐石料理では「この料理はこのように食べる」などと決まった食べ方が定められており、それ以外の食べ方は許されないのでしょうか。

関口さん「料理の世界に決まりはありません。どこの国でも、伝統的な調理法やレシピは存在しますが、時代に合わせてどんどん変化しています。そもそも、懐石料理は茶の湯の世界で来客をもてなす料理として、茶人の千利休が始めたといわれ、本来はお茶をいただく前に食べる料理でした。和食の基本である『一汁三菜』のスタイルで、ご飯と吸い物に3品のおかずとして、なますや煮物、焼き物があり、香の物を添えるという内容です。

お茶をいただく前に空腹を満たす程度の簡素な食事が、贅(ぜい)を尽くすおもてなし料理へと発展していったことからも、決まりはないといえるのではないでしょうか」

Q.カツオにマヨネーズといった、普段とは異なる調味料を組み合わせて新しい味を求めることを、世の中では「ちょい足し」と呼びます。テレビなどで盛んに取り上げられるなど、日本では「ちょい足し」で新しい味を求める風潮がありますが、こうした風潮は食文化の発展に必要なのでしょうか。

関口さん「世界的に見ても、日本人は料理の世界において、創意工夫を探求し続ける風潮があります。ラーメンやギョーザ、カレーライス、ナポリタンなど、他国の料理をアレンジし、独自の食べ物に進化させてしまいました。新しいおいしさを生み出す発想力が『ちょい足し』であり、食文化の発展に貢献しているのではないでしょうか。ご当地グルメの開発もその一つで、経済効果を生み出し、地域創生に一役買っていることからも、新しい味を求めることはよい風潮といえます」

Q.新しい味付けや食べ方を求めようとするとき、何でもかんでも組み合わせればよいというものではないと思います。新しい味や食べ方を組み合わせるときのコツのようなものはありますか。

関口さん「まずは食材の特徴を理解することが基本です。カツオのたたきを例にすると、通常はポン酢しょうゆにショウガやニンニク、小ネギ、大葉などを合わせます。それはカツオ自体の味が強く、脂がのった魚であるため、酸味や香味野菜の香りでさっぱりいただける工夫です。

マヨネーズを使う場合、カツオの強さに負けそうであれば、酸味を加えたり、おろしニンニクを加えたりするなどして、味にインパクトを出すことで、カツオとのバランスが取れます。また、脂の少ないカツオであれば、むしろ、マヨネーズの油分が程よく感じられることもあるかと思います。

淡泊な食材であれば、素材の味を引き出す繊細な組み合わせ、あるいは、癖がないゆえの思い切った組み合わせができる場合もあります。どのような味わいの料理を作りたいかイメージしながら、食材の特徴を見極め、調味料で足し算や引き算をしてみると、意外な発見ができるかもしれません」

(オトナンサー編集部)

関口絢子(せきぐち・あやこ)

料理研究家・管理栄養士・インナービューティースペシャリスト

米国栄養カウンセラー、ヘルスケアプランナー。企業やウェブサイトなどの各種メディアで、レシピやコラム、企画提案などを行う。斬新なアイデアやニーズを捉えた企画が人気を博し、CM用のフードコーディネートやフードスタイリング、商業施設のフードプロデュースなど多岐にわたり活動。「毎日続けられること」をモットーに簡単・おいしい・おしゃれ、かつ美容と健康に直結したレシピを発信。自らの体調不良を食で克服した経験から執筆した著書「キレイになる!フェロモンレシピ」で「食から始めるアンチエイジング」をテーマに、女性が一生輝き続けるための食事法を紹介。セミナーや女性誌の特集で人気を集めている。

■オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/ayako-sekiguchi/
■YouTubeチャンネル「管理栄養士:関口絢子のウェルネスキッチン」(https://www.youtube.com/channel/UC6cZRYwUPyvoeOOb0dqrAug

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