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なぜ「猫は液体」になれる? 真剣に研究した人も? 獣医師に聞く

猫は液体のように、さまざまな形の容器に、するりと収まってしまいます。なぜ猫は自由な姿勢ができるのでしょうか。獣医師に聞きました。

猫は液体?
猫は液体?

「猫は液体」と言われることがあります。もちろん本当に液体というわけではなく、液体のように、さまざまな形の容器に、するりと収まってしまうことから比喩的に言われているのですが、なぜ猫は液体のごとく、自由な姿勢ができるのでしょうか。世界的には、「猫は固体かつ液体なのか?」と真剣に研究した人もいるようです。「猫は液体」の真相について、獣医師の増田国充さんに聞きました。

皮膚や筋肉、骨格に特徴

Q.「猫は液体」と言われることがあります。なぜ、猫は小さな容器に収まることができるのでしょうか。

増田さん「猫は、自身の体の柔軟性に特徴があります。瞬発力が高いことと関係が深く、それを実現するために、体の各部分が、私たち人間とは異なる構造や性質を持っています。

まず、皮膚にある程度のゆとりがあり、伸びやすいということ。そして、筋肉も同様に柔らかく、俊敏な動きを実現するため、伸縮能力に優れています。骨格にも特徴があります。主要な関節は、動かすことのできる範囲が広く、それを支える靭帯(じんたい)や関節が伸びやすいことも挙げられます。これら複数の特徴が相まって、私たちが到底できそうにない姿勢ができるのです」

Q.体の特徴的に小さな箱などに収まることが「できる」として、猫はなぜ小さな容器に入りたがるのでしょうか。

増田さん「これには心理的な要因や、本来猫の持つ本能が関連しているといわれています。猫はもともと狩猟で食料を得た動物です。狭い所に隠れて獲物を発見したとき、すぐさま狩るという行動を取っていた名残と考えられます。また、猫の好奇心が、狭いところに足を進めて行かせるのかもしれません。

一方、猫は狩りをしながらも、場合によっては、自身より大きな動物に狙われる側の立場になることもありました。暗がりや、狭いところに身を潜めて、身の安全を保つ行動の一つとも考えられます。そのため、狭いところに入り込むことは、ある種安心できる行動につながっていると言えるでしょう。

このように、猫にとって狭い所は、人間から見れば、『窮屈で安心できないのでは?』と考えがちですが、猫にとっては必ずしも、そうではないと思われます」

Q.猫が狭い空間に入って、結果的にそこから出られなくなって騒動になるケースを聞くことがあります。柔軟性があっても、出られなくなるのはなぜでしょうか。

増田さん「よく『猫はヒゲの広さの幅があれば、そこに入ることができる』と言われます。猫のヒゲは重要なセンサーになっているので、ある程度自分の行動可能な範囲を予測しながら行動していると言えます。

とはいえ、確かにニュースなどで、猫が身動きが取れなくなって救出される場面を見掛けます。その多くは、筒状のところに潜り込んでしまったときではないかと、個人的に思います。狭い場所では向きをかえる(転回)ことはできても、後退はあまり得意ではないことが、要因の一つと考えられます」

Q.「猫は固体かつ液体の両方になれるのか」という研究があったと聞きます。

増田さん「2017年にフランスのマルク=アントワーヌ・ファルダン氏が『Can a Cat Be Both a Solid and a Liquid?(猫は固体と液体の両方になり得るのか?)』というテーマで研究し、その成果がイグ・ノーベル賞物理学賞を受賞しました。

液体は容器の形状に合わせて変化する性質を持ち、これを流動学(レオロジー)的に評価を行ったものです。私自身、完全に専門外の学問ですが、緩和数や観察時間といったパラメーターから、『デボラ数』と呼ばれる流動性の指標を算出しようとするものだそうです。

この中でファルダン氏は『子猫より年を取った猫の方が、流動性が高い』としています。非常にユーモアに富んだテーマですが、大真面目にこの問題に取り組み学術的に発表したことで、世界中から注目を集め、とりわけ猫好きの皆さんには、関心が高かったことがうかがい知れます」

Q.小さな容器に入っている猫は、狭苦しい感じもしますが、そのままにしておいた方がよいのでしょうか。ずっとそのままでも身体的には問題ないのでしょうか。

増田さん「猫が狭いところに身を置くこと自体、飼い猫であっても残っている習性の一つですから、決して窮屈さを嫌うことはないと思われます。また、身体的にも十分な柔軟性を持ち合わせているため、猫自身が不快と感じているようでなければ、そのままにしておいてもよいことがほとんどでしょう。

別の見方をすれば、体調不良、特に関節系の疾患がある場合は、膝や股関節、肘などを十分に動かすことをためらうようになります。そうなると、狭い場所で丸まる機会が減ることがあります。安心した様子で『猫鍋』ができる状態を末永く維持できるよう、健康管理に気を使ってあげましょう」

(オトナンサー編集部)

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増田国充(ますだ・くにみつ)

獣医師

北里大学卒業。愛知、静岡県内で勤務後、2007年にますだ動物クリニックを開院。一般診療のほか、専門診療科として鍼灸や漢方をはじめとした東洋医療を行っている。国際中獣医学院日本校事務局長兼中国本校認定講師、中国伝統獣医学国際培訓研究センター客員研究員、日本ペット中医学研究会学術委員、AHIOアニマルハーブボール国際協会顧問、専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師。ますだ動物クリニック(http://www.masuda-ac.jp)。

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