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消しゴムはNG? 子どもに「文字」を教える際、してはいけない4つのこと

子どもが「文字」を書くことに興味を持ち始めたら、その気持ちを消さない教え方が求められます。長年、保育園や幼稚園で文字を教えてきた筆者が「やってはいけない教え方」を解説します。

文字を教えるときのNG行為は?
文字を教えるときのNG行為は?

 子どもは4~5歳になると「文字」を書くことに興味を持ち始めます。せっかく興味や関心が芽生えたのに、大人がそれをつぶすような教え方をしてはいけません。30年間、子どもたちに保育園や幼稚園で文字を教える仕事をしていた経験をもとに「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館クリエイティブ)というドリルを作った私が指導経験から感じた「やってはならない教え方」を4つご紹介しましょう。

第3位「1番、2番…という筆順の教え方をしない」

「も」と「5」の筆順の覚え方
「も」と「5」の筆順の覚え方

 平仮名の「も」で考えてみます。片仮名の「モ」の筆順は横棒が先ですが、平仮名は「し」のようなクルンとした部分を先に書き、次に横棒を2本書きます。「も」は筆順を間違って覚えている人が多い文字です。おそらく、「ここ(上の横棒)が1番で、ここ(下の横棒)が2番」という覚え方をして、そのまま定着してしまったのでしょう。それよりも「尻もちドーン、でも、腕2本で何とか踏ん張るよ!」と覚えると忘れません。

 数字の「5」の筆順も上の横棒から書いてしまう子が多いのですが「1番→2番…」のように単なる順番として教えてもすぐに忘れてしまい、同じ間違いをします。「お出掛けゴーゴー(55)! 出掛けるときは最後に帽子をかぶるよね。ここ(5の横棒の部分)は“帽子”なの。だから、先に“体”を書いて、最後に帽子をかぶろうね」と教えると一発で覚えます。このように、文字や数字の形を何かに例えることで、イメージとして筆順が理解しやすくなるのです。

第2位「消しゴムを使わせる」

 消しゴムを使うという行為は「自分がやったことを自ら否定させること」です。書いて消す、を繰り返すことでプリント自体が汚れていきますし、破けてしまうこともあります。これではますます、学習意欲がなくなってしまいます。書き直しをさせたければ、その文字を消さずにあえて残し、次の枠に書かせましょう。そうすると、その直前に書いた文字との比較ができます。

 お手本の文字と比較するのではなく、子ども自身が書いた過去の文字と今書いた文字とを比較することで「ああ、さっきよりもうまく書けたな」と実感でき、意欲が湧きやすくなります。同様に、1カ月前や半年前に書いていた文字を見せて比較させるのも、子どもが自身の文字の上達を感じられるのでよい方法です。

番外編:「きれいに」「丁寧に」と言わない

マヨネーズをイメージして教える方法も
マヨネーズをイメージして教える方法も

「きれいに書きましょう」「丁寧に書いてね」。これらは、子どもにとっては実に曖昧な言葉です。保育園で平仮名を教えていたとき、「あ」の文字の輪っかになっている部分について、子どもたちに「ここ、何に見える?」と質問しました。「タケノコ」「魚」などいろんな答えが返ってきましたが、一番多かったのは「マヨネーズ」。

 そこで、私は「ここはマヨネーズの形にしてね」と教えたところ、子どもたちは皆、整った「あ」が書けるようになりました。歴史の年号を語呂合わせで覚えたのと同じように、文字もイメージしやすいもので覚えた方が楽ですよ。

第1位:真っ赤に添削する

NG添削例(左)と望ましい添削例
NG添削例(左)と望ましい添削例

 やっと書けるようになった「山」の漢字。しかし、担任はその子のそばで見ているわけではないので、どこから書いたのか、筆順が分かりません。そこで「最後の3画目(右の縦棒)が下に突き出ていない」と直しました。

 書家が書くお手本や学校の教科書を見ても、確かに「山」の3画目はわずかに下に出ていますが、漢字を習いたての小学校1年生にここまで要求するのは酷ではないでしょうか。同様に、ここに並べた2枚の写真のうち、左のケースではどうでしょうか。ほとんどの「ほ」が、右の部分の上が突き出てしまっています。そこを先生が真っ赤に添削しています。

 間違って覚えているのか、手先が器用でなくてうまく書けなかったのか。そして、まぐれなのか、唯一、真ん中の“ほ”だけが突き出すことなく書けている状態です。こんなとき、間違いを真っ赤に直されたら、子どもはどう感じるでしょうか。私は今まで、「こんなに間違えたんだ。今度は直されないように注意して書こう」と奮い立つ子に出会ったことが一度もありません。

 そんなときは、まぐれであってもそうでないとしても、正しく書けている文字を「これは突き出ないで書けたね」と褒めてあげればよいのです。これは行動心理学でいう「正の行動を強化し、負の行動を強化しない」やり方です。負の部分はネチネチ言わず、正しい部分を褒めるという形で強化するのです。

 なぜ、この字がよいのか、具体的に言葉をかけて褒めると「今度はもっとたくさん花丸をもらおう」と、正しい字を喜んで練習するようになります。赤は攻撃的な色ですから、丸をつけるときにはいろんな色を使って、きれいに花丸をしてあげるとなおよいでしょう。文字を書くことに興味を持った子どもの意欲を消さないために、よかったら参考にしてみてくださいね。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

【画像】この教え方はNG! 「山」の添削例

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

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