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普段はいい人なのに…“店員の前で”態度が悪くなる人の心理とは?

普段は「いい人」という印象にもかかわらず、飲食店などの店員の前で態度が悪くなる人が少なからずいるようです。どのような心理によるものなのでしょうか。

店員への態度が悪い人の心理とは?
店員への態度が悪い人の心理とは?

 家族や友人が見せた、店員さんに対する態度が悪くてドン引きした――。こうした体験談がしばしば、ネット上で話題になります。普段、家族や友人として接しているときは「普通の態度」「いい人」という印象にもかかわらず、飲食店などでは店員に横柄な態度を取ったり、偉そうな口調で話したりして、周囲を驚かせる人もいるようです。

 こうした人について、「店員さんの前でだけ態度悪い人いるよね」「夫がこのタイプで、なるべく一緒に外食したくない」「『こっちが本性なのかな』と思って距離を置きたくなる」などさまざまな声が上がっています。普段はいい人なのに、店員の前で態度が悪くなる人の心理について、心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

「公的自己意識」とは何か

Q.普段は「普通の態度」「いい人」といった印象の人が店員の前になると「偉そうになる」「横柄な態度になる」「口調が乱暴になる」などの変化を見せるケースがあるようですが、こうした人の心理状態とは、どのようなものだと考えられますか。

小日向さん「偉そうな態度や横柄な言動、乱暴な口調などは、相手のことを『自分より格下だ』と思っている心理と『公的自己意識』の低さが主な心理要因だと思います。また、当然、これらの心理が重なっている場合もあるでしょう。

公的自己意識について説明します。『自分をどのように考えているか』という概念を『自己意識』といいますが、自己意識の中には、自分の感情など本人にしか体感できない意識である『私的自己意識』と、容姿や社会的地位など他者から見える自分の外面部に対する意識である『公的自己意識』があります。

そして、ある心理学実験によると、対面コミュニケーションに比べると、コンピューターコミュニケーションの方が公的自己意識が低くなるという結果が得られています。つまり、人はパソコンのような機械(ハード)を介すると、言いたいことを言いやすくなるという心理が一般心理としてはあるのです。

つまり、店員に横柄な態度を取る人は店員を機械のように見ている可能性があるのです。想像力や共感力が育っていれば、店員さんは機械などではなく、自分と同じ心を持った人間(ソフト)であるということが理解でき、そのような態度にはならないはずですが、想像力や共感力が欠如した人は店員さんを機械のように見て、横柄な態度を取ってしまうのだと考えられます」

Q.こういうタイプの人は自分のそうした性格・心理状態を自覚しているのでしょうか。

小日向さん「その場で、一緒にいた人に何度も指摘されるといった経験があれば自覚すると思いますが、一般的に、相手のネガティブな行為について、きちんと指摘できる人はそれほどいないので、『自ら気付く』ことはほぼないと思います。また、自覚しても、それが必ず、修正行動に結び付くかというと一概にはいえません」

Q.店員に対して、普段のいい態度とはかけ離れた態度を取る人について、「悪い態度の方が本性なのではないか」と考える人も少なくないようですが、「店員への態度=その人の本当の性格(本性)」という考え方についてどう思われますか。

小日向さん「『本性』の辞書的な意味は『その人の、生まれながらの性質』です。この意味に沿って考えるのであれば、『悪い態度が本性』の人の『普段のいい人』というのは、後天的に培われたものだということになります。では、『先天的なもの=本性』だけで人を評価してよいのでしょうか。

『店員さんへの悪い態度が本性だから、その人を嫌いになる』ことは突き詰めていくと、人間が体験や学習など後天的に培われるものの全てを否定することにつながってしまうと思います。従って、個人的には、人間の性格を先天的/後天的という2面だけで見ることは危険だと思います。人はパーソナリティー(ある人に特有の認知、行動、感情などの在り方という性格、気質、倫理観、価値観など『その人』を統合する概念)で見るべきだと考えています」

Q.店員の前で態度が悪くなる人が身近にいる人の中には「やめてほしい」「一緒に行動したくない」と感じる人も多いようです。態度が悪くなる人に対して、どのような接し方をするとよいでしょうか。

小日向さん「画一的に、こう接すればよいというものはないと思います。その人と自分の将来も含めた関係性で考えてみることです。距離を置いても日常が問題なく回るのであれば、不快な思いをしてまで、その人と一緒に行動する必要はありませんし、『店員の前での態度は嫌だけれど、そこを直してくれたら付き合いたい』と思う関係であれば、直接、本人に伝えるべきです。

なお、伝えるときのポイントとしては、時間を置かずに伝えることです。先述したように、本人は気付いていないケースがほとんどなので、時間がたつほど、『そんな態度は取っていないよ』と否定されたり、『昨日のことなど忘れてしまった』というケースが高くなったりするためです」

Q.「店員の前になると態度が悪くなる」と自覚している人、もしくは周囲からそう指摘されて悩んでいる人がこのような性質を変えたいと思ったとき、どのような意識・行動をするのがよいでしょうか。

小日向さん「まずは『自分がされたらどう思うか』という意識を心掛けてください。自分が店員であったとしたら、自分の態度をどう受け取るかということです。そして、『自分がそれをされたら嫌だなと思ったら、それをしない』ことです。当たり前のことですが、当たり前のことを愚直に守るのが第一です。

そして、もう一つ、人は抑圧された環境下にいると、どこかでそのストレスを発散させたくなり、利害関係のない人や自分より弱い立場の人に当たりたくなるものです。強い抑圧環境に心当たりがある人は、その環境から抜け出すことも考えてみてください」

(オトナンサー編集部)

小日向るり子(こひなた・るりこ)

心理カウンセラー

カウンセリングスペース「フィールマインド」代表。出版社で働きながらボランティアで電話相談員を始めたことが、カウンセリングの世界に入るきっかけに。資格取得後、行政機関でのセクハラ相談員を経て、2012年に独立。2019年4月現在、約3500件の相談実績を持つ。メディア、ネットなどで心理・恋愛系コラムを多数執筆。フィールマインド(http://feel-mind.net/)。

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