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嫌がったり、暴れたり…猫の「爪」、どうしたらうまく切れる? 獣医師に聞く

猫の「爪」をうまく切るには、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。獣医師に聞きました。

猫の爪、切るときの注意点は?
猫の爪、切るときの注意点は?

 猫を飼っている人の中には、猫の「爪」の手入れに悩む人もいるようです。爪を切ろうとすると嫌がったり、暴れたりして、作業が進まないことが多いからです。それでも、爪を伸ばしたままにすると、飼い主や一緒に飼っている猫がけがをする恐れがあるため、定期的に猫の爪を切る必要があります。猫の爪を切るときは、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。獣医師の増田国充さんに聞きました。

機嫌が悪いときは無理せず

Q.そもそも、なぜ、猫は飼い主が爪を切るのを嫌がるのでしょうか。

増田さん「元々、猫は指先を触られるのがあまり好きではないからです。そのため、飼い主が爪を切るために、指先に触れようとすると警戒しますし、無理やり、爪を切ろうとすれば、飼い主を避けるようになります。また、猫は爪を切るときに生じる刺激も嫌います。

爪切りのときに何度か、嫌な思いをすれば、『爪切り=自分にとって何か嫌なことをされるのでは?』と考えるようになり、爪切りに対する苦手意識が強くなるのです。猫に限らず、人間でも痛い思いをすると、その行動をできるだけ遠ざけようとします。猫の爪切り嫌いを加速させないためには、爪切りに失敗しないことが大切です」

Q.どうすれば、猫の爪をうまく切ることができるのでしょうか。爪を切るときの注意点について、教えてください。

増田さん「爪切りの際、猫が暴れたり、飼い主が爪を深く切ったりすると、猫がけがをするケースがあるので注意してください。爪をうまく切ることができるかどうかは、猫の機嫌が大きく影響します。猫が『極度に興奮している』『おびえている』といった様子を見せているときは、爪を切らないようにしましょう。

また、一度にすべての爪を切ろうとしなくても構いません。心に余裕を持って臨んでください。猫の爪は人間とは形状が異なるため、動物専用の爪切りを使用することが重要です。はさみタイプなど、いくつか種類があり、使用者によって好みが分かれるので、使いやすい製品を選んでください。

猫の爪をよく観察すると、根元がピンク色に、先端から中ほどが半透明になっていることが分かります。ピンク色の部分には血管や神経があるので、その部分まで切ってしまうと、いわゆる深爪の状態となり、出血して痛みが生じます。そのため、爪の半透明な部分だけを切るように心掛けましょう。

その際、ピンク色の部分との境目ギリギリで切ろうとすると、少量ですが出血する可能性があるので、1ミリ程度残して切るのが無難です」

Q.猫の爪を切る、適切な頻度について教えてください。

増田さん「爪切りの適切な頻度は、猫によって、活動性や年齢などによる個体差があるので、数週間から2カ月と幅広いです。かかりつけの動物病院に一度、相談することをおすすめします」

Q.どうしても猫が爪を切るのを嫌がる場合や、自分たちではうまく爪を切れない場合、動物病院で定期的に切ってもらうことは可能なのでしょうか。

増田さん「自宅で猫の爪切りができない場合は、動物病院で切ってもらうことも可能です。猫によって、性格や個性もさまざまなので、動物病院では個々の猫に適した方法で爪を切ります。ただし、動物病院に連れて行くと、猫が、自宅にいるときよりも興奮や緊張するケースもあります。

その場合、抱っこをした状態で爪を切ることが可能なときもあれば、猫用のネットやエリザベスカラー(プラスチック製の保護具)の装着が必要になるときもあります。どうしても自宅で爪が切れないような場合、まず、かかりつけの動物病院に相談するとよいでしょう」

Q.「うまく切れない」「嫌がる」などの理由で、飼い主が猫の爪切りを怠った場合、爪の成長にどのような影響があるのでしょうか。

増田さん「猫の爪は人間と同じく、徐々に伸びていきます。猫の場合、爪を研ぐことによって先端が鋭利になるように、自ら、手入れをします。そのため、爪の長さが極端に長くなることは少ないのですが、とがった爪で自分の体を引っかくことで、皮膚の損傷を招くことがあります。

また、飼い主が猫に引っかかれることで、けがをしたり、人畜共通感染症にかかったりする可能性もあります。このほか、猫が高齢になると、爪研ぎの頻度が減る傾向にあります。爪が伸び過ぎると、猫自身の肉球に爪が刺さる場合があるので、猫の爪の状態は日頃から、よくチェックすることをおすすめします」

Q.ちなみに、猫が爪を研ぐ際、壁などを使うのはなぜなのでしょうか。

増田さん「猫の習性が大きく関連しています。猫が爪を研いでいるときの様子をよく観察してみると、伸びをしながら爪研ぎをしていることが多いです。その際、爪の引っ掛かりにちょうどよい素材の壁紙やファブリック(生地や織物)があることが猫にとって都合がよいと考えられるので、壁紙やカーテン、ソファなどが、爪研ぎをする上でちょうどよい物になります。

猫に爪研ぎをやめさせるのは難しいです。壁紙やカーテン、ソファなどで爪研ぎをさせないようにするには、爪研ぎ用のグッズなど、爪研ぎをさせてもよい物を近くに置く必要があります」

(オトナンサー編集部)

【写真】嫌がる子もいるけど…猫の爪切りの様子

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増田国充(ますだ・くにみつ)

獣医師

北里大学卒業。愛知、静岡県内で勤務後、2007年にますだ動物クリニックを開院。一般診療のほか、専門診療科として鍼灸や漢方をはじめとした東洋医療を行っている。国際中獣医学院日本校事務局長兼中国本校認定講師、中国伝統獣医学国際培訓研究センター客員研究員、日本ペット中医学研究会学術委員、AHIOアニマルハーブボール国際協会顧問、専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師。ますだ動物クリニック(http://www.masuda-ac.jp)。

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