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安い「デカ盛り」料理を出す店を“美談”にする番組、本当にそれでいい?

「デカ盛り」の料理を安価に提供する店をテレビ番組では「お客さんのために頑張っていて偉い!」と“美談”にしがちですが、実は赤字の店もあります。本当に美談にしてよいのでしょうか。

「デカ盛り」を美談にしていい?
「デカ盛り」を美談にしていい?

 テレビのグルメバラエティー番組では、超大盛り、いわゆる「デカ盛り」の料理を驚くような安価で提供する飲食店を紹介することがあります。リポーターが「どうして、こんなに安いのですか? 赤字では?」と聞き、店主が「お客さんの喜ぶ顔が見たいから。ほとんど利益はないけど大丈夫」と答えるやりとりを目にしますが、実際は薄利どころか赤字の飲食店もあるようで、赤字分を副業で補ったり、貯金を取り崩したりして経営しているケースもあるそうです。

 こうした飲食店は「お客さんのために頑張っているから偉い!」と番組の中では“美談”にしがちですが、本当にそれでよいのでしょうか。飲食店コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

「デカ盛り」以外の注文が応援に

Q.そもそも、デカ盛りを安価で提供する飲食店はどのような目的があるのでしょうか。純粋に「お客さんに喜んでほしい」だけなのでしょうか。

成田さん「飲食店によって、目的はそれぞれだと思いますが、『純粋にお客さんに喜んでもらいたい』という店と『デカ盛りが話題になって集客につなげたい』店が多いのではないでしょうか」

Q.デカ盛りを安価に提供していても、店全体として採算が取れている店の場合、どのような方法で収支を合わせていることが多いのでしょうか。

成田さん「デカ盛りを安価で提供した場合はもちろん、原価率が高くなります。店全体として採算を合わせるには、それ以外の出費の割合を抑えなければいけません。その対象になるのが人件費や広告宣伝費、消耗品費などです。デカ盛りが口コミやSNSで拡散したり、マスメディアに取り上げられたりして、店の宣伝になる可能性があることを考えると、原価率が高くなる分を、広告宣伝費の割合を低くすることで穴埋めするのが妥当ですね」

Q.ここからは店全体として赤字の場合について、お尋ねします。「お客さんが喜ぶ顔を見たい」という理由でも、売れば売るほど赤字になるような価格設定をすることについて、どのように思われますか。

成田さん「経営が健全ではないので心配ですね。『お客さんに喜んでほしい』という姿勢は大事ですが、だからといって、赤字続きを認めてはいけないと思います。経営者は、その家族や従業員の生活を守らなくては経営を続けられないですし、続けられなければ、デカ盛りの料理で、お客さんを喜ばせることもできなくなるからです。

とはいえ、デカ盛りのような、売れば売るほど赤字になるメニューがあるお店でも、多くの場合、デカ盛り以外のメニューやドリンクなどの価格を少し高めに設定するなどして、全体で採算が取れるようにしているはずです。また、『料理が好きだから』など趣味感覚で飲食店を経営し、デカ盛りを安価に提供して赤字となっている場合は、おそらく、十分な収益がある別事業や、余裕のある資産から、赤字分を穴埋めしていると考えられます」

Q.テレビのグルメバラエティー番組では、こうした飲食店を「お客さんのために頑張っているから偉い!」と美談にしがちです。背景に、店主が何らかの無理をしている可能性があるのに美談にしてよいものでしょうか。

成田さん「番組で美談にすれば、印象もよく、話題にもなるので美談にされがちですね。採算が取れる範囲内でデカ盛りを安価で提供しているのであれば、経営努力なので問題ありません。しかし、何らかの無理をしていたり、趣味感覚で経営したりしている飲食店もあります。努力をして健全な経営をしている飲食店からすれば、『表面的に比較されたら、マイナスイメージになるので、美談にするのはやめてほしい』という気持ちなのではないでしょうか。

実際、赤字続きでも気にせず、デカ盛りを安価に提供する店に客が流れて、売り上げが減り、経営難でつぶれた飲食店を知っています。ただ、日本は自由経済ですから、そのように美談にしてしまう番組があったとしても私は容認しますし、ましてや、そうした飲食店が現れたとしても、客を奪われずに長く続けられる店にすることの方が大切だと考えます」

Q.デカ盛りなのに、それに見合わない安価で提供している飲食店を見つけると、得した気分になる人もいると思います。こうした飲食店を見つけた場合、何も考えず入店し、デカ盛りなのに安価な料理を注文してよいのでしょうか。

成田さん「得した気分になって、注文してもらって構いません。しかし、特別な理由がない限り、多くの飲食店は経営努力によって成り立っています。飲食店がデカ盛りを安価に提供できる経営努力を行っていることを、頭の片隅に置いてもらえるとうれしいです。

デカ盛りのお気に入り店があるのであれば、毎回、デカ盛りだけの注文ではなく、たまにはデザートメニューやドリンクなど他のメニューも注文してください。他のメニューで採算を合わせている可能性があるからです。たまには他のメニューを注文することが、健全な経営を長く続けるための応援につながります。お店が経営難で消えてしまえば、デカ盛りも食べられなくなるのですから」

(オトナンサー編集部)

成田良爾(なりた・りょうじ)

飲食店経営コンサルタント

ヴィガーコーポレーション代表取締役。厚生労働省公認レストランサービス技能士(国家資格)、文部科学省後援サービス接遇検定準1級、食生活アドバイザー2級、他。飲食業界25年以上。ミシュランガイド掲載の高級レストランから個人経営の小さな大衆店まで幅広いジャンルの飲食店に携わり、その経験に基づく統計解析および枠にとらわれないアイデアで多くの赤字店を黒字化させてきた実績を持つ。「100年続く店づくり」をモットーに、次世代育成や飲食業の働き方改革などにも力を入れており、食文化普及の他、職業訓練校講師(フードビジネス科)や子育て女性就職支援事業講師なども歴任。現在も多くの飲食店経営者のサポートを手掛ける。飲食店専門のコンサルティング「オフィスヴィガー」HP(http://with-vigor.com/)。

コメント

1件のコメント

  1. B級グルメの定義自体曖昧ですが多分それの延長線上の文脈でしょうか。