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働かずに年収2000万円、若手の攻撃の的 働かない高給取りはなぜ存在するのか

就活や転職、企業人事のさまざまな話題について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

高給取りなのに働かない社員?
高給取りなのに働かない社員?

 会社勤めをしている人の多くにとって、給料の額は大きな関心事の一つでしょう。営業成績トップの社員がトップクラスの給料をもらうことには、大半の人が納得するでしょうが、一方で、「高給取りなのに働かない社員」がいると、不平不満の声が充満すると思われます。なぜ、そのような社員が存在するのか、不満を感じたらどうすべきなのか、考えてみましょう。

考えられる3つの理由

 企業の人件費は基本的には予算が決まっています。人件費は費用の中でも大きなものなので、誰にいくら払うかという計画を立てていなければ、いつの間にか、企業全体の予算をオーバーして、場合によっては赤字転落などという、目も当てられないことにもなりかねないからです。

 計画を立てるためには、明確な方程式に従って、誰にどれくらい支払うかを推定し、それを積み上げて人件費を決める必要があります。どんな企業でも、報酬を決めるステップはある程度厳密に決められており、なんとなく適当に決まっているということはありません。

 一方で、最近ではさまざまなところで、主に中高年の社員が「働かないのに高給取り」であることに対する周囲の不満の声が聞かれます。「窓際で終日ぶらぶらしているのに年収2000万円」というような人のことを、「窓」「2000」の連想から“Windows 2000”(懐かしい言葉ですが…)と、やゆする声も出ているようです。

 デフレを脱却できず、何十年も停滞している今の日本で、働かない人に高給を支払う余裕が本当にあり得るのかとも思いますが、これだけよく聞くということは実際にたくさんいるのでしょう。そして、彼らは社内から、特に若手社員からの攻撃の的になっています。

 ただ、企業は合理的でなければ、競争に敗れて存続できないため、既得権益に守られた一部の会社を除けば、基本的には、非合理な状況が長く存在することはあまりありません。そう考えると、働かない高給取りが実際にいたとしても、それは何らかの理由があるはずです。それはどんな理由なのでしょうか。3つ挙げてみます。

【理由1】昔は大活躍していた

 まず、若手社員の知らない昔、その「働かない高給取り中高年社員」が大活躍して、会社に大きな貢献をしていたケースです。「後払い」要素の大きかった昔の評価報酬制度では、その時その時の昇給や賞与などですべてが報われることはなく、「君のしてくれた貢献は将来にわたって、ゆっくりと報酬に反映していくからね」と言われてきたのかもしれません。

 そして、その「昔の大貢献」分を今もらっているのかもしれないのです。昔のツケを会社が今支払っているようなもので、今の若手は納得がいかないかもしれませんが、当の働かない高給取り社員視点だと「何が悪い」というのもギリギリ理解できます。

【理由2】希少能力を保持している

 報酬の決まり方には「社内価値」と「市場価値」の2つの考え方があります。社員からは社内でどれだけ貢献しているのか(社内価値)は分かりやすいので、それで報酬が決まった方がよいと考えるでしょう。

 しかし、転職などで労働力の流動性の高い現代においては、社内価値だけで報酬は決まらず、「その能力を持っている人は、どれくらいの報酬で中途採用できるのか」(市場価値)も報酬決定の大きな要素です。分かりやすい例は弁護士や公認会計士等々の希少資格保持者です。

 彼らを採用しようと思えば、「働く、働かない」にかかわらず、相場の(高い)報酬を出すことが必要条件となります。市場価値は需要と供給で決まるので、希少能力は高い報酬につながります。ただ、それを生かせるかどうかはマネジメント次第ですし、実はそれほど必要ない希少能力なのに、その能力を持つ人を採用してしまったら、働かない高給取りとなってしまうわけです。

【理由3】平等文化、年功序列文化

 最後は昔ながらの「平等文化」「年功序列文化」から来るものです。「年を取ったら、みんないい給料がもらえるようにしよう」ということです。令和の時代、昭和的なこのような文化はどんどん消えているようにも思えますが、人事コンサルティングをしていると、歴史ある企業であればあるほど、意外なくらい年功的人事制度が残っています。

 それは社員の同意がない限り、企業側が勝手に社員の待遇の大きな不利益改定を行うことはできないからです。バブル期入社組があと10年ぐらいでどんどん定年を迎えようとしていますが(雇用関係の法改正に伴い、定年延長の可能性大ですが)、その山を越えるまではしばらく続くでしょう。

不満を感じたら、どうすべきか?

 以上、「働かない高給取り」がいる場合の「理由」について考えてみました。

 皆さんの周りにいる、働かない高給取りに当てはまるパターンはあったでしょうか。理由が分かっても「頑張っているのに、自分は低い給料だ」と考えている若い人の不満の解消にはならないでしょうが、筆者が伝えたいのは「働かない高給取りが悪者なのではない」ということです(もちろん、「働け」とも思いますが)。

 なぜなら、彼ら自身が給料を決めるわけではないからです。もちろん、高給取りであること自体は嫌なことではないでしょうが、そのことで責められても、本人もどうしてよいか分からないでしょう。

 給料を決めるのは会社であり、経営者です。働かない高給取りのことばかり、ああだこうだ言っていても意味がないのです。ですから、「お金を給与として人に投資しているのにリターンがない(働かない高給取り)」をなくすためには、経営層に働き掛けなくてはいけません。

 本気で会社のために、働かない高給取りを一掃したいということであれば、ここまで述べた理由も踏まえて、解決案を出し、経営を動かしていかなければ、その存在は解消できないでしょう。「働かない高給取りがいても、別に自分とは関係ない」とスルーするのか、問題だと考えて動くのか、あなたはどちらを選びますか。

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス」(共著、ソシム)など。

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