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大声やごみで迷惑も…日本は公共の場での「飲酒」、なぜ規制できない?

緊急事態宣言による飲食店の酒類提供禁止に伴い、「路上飲酒」が問題になっていますが、日本には海外のように、公共の場での飲酒を禁止する法律がありません。なぜでしょうか。

路上飲酒の自粛を求める東京都のポスター(2021年4月、時事)
路上飲酒の自粛を求める東京都のポスター(2021年4月、時事)

 3回目の緊急事態宣言が発令された4都府県では、飲食店に酒類提供禁止が要請されました。そのためか、路上や公園など公共の場で飲酒をする人が増え、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために行政側が飲酒をしないよう呼び掛けています。ただ、あくまで「協力のお願い」であることから、必ずしも飲酒を防げていません。中には、酔っぱらって、大声を出して話したり、飲み食いしたごみを放置したりと周囲に迷惑をかける人もいます。

 こうした迷惑行為を防ぐため、海外では公共の場での飲酒を禁止する法律がありますが、日本にはありません。なぜ、日本では公共の場での飲酒を禁止できないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

ノルウェー、ポーランド、ロシアなどは禁止

Q.海外で、公共の場での飲酒を禁止している国は例えばどこですか。

牧野さん「路上を含む公共の場での飲酒を禁止しているのは、ノルウェーやポーランド、ロシア、スペインなどで、アメリカも州や都市によって異なりますが、禁止しているところが多いです。オーストラリアは原則として、飲酒が許可されている場所以外では禁止、シンガポールでは、午後10時から翌日午前7時までの夜間、公共の場での飲酒が禁止されています。その他にも、イスラム教が国教という宗教上の理由から、サウジアラビアでは飲酒そのものが違法とされています。

反対に、日本と同じように路上を含む公共の場での飲酒が合法の国は、中国やブラジル、スイス、フランス、オーストリアなどです」

Q.違反した場合、どのような罰則があるのですか。

牧野さん「例えば、アメリカのカリフォルニア州の刑法では、法律上はビーチなど公共の場所で飲酒することは違法で、レストランやバーで飲酒した場合でも、その後、公共の場に出れば、全て違法行為に該当します。路上を含む公共の場において、泥酔状態にあるなどアルコールの影響下にあれば保護され、場合によっては逮捕されます。罰則は6月以下の禁錮、または1000ドル以下の罰金、もしくはその併科です」

Q.日本では現在のところ、公共の場での飲酒を禁止する法律はありません。なぜ、日本では海外のように、法律で公共の場での飲酒を禁止できないのでしょうか。

牧野さん「お酒に寛容な文化的な背景が大きいと思います。ただ、公共の場での飲酒を禁止する法律や条例はかつては存在しませんでしたが、現在は地方自治体が条例で、海水浴場での飲酒を制限している事例があります。神戸市や神奈川県鎌倉市などです。

また、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為に対しては、1961年に制定された『酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律』(俗に『酔っぱらい防止法』)により、『酩酊(めいてい)者が、公共の場所、または乗り物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野、または乱暴な言動をしたときは、拘留、または科料に処する』(4条)としています。つまり、日本でも、公共の場での飲酒自体を禁止する法律こそないものの、飲酒で発生する迷惑行為に対処する規制法は設けられているのです」

Q.海水浴場での飲酒を制限する条例があることは分かりましたが、東京都渋谷区には、ハロウィーン期間の路上禁酒条例があります。繁華街を抱える地方自治体が条例などを定めて対応するのも難しいのでしょうか。

牧野さん「海水浴場でできるのですから、繁華街を抱える地方自治体が、その繁華街の路上での飲酒を禁止する条例を制定するのは可能だと思います。いきなり、路上での飲酒を恒久的に禁止すると反発も大きいと思うので、まずは渋谷区のハロウィーン期間の路上禁酒条例のように、行政区分ごとに、人が集まる繁華街が含まれる特定のエリアや期間、時間に限定して、条例で規制することが現実的ではないでしょうか。

ただ、条例は各地方自治体の議会で議案を通過させないと制定できないため、現在問題になっている、路上での飲酒をすぐに規制するのは難しいでしょう。各自のモラルと自治体職員による声掛けに頼るしかないのではないでしょうか」

Q.酒類は国や地方自治体にとって、大切な財源の一つでもあります。自らの財源だから、法による規制をかけにくいという側面はあるのでしょうか。

牧野さん「酒類からの税金が国や地方自治体にとって、大切な財源であるのは確かです。そのため、法による規制をかけにくい側面もあるかもしれません。しかし、それ以上に、お酒に寛容な文化的な背景が日本にあり、禁酒を求める規制に対して抵抗が大きいと考えられることが、法による規制ができない一番の背景ではないでしょうか」

Q.では、やはり日本では、公共の場での飲酒を禁止することはできないのでしょうか。

牧野さん「例えば、盗撮行為を各都道府県の迷惑行為禁止条例などによってそろって規制したように、公共の場での飲酒も、新型コロナの感染拡大防止という公益的目的での規制として、必要に応じて、地域や期間、時間などを限定して条例で禁止する方法があります。地方自治体がその地域に合わせた条例を定めることで、より柔軟に法的な規制をすることが可能になると思います」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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