ボールペンNG? パソコンは失礼? 「年賀状」の注意点、専門家が解説!
「年賀状」は鉛筆やボールペンで書いてもよいのでしょうか。年賀状を書く際の注意点を専門家に聞きました。

年賀状を準備する時季です。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で年末年始の遠出を控える人も多いと思いますがその分、年賀状で友人、知人に近況を伝えようと考えている人も多いのではないでしょうか。
年賀状といえば、この時季の小売店では筆ペンを多めに置いているのが目立ちますが、年賀状は鉛筆やボールペンで書いても問題ないのでしょうか。年賀状を書く際の注意点について、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。
毛筆か万年筆が好ましい
Q.年賀状を書く際の注意点について教えてください。
齊木さん「そもそも、年賀状はお祝いの言葉を書いて、昨年の感謝と新しい年も変わらないお付き合いをお願いする『年始のあいさつ回り』の代わりとして送るものです。
まず、気を付けたいのは相手によって、『賀詞(がし)』(祝いの言葉)を使い分けることです。『謹賀新年』には『謹んで新年をお祝いします』という敬意が含まれていますが、『賀正』『迎春』などは単に『正月を祝う』『春を迎える』という意味になり、敬いの意味は含まれません。そのため、目上の人には『謹賀新年』『恭賀新年』など敬意の伝わる賀詞を使いましょう。
また、基本的に年賀状では『、』『。』などの句読点を付けないようにします。これは『縁起のよいことはずっと続いてほしい、せっかくのおめでたいことに区切りをつけない』という意味があるためです。加えて、句読点の使用が日本で広まったのは明治時代以降であり、それまでは句読点なしで手紙などの文章を書いていたことから、日本の伝統行事である正月には、句読点なしのあいさつ文がふさわしいからでもあります。
このほか、『去る』『滅びる』『絶える』『衰える』『破れる』『失う』『枯れる』『倒れる』などの忌み言葉にも注意しましょう。特に今年は『コロナ禍』といった言葉がよく使われますが、『禍』は『わざわい』とも読むことができ、忌み言葉になるため、文中では使わない方がよいです」
Q.年賀状を書くときはボールペンではなく、万年筆や筆ペンで書いた方がいいのでしょうか。また、子どもが年賀状を書く際は、鉛筆で書かせても大丈夫でしょうか。
齊木さん「本来、正式な手紙には毛筆か万年筆を使うのが好ましいとされています。新年のお祝い事の際は、目上の人には毛筆や万年筆、難しい場合は筆ペンで書くのが好ましいでしょう。ボールペンはあくまで『事務』目的で用いるものであり、ボールペンのような細い字で書くより、毛筆のような太くて力強い字の方が受け取った人の印象がよいからです。
子どもが書く場合は、大人ほどこだわらなくてよいと思いますが、鉛筆よりはクレヨンや色鉛筆を使って鮮やかに描いた方が思いも伝わりやすく、受け取る人の印象もよいと思います。相手の立場に立って選びましょう」
Q.宛名は縦書きと横書きのどちらで書くべきでしょうか。また、宛名で算用数字(1、2、3など)はできるだけ使わない方がいいのでしょうか。
齊木さん「年賀状の宛名の書き方は基本的には『裏面』の書き方に合わせます。例えば、裏面を縦書きで書く場合は宛名も縦書きにしてください。また、宛名で数字を書くときは、縦書きであれば漢数字、横書きであれば算用数字を使いましょう。
なお、戦前の日本の公用文は基本的に縦書きだったことから、現代でも、手紙など儀礼色の強いものは儀礼性と格調高さを示すために縦書きが中心となっています。年賀状でも、目上の人やお世話になった人には本文、宛名共に縦書きにするとよいでしょう」
Q.宛名を黒色以外(青色など)で書くのはどうでしょうか。
齊木さん「日本では1970年代まで、長期保存が必要な書類の記入には主に『ブルーブラック』の万年筆が使われていました。このインクは時間がたつと青みが消えて黒くなり、その黒色が長期間たっても消えないことから、公文書のような大切な文書に使われていました。そのことから、儀礼色の伴う目上の人には黒で書いた方が好ましいとされています。
なお、青いインクの万年筆も売られていますが、これはヨーロッパなどの文化の影響で日本に入ってきました。印鑑よりサインを重視する文化圏では、コピーと原本を区別するために『青』で書くのが主流のためです。しかし、日本は墨文化である上、印鑑の有無でコピーと原本を区別する意識が強く、正式な色として『青』は根付きませんでした。依然として『黒』が主流です」
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