オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

葬儀で死因を詮索され…身内の「自殺後」に取り残される遺族の苦悩

寂しいお葬式

 自殺された人の中には、お客さまとして近い人もいれば遠い人もいます。遠い人だと、葬儀が済んだ後に連絡が来ますが、近い人の場合、葬儀前に一報が入り、そのようなときには筆者も参列します。

 しかし、葬儀の場でも死因は伏せられ、交通事故や不慮の事故と告知されることが多いです。ただでさえ悲しみに打ちひしがれているのに、参列者に対して、うそをつき通さないといけないご家族の心情は察するに余りあります。

 また、自殺の場合、発見が遅れ、ご遺体の損傷が激しいと、すぐに荼毘(だび)に付してしまうこともあります。このような場合、後日、改めて葬儀を行うのですが、そこにはあるはずのご遺体がなく、骨つぼだけが置かれます。

 参列者からすれば、不思議な光景でしょう。勘のよい人は事情を察して何も言いませんが、中には興味本位で、根掘り葉掘り聞きたがる人もいて、これもまた、ご遺族を苦しめます。そのため、ほとんど人を呼ばずにごくごく限られた身内だけで葬儀を済ませてしまうことも多いようです。

 筆者の友人で、事業の行き詰まりが原因で自殺を図ったものの、奇跡的に助かった人がいます。後から話を聞くと、「本当に死ななくてよかった。バカなことをした」と後悔していましたが、「当時はあまりにも思い詰めて、死ぬことしか選択肢がなかった」と言っていました。

 やはり、真面目で、何もかも自分で抱え込んでしまうような人が多いのでしょう。「死ぬ勇気があるなら、せめて相談を」と心の底から思うのですが、それができないからこそ、追い詰められて、自らの命を断ってしまうのかもしれません。そこには、人に迷惑をかけてはいけない、弱音を吐いてはいけないという日本独自の窮屈さがあるような気がします。

 冒頭でも述べた通り、筆者はそれらの問題の専門家ではなく、何の解決策も持ちませんが、今回のようなことが起こるたび、こう思います。ほんの少しでよいから、残された人たちの顔を思い浮かべ、踏みとどまってほしいと。それが、「自殺後」を多く見た筆者の祈るような気持ちなのです。

(あおばコンサルティング代表取締役/1級FP技能士・宅建士 加藤圭祐)

1 2

加藤圭祐(かとう・けいすけ)

あおばコンサルティング代表取締役、1級FP技能士、宅建士

大手外資系生命保険会社にて11年間、個人・法人のコンサルティング業務に従事。2015年に株式会社あおばコンサルティングを設立。日本初の、チャットでのお金のサービス「みかづきナビ」を開始。現在ではzoomも活用し、FP相談や保険相談で顧客の課題解決に取り組んでいる。みかづきナビ(http://www.mikazuki-navi.jp/)。

コメント