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PRを超越して 乃木坂46にとって「ミュージックビデオ」が意味するもの

乃木坂46にとっての「MV」

 このMVを手がけた柳沢翔監督は後に、やはり乃木坂46がドラマを作る場として企画されたFOD「乃木坂シネマズ~STORY of 46~」(第1話「鳥,貴族」)において、齋藤飛鳥さん、栗原類さんを主演に、やはり異質な他者間の葛藤を主題にしたドラマの脚本・監督を務めますが、そこでは、公権力による排他的な施策や異なる民族・文化圏同士の接触がさらにやるせなく描かれ、MVの発展型かつ現実社会への問いかけとなる物語を紡いでいます。

 こうした文脈を捉えるとき、MVが楽曲の世界観を拡張したり、PRしたりといった意義にとどまらない機能を果たしていることが見えてきます。所属するメンバーにとっては、演技者として、より広い活動へと接続するための場として、そこに集う作家たちにとっては、自らの問いを投じる場として、乃木坂46のMVという土壌は存在しています。

 もとより、「アイドル」という表現形態は極めて複合的な要素を備えたジャンルとしてあります。シングルやアルバムリリースという定期的な主要活動は、楽曲自体と同等の価値を持つ、その他の多くの表現を呼び込むものでもあるといえるでしょう。その集積であるMV集は、アイドルがそもそも、いかなる形のエンターテインメントなのかを捉え直す契機ともなるはずです。

(ライター 香月孝史)

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香月孝史(かつき・たかし)

ライター

1980年生まれ。ポピュラー文化を中心にライティング・批評やインタビューを手がける。著書に「乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟」「『アイドル』の読み方 混乱する『語り』を問う」(ともに青弓社)、共著に「社会学用語図鑑 人物と用語でたどる社会学の全体像」(プレジデント社)、執筆媒体に「RealSound」など。

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