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新ルーティンを作る? 自宅待機でできた膨大な時間…どう生かすべきか【就活・転職の常識を疑え】

就活や転職のさまざまな「常識」について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。コロナ禍による自宅待機中、何をすべきなのでしょうか。

オンラインで旧交を温めることも可能
オンラインで旧交を温めることも可能

 コロナ禍による在宅勤務の増加や営業自粛要請によって長い時間、自宅待機を余儀なくされている人が多くなっています。筆者もテレワークやオンラインセミナーなどが増え、会食や移動が減って、自宅で過ごす時間がとても増えました。このまま自分の仕事がどうなってしまうのか、いろいろ考えて策は打ちながらも不安な気持ちで過ごしているのは、皆さんも同じではないかと思います。

 ただ、このような大災厄の中でできることは限られていますし、不安がってばかりいても何も進みません。そうであれば、せっかく生じた時間を生かすことを考えてはどうでしょう。企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者からの提案です。

勉強してスキルアップを図る

 まずはありきたりではありますが、日頃仕事が忙しくて「時間がない」からできていなかった勉強をしてみてはどうでしょうか。コロナ以前は多くの人が「緊急なこと」に時間を割かれてしまい、「重要なこと(だが、緊急ではないこと)」に時間を使うことができなかったはずです(筆者もそうでした)。

 そうであれば、社会全体が止まってしまっている今はチャンスとも言えます。語学やITスキルなど何にでも役立つ基礎スキルでももちろんよいのですが、歴史や哲学、数学など重要ではあるものの、仕事に直接影響を与えないために後回しにしていたものの勉強も一つの選択肢です。

オンライン上でアウトプットしてみる

 もし、学ぶべきものが思い浮かばなければ、次の選択肢として、これまで仕事を通じて経験してきたことの「棚卸し」はどうでしょうか。

 経験学習理論では、人はただ単に経験をしただけでは、他に応用できる能力がつくわけではないとされています。経験したことを内省して、きちんと言葉にするなど整理をし、自分にとっての教訓や理論を作って初めて、別の場面でも使える能力として身に付くのです。

 転職を考えている人でなくても、自分の履歴書や職務経歴書を書いてみるのもよいでしょう。また、過去を振り返って、さまざまなテーマで書いたものをオンライン上、ブログやSNSなどでアウトプットしてみるのもよいでしょう。

旧交を温める

 学生時代の友人や恩師、幼い頃、世話になった親戚、昔の会社の同僚など、しばらくご無沙汰してしまっていた人々との交流もよいかもしれません。幸い現在はインターネットがあり、長年会っていない人にアプローチできる方法がいくらでもあります。彼らに対して近況報告やご様子伺いをしてみてはいかがでしょう。

 単に懐かしいというだけではなく、彼らに(オンラインでも)会うことには、いろいろなメリットがあります。過去の自分を思い出すことで、初心や自分の強みを再認識することができます。また、同じ時を過ごした人は、よく知る自分に何らかのチャンスを運んでくれるかもしれません。

少なくとも落ち込まないように

 さて、「そんなこと言われても気力が出てこない」と言う人もおられると思います。かく言う筆者も自宅待機になってからしばらくは、ぼうぜんとして無為に時を過ごしていました。

「コロナ疲れ」「コロナうつ」という言葉も使われ始めたように、在宅のさまざまなストレスで、心身を病んでしまった人も増えているようです。その場合は、上述のような“マッチョ”な自宅待機方法はひとまず置いて、適切な睡眠と運動、食事という規則正しい生活をすることを心掛けるのが一番でしょう。心と体の健康が一番大切で、それを損なってしまっては元も子もありません。

ルーティンを取り戻すか、新たに作るか

 緊急措置として「一時的」だと思っていた自宅待機が想定以上に「日常」になってしまっています。今後もどのぐらい続くか分かりません。

「一時的」だと思っていたからこそ、何となくアドリブで時間を使っていたのが新しい「日常」になるのであれば、その「日常」に合わせたルーティンを行わなければなりません。人間はルーティンを行うことでコンディションを調整する生き物だからです。

 もし、元のルーティンに戻りやすいのであれば、普通に通勤していたときのルーティンに従って起床時間や就寝時間を戻す、着るものもカジュアルな「在宅服」ではなく、以前のものにする、会社の定例会などの場をオンラインでバーチャルに再現するなどです。

 もし、在宅が長くなり、「戻る」のが難しいなら無理に戻す必要はなく、逆に「新しいルーティン」を作る方に進めばよいでしょう。ルーティンは「形から入る」ものですから、自宅の机や椅子を仕事用に整えてみたり、居間や寝室などの生活空間から、少しでも隔離された場所に仕事場を置いてみたりしてもよいかもしれません。

 在宅勤務となって、通勤が「気分転換になっていたと気付いた」と言う人が増えましたが、その「気分転換」ができるルーティンを新しく作る必要があるということです。自宅待機は多くの人にとって初めての経験です(筆者もです)。知恵を出し合って、新しいルーティンを作っていきましょう!

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「定着と離職のマネジメント『自ら変わり続ける組織』を実現する人材流動性とは」(ソシム)など。

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