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「出生前診断」で分かるのは一部、どんな子も受け入れるのが「親」

知的障害を伴う自閉症の子どもを持ち、「息子との生活は大変なこともありますが、不幸だと感じたことはない」という筆者が、「出生前診断」について思いを語ります。

出生前診断で分かることは?
出生前診断で分かることは?

 私には、19歳の知的障害を伴う自閉症の息子がいます。息子との生活は大変なこともありますが、不幸だと感じたことはありません。そんな私は、息子を妊娠中、出生前診断を受けました。

 不妊治療を経て38歳で妊娠したとき、クリニックで「トリプルマーカーテストを受けませんか?」というポスターが目に留まりました。10カ月の妊娠期間、悶悶(もんもん)と「おなかの子どもが障害児だったら…」と不安を抱えて過ごしたくない、という軽い気持ちで受けた検査でした。

 検査の結果、渡された用紙には「21トリソミー(ダウン症候群)の可能性【80%】」とありました。

検査中、ずっと泣いていると…

 当時の検査はまず、妊婦の採血をして染色体異常の確率を出し、その後、精密検査である「羊水検査」に進むというものでした。そのクリニックには羊水検査の設備がなかったので、医師から大きな病院の紹介状を書いてもらいました。クリニックの帰り道、妊娠が分かってからばら色に見えていた街並みが灰色に見えました。

 5日後、紹介状を持って羊水検査を受けに行った私は検査中、ずっと泣いていました。すると医師から、こう叱られたのです。

「何をそんなに泣いているんですか? どんな子どもでも産もうと考えているならば、最初からこの検査を受けないでしょう。検査をやめますか?」

 この医師の言葉は当然のことでした。障害の有無にかかわらず、産んで育てるつもりであれば、そもそもこの検査を受けることはないのです。つまり、泣いていること自体、矛盾した態度でした。

 確定診断の結果が出るのは約1カ月後。人工妊娠中絶が認められているのは21週と6日までなので、医師から「検査結果が出て1週間以内に、産むか産まないか決めてください」と言われました。胎動を感じながら30日間、「産むか産まないか」悩みました。何を食べてもおいしくなく、何を見てもうれしくなく、頭の中は検査のことで支配されました。

 そして、検査結果は「13トリソミー(パトー症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、21トリソミー(ダウン症候群)、いずれでもない」でした。

生まれて2年後、障害があると判明

立石美津子さんの長男(右奥)が3歳のときの、保育園の参観日の様子(立石さん提供)
立石美津子さんの長男(右奥)が3歳のときの、保育園の参観日の様子(立石さん提供)

 しかし、息子が2歳の頃、様子がおかしいことに気付きました。人に関心を示さず、言葉も出ず、保育園で集団行動がとれません。その後、自閉症の診断を受けました。

 現在は、妊婦からわずか20ミリリットル採血するだけで検査できる「新型出生前診断」が行われています。「母体血胎児染色体検査」、あるいは「無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)」ともいいます。妊婦の血液の中にある胎児の遺伝子を調べることにより、染色体異常が分かります。

 母体の負担もなく簡単にできる検査で、私が受けたトリプルマーカーテストよりも1カ月以上早い時期に受けられますが、結果が「陽性」の場合、診断を確定するために羊水検査を受ける必要があります。その結果によっては、夫婦は重い決断を迫られます。

 テレビでは、専門家が「おなかの赤ちゃんに障害があると分かった場合は、出産後の育て方について妊娠中、十分考えることができるようになります」と言っていましたが、報道などによると、検査を受けて「おなかの子に障害がある」ことが分かり、確定検査を受けて「陽性」となった妊婦のうち、9割以上が人工妊娠中絶をしているといいます。実際には、出産後の育て方を考え、妊娠を継続する人はわずかなのです。

 また、染色体異常は胎児にみられる異常のうち4分の1を占めるにすぎず、出生前診断で「陰性」であっても病気や障害がないわけではありません。具体的には、ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)しか診断してもらえず、視覚障害や聴覚障害、発達障害は出生前診断では分かりません。また、出産時のトラブルで脳に障害を負うこともあります。

 例えば、重い知的障害を伴う自閉症で強度行動障害の人がいます。家の中のものはほとんど壊され、母親は剣道の防具を身に着けて生活しています。また、知的障害を伴わない発達障害の人が、その「二次障害」で家庭内暴力を起こし、殺されかけた家族がおびえて「息子を逮捕してほしい」と警察に連絡したという事例もあります。

 このどちらのケースも出生前診断では分かりません。ダウン症など染色体異常のみにスポットを当てて、『命の選択』をしてもよいのでしょうか。

 たとえ、健康な子どもが生まれたとしても、病気になったり、事故にあったり、精神疾患を患ったり…と人生には予期しないことが起きます。しかし、どんな子どもでも受け入れ、育てるのが「親になる」ことだと私は思います。

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。著書は「1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ」「はずれ先生にあたったとき読む本」「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」など多数。ノンフィクション「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

コメント

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1件のコメント

  1. おかしな主張ですね。
    障害児が欲しい親はいません。
    ご本人もそうだから出生前診断を受けた。結果、セーフだと思ったのに別の部分でアウトだった。さぞお辛かったでしょう。
    だからと言って他の親が障害児を避けたいと思う気持ちを「そんなの親じゃない」と否定するのはおかしいでしょう。
    堕胎した9割は親ではなかったと言いたいのですか。自分だってそのつもりで検査したのに?
    「私がハズレを引いたんだからお前らも引けばいい」と聞こえます。
    私は、出生前診断を受けます。事前にわかるものだけでも避けたいのは当たり前のことです。
    障害があればおろします。経済的な支援の有無は関係ありません。
    一生自立できない「成人」しない、社会に貢献しない子どもの世話で人生を無駄にしたくないからです。
    社会人として暮らせる聴覚視覚障害と一緒にできるレベルではないですよね。
    わざとなのでしょうか。
    お子さんの障害を受け入れられないのはご本人なのかな、と思いました。お気の毒です。