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東日本の日照不足深刻…お米の収量減で平成に続く「令和の米騒動」は起こらない?

7月は東日本の日照時間が短く、農作物への影響を懸念する声もあります。1993年に起きた「平成の米騒動」のようなことは起きないのでしょうか。

1993年の不作を受けた米不足で、国産米の売り切れが相次いだ(1994年3月、時事)
1993年の不作を受けた米不足で、国産米の売り切れが相次いだ(1994年3月、時事)

 猛暑に襲われた昨夏と違い、今年は梅雨明けが平年より遅れて「梅雨寒」の日が多くなっています。特に、東日本で7月の日照時間が短く、農作物への影響を懸念する声もあります。冷夏で日照不足が著しかった1993年には、国産米が記録的な不作となり、急きょタイなどから米を輸入したものの混乱が続き、「平成の米騒動」ともいわれました。今年は同じようなことは起きないのでしょうか。農林水産省穀物課と農産企画課の各担当者に聞きました。

5~6月は気温、日照ともに順調

Q.7月の日照不足や低気温は、米の収量に影響しないのでしょうか。

穀物課担当者「確かに、7月に入ってから、東北地方南部と関東地方の太平洋側の気温が例年よりも低く、日照も少し少なめです。一方で、5月と6月は全体的に気温、日照とも順調に推移していて、稲の生育は今のところ順調です。

これから実がなってくる時季で今後の気象状況が特に重要なのですが、気象庁の1カ月予報を見ると、北日本、東日本は気温が平年並みかやや高く、日照時間は平年並みかやや少ないという状況で、稲にとって大きな影響が出るような予報ではありません。今後、気温が回復すれば、影響は出ないかと思います」

Q.1993年は凶作で米不足になりました。当時のようなことは起きないのでしょうか。

穀物課担当者「1993年の米不足の状況を説明します。当時は7月下旬から8月いっぱい、全国的に気温が低い状況が続きました。しかも、当時、栽培されていた品種で多かったのは、低温に弱い品種でした。宮城県ではササニシキが主力品種でしたが寒さに弱く、実がなる時季の低温をもろに受けて収量が減りました。現在、宮城県では耐冷性のある『ひとめぼれ』が主力となっています。

そうした意味でも、当時と同じ状況ではないと思っています。もちろん、これからが生育にとって重要な時季なので気温の推移を注視しなければなりません」

Q.1993年の凶作をきっかけに始まったという「備蓄米」制度について教えてください。

農産企画課担当者「米の安定供給などのため、国が自ら米を売ったり買ったりする行為は以前からありましたが、1995年に米の備蓄が法律で制度化されました。お米が不作になり、国産の主食用米が不足しそうなとき、政府が備蓄米を放出することで安定供給を図るのが目的です。基本的には、100万トン程度備蓄することになっていて、現在の保有量は、およそ91万トンです。数字は年に1度の更新で、昨年6月末時点の数字ですが現在も同じです」

Q.日本全体で1年間の米の平均的な消費量は。

担当者「直近でいうと、主食用は740万トンです。せんぺい用など加工用米は含まない数字です」

Q.現在の備蓄量で、1993年と同様の凶作になっても大丈夫なのでしょうか。

農産企画課担当者「現在の91万トンという備蓄は、作況指数が92程度の不作でも対処しうる量です。1993年の作況は74。単純に比較すると『足りるのか』という議論になりますが、92を下回った年は、手元に資料がある1963年以降、1993年を含めて3回だけです。備蓄米は、国が自ら米を保有することで財政負担もかかるので、通常想定しうるような不作に対応できる量ということで100万トンにしています。1993年は未曽有の大不作、通常想定しがたいような大凶作でした。

繰り返しになりますが、備蓄米は財政コストがかかるので、財政とのバランスで量を決めています」

Q.1993年は急きょ、タイなどから米を輸入することで米不足をしのぎました。現在の輸入状況は。

農産企画課担当者「米不足とは別の話になりますが、ガット・ウルグアイ・ラウンド合意に基づくミニマムアクセス米(最低輸入義務米)として、毎年77万トンを無関税で輸入しています。基本的には加工用や飼料用、支援米になりますが、最大10万トンの枠で主食用も含まれています。77万トンを超える分は1キロ当たり341円の関税がかかるので、年間100~200トン程度の輸入です」

Q.今のところ、天候も大丈夫そうとのことですが万が一、1993年並みの冷夏となった場合、「平成の米騒動」のような騒ぎを起こさないために行政、市民はどう行動すべきでしょうか。

農産企画課担当者「私たちは、毎年の作柄状況など適切な情報発信をしていきます。国民が必要以上に不安にならないようにするためです。備蓄米放出の必要性についても、透明性のある議論をします。大学の先生や農業者団体、消費者団体代表などでつくる『食料・農業・農村政策審議会 食糧部会』を開いて、物価水準や他の食品の価格水準などを見て決めることになっています。ただし、備蓄米の運用が現行方式になった2011年以降、米不足による備蓄米放出の議論のために食糧部会を開いたことはありません。

国民の皆さんに、生育状況や米の需給状況、生産作柄動向などを国から情報発信していきます。正しい情報を入手して、冷静に行動していただければと思います」

(オトナンサー編集部)

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