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「メールやパソコンを使えない新人」の現状とは? 企業はどう対応している?

大学で指導しても定着しない

Q.大学でメールやパソコンについて指導はしないのでしょうか。

小野さん「指導はしているものの、定着しないというのが実態だと感じます。大学においてメールやパソコンの指導はあったとしても、選択科目だったり、1年次の授業だったりすることから、定着することなく就職活動を迎えるケースが多いです。いくら勉強しても、3年あれば技術は進歩するので、3年前のテキストがそのまま役に立つということはほとんどありません。

また、就職活動でも、エントリーシートを埋めてそのまま送信するような形式が一般的なため、メールを使わないのです。スマホが使えて、面接で素直な自分を表現できさえすれば、うまく就職が決まっているケースが多く、改めてパソコンやメールについて必修で教えているというケースは少ないように思います。人によっては、卒業と同時に社会人基礎力として学んでいる人を見る機会もありますが、それが新入社員のスキルのスタートラインに差がある状況をつくり出していると思います」

Q.メールやパソコンが使えない新人に対して、企業は一般的にどのように対応しているのでしょうか。

小野さん「OJTと研修が一般的なように思います。OJTにおいては、先輩社員が職務の中で伝えていったり、日報などを書く際に指摘をしたりしているケースがあるでしょう。研修においては、私たちが取り組んでいる日本語力向上研修においてもですが、報告書の書き方やメールの書き方といった実務的な力にひも付いた研修を行っています。結果として、タイトルを見ればどのような内容かが分かるメールが作れたり、社外に出しても失礼に当たらないメールが書けたりするようになります。

ただ、どちらにしても失敗をするなどして、『自分ごと』の問題としなければ、本当の意味での定着はしません。そこで、基本的なことだけ教えて、後は現場でトライアンドエラーができるような『行動への意識づけ』の方に、研修もOJTも力を注ぐことが多いように思います」

Q.ワードやエクセルなどのビジネスソフトについてはどうでしょうか。

小野さん「大学で必須ではないことから、使えない人が多い印象です。しかし、使えなくても困らない環境とも言えます。例えば、数値を入力すれば必要な表計算などは勝手にやってくれるシステムが導入されている場合もあります。従って、新入社員が困るような環境ではないことが多い印象です。

ただし、小規模な会社では、ワードやエクセルが使えることは大事でしょう。小規模になればなるほど、IT化の対応が進んでおらず、ワードやエクセルの使用が必要な一方、仕事が多すぎて知識を伝えていけない現状があり、『PC学ぶなら一人で学べ』といった環境を嫌って辞めていく新人も多いようです」

Q.現在、就職活動中の学生も多いと思います。彼らにアドバイスをするとすれば。

小野さん「システムは変わっても、日本語の構成は変わりません。メールやパソコンといったシステム的なことよりも、学生時代から、文章で気持ちや状態、連絡事項などを言語化して伝える練習をしていくことが大切です。論理的な文章が書けるようになれば、面接時にも『論理的な受け答えができる』として評価に結び付くでしょう。

また、略語を使っている人をよく見かけますが、『略語は日常生活の中のみ』ということを意識してください。無意識になってしまうと、仕事に慣れてきた時期に上司の前で『りょ』(了解の意味)などと無意識に使ってしまい、上司や先輩からひんしゅくを買うケースが起きてしまいます」

(オトナンサー編集部)

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小野勝弘(おの・かつひろ)

キャリアコンサルタント、一般社団法人セルフキャリアデザイン協会代表理事、株式会社ファサディエ EAP事業部 新規事業準備室

1969年東京都生まれ。桐蔭学園工業高等専門学校電気工学科卒業。2001〜2016年までIT系企業に所属。エリアマーケティングツールに携わり、営業・商品企画・事業企画・人材教育・労務管理などを経験。企業のホワイト化・健康経営・人事労務は、今後の会社経営に欠かせない重要な領域と考え、「労働者と企業のための人材定着、若者雇用促進による企業の生産性向上」をテーマとする。2016年〜現在は株式会社ファサディエ EAP事業部所属。2018年に一般社団法人セルフキャリアデザイン協会(https://self-cd.or.jp/)を設立し、キャリアコンサルタント、EAPコンサルタントとして活動中。

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