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「イヨーオ!」の掛け声で…宴会の最後に行われる「手締め」、何のためにするの?

人々の結束を深める手段

Q.なぜ、宴会の最後に手締めを行うのですか。

齊木さん「手締めは、宴会の最後に『手打ちによって締める』ことを指し、結束を高めるために行われます。また、宴会や行事を行った人が、無事に終了したことを協力者に感謝する意味が込められています」

Q.どのような手締めを行うことが多いのですか。

齊木さん「一般的な宴席では、『問題なく丸くおさまる』という意味を込めて一本締めを行います。お祝いの席や格式の高い宴席では、正式とされる三本締めを行います。一方、気の置ける仲間や身内だけの軽い宴会では、一丁締めを行います。さらに、貸し切りではない場所や、あまり大きな声を出せない場所などでの手締めは、周囲への配慮として、小さな声で簡略化された一丁締めを行います。手締めの種類を理解して、TPOに合わせて行うことが大切です」

Q.「周囲の目が気になり、手締めをするのが恥ずかしい」というネット上の声もあります。恥ずかしく感じずに手締めを行う方法はありますか。

齊木さん「手締めの本来の意味を理解することに秘訣(ひけつ)があります。手締めは宴会を取り仕切った人が、協力者に感謝するために大切にされてきた日本の風習です。主催者や取り仕切った人、その場を共にした人へ御礼の気持ちを込めて行ってみてはいかがでしょうか。自然と心や身体が動くものです。恥ずかしいと思う人がいたら、手締めの由来を伝えてみましょう」

Q.証券取引所や卸売市場、地域のお祭りなどでも手締めが行われますが、若い人ほどなじみがないようです。いずれ、手締めの風習はなくなってしまうのでしょうか。

齊木さん「手締めを行う歴史は古く、1878年に東京証券取引所(当時は東京株式取引所)が発足して以降、日本中に手締めを行う風習が広まったといわれています。現在でも、日本の大切な行事には必ず行われています。若い人ほどなじみがないのは、こうした歴史的背景や由来を教わる機会が少なくなっているからではないでしょうか。

手締めは、人々の結束を深めるものです。先人の心に寄り添い、現代に生きる私たちが、次の時代へ伝えていくべきことではないでしょうか。こうした伝えていく努力こそが、明日の文化を育てていくのではないかと考えます」

(オトナンサー編集部)

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齊木由香(さいき・ゆか)

日本礼法教授、和文化研究家、着付師

旧酒蔵家出身で、幼少期から「新年のあいさつ」などの年間行事で和装を着用し、着物に親しむ。大妻女子大学で着物を生地から製作するなど、日本文化における衣食住について研究。2002年に芸能プロダクションによる約4000人のオーディションを勝ち抜き、テレビドラマやCM、映画などに多数出演。ドラマで和装を着用した経験を生かし“魅せる着物”を提案する。保有資格は「民族衣装文化普及協会認定着物着付師範」「日本礼法教授」「食生活アドバイザー」「秘書検定1級」「英語検定2級」など。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yukasaiki)。

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