「イヨーオ!」の掛け声で…宴会の最後に行われる「手締め」、何のためにするの?
職場などの宴会の最後に行われる「手締め」。若い人を中心にあまり理解されていませんが、その由来とはどのようなものでしょうか。

4月は、歓迎会など職場での宴会が増える季節。宴会の最後に、会社の幹部が音頭を取って行うことがあるのが、「一本締め」「三本締め」などの「手締め」です。ネット上では、「上司が言うから何となくやっているけど、なぜやるのか分からない」「周囲の目が気になって恥ずかしい」などの声もあります。手締めとは、どのようなものなのか、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。
地域独自の「手締め」も存在
Q.そもそも、「手締め」とは何ですか。
齊木さん「物事の決着や成就を祝い、関係者がそろって掛け声とともに手拍子を打つことで、『手打ち』とも言います。手拍子の前の掛け声は、『イヨーオ』と言うのが一般的です。イヨーオは、『祝おう』が転じたものとされています」
Q.行われ始めた背景は。
齊木さん「ルーツは古く、『古事記』に、大国主命(おおくにぬしのみこと)が国譲りを行う際、『拍手を打って国譲りを承諾した』という記述が出てきますが、この『承諾して柏手を打った』ことが転じて『うまく物事がまとまって手を打った』という意味で、手締めが行われるようになったと考えられています。つまり、物事が落着することにつながり、『拍手を打つ→手を打つ→手締め』へと変わってきました。現代でも、『手を打つ』というのは決着をつけるという意味で使われています」
Q.手締めの代表的なものに「一本締め」「一丁締め」「三本締め」があります。それぞれ、どのような手締めですか。
齊木さん「一本締めは、拍数の『シャシャシャン シャシャシャン シャシャシャン シャン』と、3回の拍が3セットで『九』になり、もう一回手を打つことで九に点が打たれて『丸』になることから、『丸く納めました』の意味合いが込められています。一丁締めは、一本締めの略式のやり方です。『イヨーオ』という発声とともに最後の1回だけ『シャン』と手を打ちます。関東でよく行われており、『関東一本締め』ともいいます。
三本締めは、一本締めである『シャシャシャン シャシャシャン シャシャシャン シャン』を3回行います。フォーマルな宴席や行事でよく行われます。発声者は、間に『イヨッ』『もう一丁』と声を挟みます。
手締めは、リズムや手を打つ回数、掛け声が地域によって異なります。例えば、大阪では『大阪締め』といい、(1)『打ーちましょ』シャンシャン(2)『もひとつせ』シャシャン シャン(3)『祝うて三度』シャシャン シャン シャシャン シャン シャシャン シャン(4)『おめでとうございますー』(拍手)という手順になります」
Q.その地域にしかない独自の手締めもあるのですか。
齊木さん「福岡では『博多手一本』という独自のスタイルがあります。手順は、(1)『よー』 シャンシャン(2)『まひとつしょ(もひとつ)』シャンシャン(3)『祝うて三度(よーてさんど)』シャシャン シャン、となります。決まりも独特で、手一本を入れた後、拍手をするのは無作法、やり直しは不可となっています。
名古屋では『名古屋ナモ締め』という手締めが2014年に誕生しました。『ナモ』は名古屋言葉特有の敬語表現で言葉の終わりに付ける丁寧語です。今後も続く地域文化の象徴となるように考案されました。その他にも、埼玉では『川越締め』『武州川越締め』『江戸川越締め』『秩父締め』があり、各地で独自の手締めが存在しています」
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