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一本締め、三本締め…仕事納め&忘年会で「手締め」行うワケ

職場の仕事納めや忘年会の最後に行われる「手締め」。若い人の中には手締めをするのが恥ずかしいと感じる人がいるようですが、なぜ手締めをするのでしょうか。

手締めは何のために行われる?
手締めは何のために行われる?

 職場の仕事納めや忘年会の最後に、会社の幹部が音頭を取って行うことがあるのが、「一本締め」「三本締め」などの「手締め」です。ネット上では、「上司が言うから何となくやっているけど、なぜやるのか分からない」「周囲の目が気になって恥ずかしい」などの声もあります。手締めとは、どのようなものなのか、日本礼法家元で、令和椿和文化協会会長の椿武愛子(つばき・むつこ)さんに聞きました。

人々の結束を深める手段

Q.そもそも、「手締め」とは何ですか。

椿さん「物事の決着や成就を祝い、関係者がそろって掛け声とともに手拍子を打つことで、『手打ち』とも言います。手拍子の前の掛け声は、『イヨーオ』と言うのが一般的です。イヨーオは、『祝おう』が転じたものとされています」

Q.行われ始めた背景は。

椿さん「ルーツは古く、『古事記』に、大国主命(おおくにぬしのみこと)が国譲りを行う際、『拍手を打って国譲りを承諾した』という記述が出てきますが、この『承諾して柏手を打った』ことが転じて『うまく物事がまとまって手を打った』という意味で、手締めが行われるようになったと考えられています。つまり、物事が落着することにつながり、『拍手を打つ→手を打つ→手締め』へと変わってきました。現代でも、『手を打つ』というのは決着をつけるという意味で使われています」

Q.手締めの代表的なものに「一本締め」「一丁締め」「三本締め」があります。それぞれ、どのような手締めですか。

椿さん「一本締めは、拍数の『シャシャシャン シャシャシャン シャシャシャン シャン』と、3回の拍が3セットで『九』になり、もう一回手を打つことで九に点が打たれて『丸』になることから、『丸く納めました』の意味合いが込められています。一丁締めは、一本締めの略式のやり方です。『イヨーオ』という発声とともに最後の1回だけ『シャン』と手を打ちます。関東でよく行われており、『関東一本締め』ともいいます。

三本締めは、一本締めである『シャシャシャン シャシャシャン シャシャシャン シャン』を3回行います。フォーマルな宴席や行事でよく行われます。発声者は、間に『イヨッ』『もう一丁』と声を挟みます。

手締めは、リズムや手を打つ回数、掛け声が地域によって異なります。例えば、大阪では『大阪締め』といい、(1)『打ーちましょ』シャンシャン(2)『もひとつせ』シャシャン シャン(3)『祝うて三度』シャシャン シャン シャシャン シャン シャシャン シャン(4)『おめでとうございますー』(拍手)という手順になります」

Q.なぜ、仕事納めや忘年会の最後に手締めを行うのですか。

椿さん「手締めは、宴会の最後に『手打ちによって締める』ことを指し、結束を高めるために行われます。また、宴会や行事を行った人が、無事に終了したことを協力者に感謝する意味が込められています」

Q.どのような手締めを行うことが多いのですか。

椿さん「仕事納めや忘年会など節目の場合には、『問題なく丸くおさまる』という意味を込めて一本締めを行います。一方、お祝いの席や格式の高い宴席では、正式とされる三本締めを行います。

また、貸し切りではない場所や、あまり大きな声を出せない場所などでの手締めは、周囲への配慮として、小さな声で簡略化された一丁締めを行います。手締めの種類を理解して、TPOに合わせて行うことが大切です」

Q.「周囲の目が気になり、手締めをするのが恥ずかしい」というネット上の声もあります。恥ずかしく感じずに手締めを行う方法はありますか。

椿さん「先述したように、手締めは宴会を取り仕切った人が、協力者に感謝するために大切にされてきた日本の風習です。主催者や取り仕切った人、その場を共にした人へ御礼の気持ちを込めて行ってみてはいかがでしょうか。自然と心や身体が動くものです。恥ずかしいと思う人がいたら、手締めの由来を伝えてみましょう」

Q.証券取引所や卸売市場、地域のお祭りなどでも手締めが行われますが、若い人ほどなじみがないようです。

椿さん「手締めを行う歴史は古く、1878年に東京証券取引所(当時は東京株式取引所)が発足して以降、日本中に手締めを行う風習が広まったといわれています。現在でも、日本の大切な行事には行われることが多く、若い人ほどなじみがないのは、こうした歴史的背景や由来を教わる機会が少なくなっているからだと思います」

(オトナンサー編集部)

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椿武愛子(つばき・むつこ)

日本礼法家元、令和椿和文化協会会長、ビジネスマナーコンサルタント

北海道釧路市出身。戸板女子短期大学生活科卒業。結婚後、国内における東西のマナーや風習の違いを肌で体感し、主婦の傍ら、作法・和・洋テーブルマナーを学び、日本礼法会教授資格を取得。1988年から、札幌でイベント企画を手掛け、自らも司会やマナー講師として活動。現在、椿武愛子オフィス代表として各種マナー講習会や講演、企業向け接客マナー研修に携わりながら、多様な和文化を伝えていく活動を行っている。令和椿和文化協会(https://www.tsubakimutsuko.jp/wabunka/)。

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