オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

×

あすは成人の日 「成人式」で暴れる新成人、どのような法的問題がある?

各地の自治体で成人式が開かれる時期です。成人式でのトラブルを巡る法的問題について、弁護士に聞きました。

各地の自治体で成人式が行われる
各地の自治体で成人式が行われる

 1月14日は「成人の日」です。14日と前日の13日を中心に、各地の自治体で成人式が開かれますが、例年、一部の成人式で新成人が大騒ぎして式典の進行を妨げたり、関係者に暴力を振るったりして、中には逮捕されるケースもあります。成人式を巡る法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

卒業式で威力業務妨害罪が成立したことも

Q.市区町村が主催する成人式で、新成人が式典の進行を妨げた場合、どのような罪に問われる可能性はありますか。

牧野さん「威力業務妨害罪(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)が成立する可能性があります。卒業式の事例ですが、ある公立高校の卒業式を巡る裁判で、『大声や怒号を発するなどして、高校が主催する卒業式の円滑な遂行を妨げた被告人の本件行為は、威力を用いて、他人の業務を妨害した』として威力業務妨害罪の成立が認められたことがあります(2011年7月7日最高裁判決)。

成人式の妨害行為についても、大騒ぎするなどの行為によって、結果として円滑な進行を妨げた場合には、威力業務妨害罪が成立する可能性があるでしょう」

Q.ステージに上がるなどの行為で、警備員や市町村職員、警察官の制止を振り切ろうとした場合、罪に問われる可能性はありますか。

牧野さん「相手が民間の警備員の場合、前述のケースと同様に威力業務妨害罪が成立する可能性があります。妨害する相手が、刑法第7条で定義される『公務員』、例えば市町村職員や警察官が公務で成人式の警備などに当たっていた場合には、公務執行妨害(3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金)が成立する可能性もあります」

Q.多くの成人式は「その年度に20歳になる人」を対象にしています。1、2、3月生まれの人の多くは、19歳で式典に参加することになりますが、19歳の新成人が前述の罪を犯した場合、20歳の新成人との違いはありますか。

牧野さん「19歳の未成年者の場合は、20歳の新成人と違い、少年法が適用されます。少年法第2条第1項では『この法律で“少年”とは、20歳に満たない者をいい、“成人”とは、満20歳以上の者をいう』としています。

少年法は、少年の保護・更生を目的としており、未成年者には成人同様の刑事処分を下すのではなく、原則として家庭裁判所により保護更生のための処置(刑事処分ではない鑑別所や少年院への送致など)を行うことを規定しています」

Q.新成人が暴れたことで式典が中止、もしくは開けなくなった場合、自治体は暴れた新成人に対し、賠償請求や慰謝料の請求はできますか。

牧野さん「権利侵害による損害(精神的な損害である慰謝料)の発生を証明できるかどうかです。理論的には可能ですが現実的には難しいでしょう。例えば、事前に成人式の参加者に対して『暴れた場合には違約金を一律10万円支払う』ことを約束させて、契約違反を問うなどしない限り難しいでしょう」

Q.新成人が暴れて式典が中止、もしくは開けなくなった場合、ほかの参加者(新成人)は、暴れた新成人に対し、賠償請求や慰謝料の請求はできますか。

牧野さん「自治体の場合と同様、権利侵害による損害の発生を証明できるかどうかですが、殴られてけがをしたなどの事情がない限り、慰謝料の請求は現実的には難しいでしょう」

Q.成人式における代表的な刑事事件を教えてください。

牧野さん「2001年1月に行われた高松市主催の成人式で、新成人5人が市長に向けてクラッカーを鳴らし、式典を妨害した事件がありました。20歳の4人は威力業務妨害罪の成立が認められ、20歳の主導者に罰金30万円、他3人に罰金20万円の略式命令がなされ、成人式時点で19歳だった少年は家裁に送致されました。

また、2000年に和歌山市で開催された成人式の会場で、新成人の男性が顔や頭に大けがをして倒れていた事件で、警察は、式に来ていた新成人の建設作業員の男性2人(当時酒に酔っていた)を傷害の疑いで逮捕した事例があります」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

コメント