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インフル流行…手洗い時、ハンドソープ付ける前に手をぬらすorぬらさない? 医師に“正しい手順”を聞く

正しい手洗いの方法について、医師に聞きました。

手洗い時、せっけんやハンドソープを使う前に手をぬらした方がよい?(画像はイメージ)
手洗い時、せっけんやハンドソープを使う前に手をぬらした方がよい?(画像はイメージ)

 厚生労働省が10月3日、インフルエンザが全国的に流行期に入ったと発表しました。手洗いやマスクの着用、ワクチン接種などの感染予防対策を行うよう、呼び掛けています。

 ところで、手を洗う際、まず水で手をぬらしてからせっけんやハンドソープを使う人もいれば、手をぬらさずにそのまま使う人もいます。手洗い時はどちらの手順が正しいのでしょうか。正しい手洗いの方法やせっけん、ハンドソープのメリット、デメリットなどについて、「SOグレイスクリニック」(東京都品川区)院長で脳神経外科専門医、医学博士の近藤惣一郎さんに聞きました。

水で手をぬらすと洗浄成分が行き渡りやすい

Q.手洗いの際、せっけんやハンドソープを使う前に水でぬらすべきなのでしょうか。

近藤さん「そもそも、せっけんやハンドソープを使う前に手を水でぬらすことは、より効果的な手洗いをするために推奨されています。完全にぬらさなくても一定の効果はありますが、まずは水やぬるま湯でしっかり手をぬらした後、せっけんやハンドソープを手に取り、空気を含ませるようにしてよく泡立てるのが、最も効果的で効率的な手洗い方法です。その理由は次の通りです」

■せっけんやハンドソープを使う前に手をぬらすのが推奨されている理由
(1)泡立ちが良くなる

せっけんやハンドソープは、水と混ぜることで泡立ちます。泡は、汚れやウイルスなどを包み込んで浮き上がらせる役割があり、手洗いの洗浄力を高めるために非常に重要です。また、先に手をぬらすことで、せっけんやハンドソープがスムーズに水と混ざり、きめ細かな泡を素早く作ることができます。泡がしっかり立つことで、手のひら、手の甲、指の間など、隅々まで洗浄成分を行き渡らせやすくなります。

(2)予備的な汚れを落とす
先に軽く水で手をぬらすことで、手に付着している大きなほこりや目に見える汚れを事前に洗い流すことができます。手に汚れがたくさん付いていると、その汚れが邪魔をしてせっけんの泡立ちが悪くなることがあります。

先に汚れを落としておくことで、せっけんやハンドソープ本来の洗浄成分が、より効率的に微細な汚れや菌、ウイルスに作用しやすくなります。

(3)せっけんの使用量を適切にする
手をぬらさずにせっけんやハンドソープを直接付けてしまうと、泡立ちが悪いために必要以上に多く使いがちになることがあります。先にぬらしておくことで、適量のせっけんで十分に泡立てることができ、結果的に節約にもつながります。

Q.せっけんとハンドソープとでは、殺菌効果に違いはあるのでしょうか。

近藤さん「せっけんとハンドソープには殺菌効果の違いはありませんが 薬用かどうかで 効果は違ってきます。ですから 製品による違いが重要です。せっけんやハンドソープが菌やウイルスに対して効果を発揮する方法は、主に次の2つに分けられます」

■洗浄による「除菌」効果
せっけん成分(界面活性剤)の力で、汚れや菌、ウイルスを浮かせ、水で物理的に洗い流すこと。

■殺菌成分による「殺菌」効果
イソプロピルメチルフェノールなど特定の殺菌剤の力で、菌を殺したり増殖を抑えたりすること。

・一般的なせっけん/ハンドソープ
除菌(汚れ、菌、ウイルスを洗い流す)。主成分は「せっけん素地」や「界面活性剤」。殺菌成分は含まれていません。正しい手洗いで菌やウイルスの大半(95%以上)を除去できます。

・薬用せっけん/薬用ハンドソープ
殺菌+除菌

製品名やパッケージに「薬用」「殺菌」と記載があり、殺菌成分(例:イソプロピルメチルフェノール/IPMP)が配合されています。

通常のせっけんやハンドソープでも、物理的に洗い流す「除菌」効果は十分に高く、感染症予防に非常に有効です。特定の殺菌成分が配合されている「薬用」製品は、さらに高い殺菌効果を期待できますが、一般的な菌、ウイルス対策には通常のせっけんで十分という見解もあります。

Q.せっけん、ハンドソープを使うメリット、デメリットについて教えてください。

近藤さん「せっけん、ハンドソープのメリットとデメリットは次の通りです。ここでいう「せっけん」は主に固形せっけん、「ハンドソープ」は主に液体タイプや泡タイプのハンドソープを指します」

■固形せっけん
【メリット】

・高い洗浄力
せっけん成分(純せっけん分)の含有量が高く、洗浄力が優れている。

・コストパフォーマンスが良い
水分が少ないため、少量で長持ちし、比較的安価。

・成分がシンプル
せっけん素地以外の添加物が少ない製品が多く、肌への負担が少ない傾向にある。

【デメリット】
・泡立てに手間がかかる

泡立てるのに時間と技術が必要。

・衛生面で懸念がある
不特定多数が使う場合、せっけんの表面に前の使用者の汚れや菌が残る可能性がある。

・管理に手間がかかる
使用後に水気を切らないと溶けやすく、せっけん置き場のぬめりや汚れの原因になる。

■液体ハンドソープ、泡ハンドソープ
【メリット】
・利便性

ポンプを押すだけで使える。泡タイプは泡立てる手間が不要で、すぐに洗える。

・衛生的
ボトルで管理されるため、不特定多数が使ってもせっけん本体に直接触れず衛生的。

・薬用タイプを選びやすい
殺菌成分(IPMPなど)や保湿成分が配合された製品を選びやすい。

【デメリット】
・洗浄力がやや劣る

せっけん成分が水で薄められているため、固形せっけんに比べて洗浄成分の濃度が低い。

・コストパフォーマンスが劣る
特に泡タイプは、液体タイプに比べてせっけん成分の濃度が低く、割高になりやすい。

・添加物が多い場合がある
泡立ちや使用感を高めるために、合成界面活性剤や香料、防腐剤などが含まれることがある。

 洗浄力と肌への優しさを重視するなら固形せっけん、手軽さと衛生面を重視するなら泡ハンドソープ、強い殺菌効果を求めるなら、殺菌成分配合の薬用ハンドソープがそれぞれお勧めです。

【豆知識】あなたは実践できてる? これが正しい手洗い&感染症の予防対策です!

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近藤惣一郎(こんどう・そういちろう)

美容外科「SOグレイスクリニック」院長、美容外科医、脳神経外科専門医

1988年に京都大学医学部卒業後、脳神経外科専門医として脳卒中、脳腫瘍などの診療に約20年従事。後遺症や救えない命に対して医療の限界を感じるようになる中、「医療の力で顔や体の悩みを解決することができれば多くの人を喜ばせることができる」と確信し、2007年に美容外科医に転身。2010年、美容外科「SOグレイスクリニック」を開業。業務の傍ら、“ロンリー侍ドクター”としてテレビ番組に多数出演。SOグレイスクリニック(https://so-graceclinic.com/)。

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