福岡市長選PR“筋トレ”動画に「良い」「ばかばかしい」と賛否、NPO代表「何の関係が?」
筋骨隆々の男性が投票を呼び掛ける福岡市長選の啓発動画について、ネット上で賛否両論が出ています。

11月18日投開票の福岡市長選の啓発用に市選挙管理委員会が作った動画が、ネット上で話題になっています。筋骨隆々のタンクトップ姿の男性が「スムーズに投票を行うための強い肉体を」として足腰の強化などを呼び掛ける内容で、「興味を持ってもらう意味では良い」「どんな荒れ地に投票所があるの?」「投票に行くかは別」「ばかばかしいことに血税使っている」と賛否両論が起きています。
若者の投票率アップのため
動画は3種類あり、いずれも約1分~1分半。11月4日公開の1作目は「投票所にたどり着くためのトレーニング」と題して、スクワットで足腰を鍛える内容、7日公開の2作目は「投票用紙を美しく受け取るためのトレーニング」で、背中の筋肉を鍛える様子を映しています。ともに市の広報ツイッターなどで見ることができ、10日には最後の3作目が公開予定です。
福岡市選管事務局の広報担当者に聞きました。
Q.このPR動画を作った経緯を教えてください。
担当者「全国的にもそうですが、選挙では若者の投票率が低い傾向にあります。何とか若者に届いてほしい、選挙を認知して投票に行ってほしいという思いで、SNSを活用した選挙啓発を行うことにしました。SNSで話題になるような動画などの作成についてアイデアを公募しました」
Q.出演者はどなたですか。体にとてもツヤがあるように見えますが、オイルを塗っているのでしょうか。
担当者「福岡市民で、筋肉パフォーマー軍団『ALL OUT』代表の小原(おはら)明人さんです。オイルについては把握しておりません。ご想像にお任せします」
Q.選挙の啓発で、なぜ筋トレなのでしょうか。SNS上では「面白い動画を作ることと、投票に行くことは別」との声も出ています。
担当者「『選挙』と『筋トレ』という、関係ないと思われるものの組み合わせが、意外性があって面白いと考えました。『投票に行くことは別』といったご意見も、もっともですが、何より、まずはインパクトのある動画で若者に『福岡市長選挙』を意識してもらう、そのきっかけづくりにしたいと考えました」
Q.投票所は筋肉を鍛えないと、たどりつけないようなところなのですか。
担当者「もちろん、そんなことはありません。学校や公民館などに設置しています」
Q.筋トレを見せるテレビ番組を意識していますか。
担当者「今、筋トレが『熱い』ことに気づいてはおりました」
Q.動画の作成にいくらかかっていますか。
担当者「動画などの作成やネットでの拡散など関連費用を含め150万円です」
Q.市民の反応は。
担当者「ネット上では好意的なご意見を多く頂いているようです。ありがとうございます」
Q.市長選への市民の関心は。
担当者「この動画が話題になったことなどで、少しずつ市民の関心も高まってきているのではと期待しています。一人でも多くの市民に、投票に行っていただきたいと考えています」
この動画のほかにも、福岡市選管は、ウルトラマンを「あなたの一票、ウルトラ大事」というコピーとともにポスターなどに使い、啓発活動をしています。福岡市長選の投票率は1994年に過去最低の31.67%を記録し、その後も30~40%台と低迷。現職と元職を含む6人が立候補した前回2014年の選挙も38.73%でした。今回は、共産推薦の新人と3選を目指す現職による選挙戦となっています。
市民の立場から行政の監視活動をしているNPO法人「市民オンブズマン福岡」(福岡市中央区)の児嶋研二代表幹事は、次のように指摘しています。
「話題性のある題材で関心を引くという狙いかもしれないが、『動画が面白かったから投票に行く』とはならないのでは。筋トレもウルトラマンも、『何の関係があるのか』と思う。もし若者に訴えるなら、手法はアニメでもよいから、これからの街をこれからの若者がどう考えるか、というものにすべきだ」
(オトナンサー編集部)
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