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“ウソ商品”もアウト!? 「エイプリルフール」のジョークが招く法的リスク

エイプリルフールにうそをついたことで他人に損害を与えた場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。

エイプリルフールのうそで法的リスクは?
エイプリルフールのうそで法的リスクは?

 4月1日は「エイプリルフール」です。この日は、「うそをついても許される日」といわれており、家族や友人を驚かせるために、うそをついたことがある人は多いのではないでしょうか。また、企業がSNS上で架空の商品の発売を発表し、話題となることがあります。

 一方、あまりにもひどい内容のうそをついたり、本当の話だと誤認させるようなうそをついたりすると、人に損害を与えてしまったり、人を傷つけてしまったりする可能性があります。過去には、会社の経営者が「自社が倒産した」という内容の情報をSNS上に投稿し、問題となったケースがあります。

 エイプリルフールにうそをついたことで他人に損害を与えた場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。冗談のつもりで「A社が倒産した」「施設に爆弾を仕掛けた」などのうその情報をSNS上に流すリスクについて、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士が解説します。

偽計業務妨害罪に該当する可能性

 4月1日に冗談のつもりで「A社が倒産した」と、うその情報をSNS上に投稿した場合、倒産の投稿により、その企業の業務が妨害される場合があるため、刑法233条の偽計業務妨害罪に該当する可能性があります。

 偽計業務妨害とは、錯誤に陥らせることにより、他人の業務を妨害することをいいます。実際に業務を妨害されたかどうかは問われません。法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。また、その企業が実際に業務を妨害されて損害を被った場合には、民法709条の不法行為に基づく損害(慰謝料)賠償責任を負う可能性が考えられます。

 株式の相場変動が目的でうその情報を投稿し、企業の株価が下落した場合は、金融商品取引法違反に該当する可能性があります。同法では、ある特定の株式の相場変動を図ることを目的として、証券取引や上場会社などに関する事実関係の未確認情報や合理的な根拠のないうわさをネット上などに流す行為を「相場操縦行為」や「風説の流布」として禁じています。

 違反した場合、同法197条1項5号に基づき、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはそれらの併科に処せられる可能性があります。

 また、4月1日に冗談のつもりで、公共施設や商業施設などに「爆弾を仕掛けた」といったうそをつくことにより、警察が出動したり、店舗が閉店になったりして、他人の業務を妨害することになる可能性があるため、先述の偽計業務妨害罪に該当する可能性があります。「エイプリルフールの冗談」では済まされないでしょう。

架空商品ネタは許される?

 このほか、毎年4月1日になると、企業がSNS上で架空の商品の発売を発表するケースが見受けられます。もし「架空の商品」「エイプリルフール向けの企画」だと分からない形で、あたかも実際に発売する商品だと消費者に誤認させた場合、行政法規の観点では、景品表示法違反や特定商取引法違反に該当する可能性があります。景品表示法は、商品の不当表示に関する措置命令に違反した場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金を科すと定めています。

 また、特定商取引法は、重要事項について事実と異なることを告げることを禁止しており、違反した場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金またはそれらの併科に処せられる可能性があります。

 民事責任については、架空の商品やサービスの種類・内容にもよりますが、実際に商品が発売されずに、具体的に損害を被った事業者や個人に対して、民法709条の不法行為に基づく損害(慰謝料)賠償責任を負う可能性が考えられます。主に事業者が架空の商品を仕入れて販売する予定でスタッフを採用したり、倉庫を借りたりする準備行為による損害が考えられるでしょう。

 一方、個人が架空商品を使用できなかったとして、「精神的損害=慰謝料」を請求する場合、具体的な損害の証明ができなければ、難しいと思われます。

(オトナンサー編集部)

【画像】「知らなかった…!」 これが日本で「死刑」が定められている犯罪です(12枚)

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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