職場のお土産は女性社員が配るべき? ネット上で「理解に苦しむ」などの声も…専門家は?
「お土産や差し入れは女性社員が配る」文化が根付いている会社は少なくないようですが、ネット上では賛否の声が飛び交っています。

「頂いたお土産はなぜか必ず女性社員が配ることになっている」。職場におけるこのような体験談が先日、ネット上で話題になりました。配布だけでなく、ケーキやフルーツなどの切り分けから頼まれるケースもあるといいます。
ネット上では「理解に苦しむ文化」「時代錯誤」「仕事に支障が出るからやめてほしい」という声が上がる一方で、「これが嫌だと言うなら、重い物を運ぶのを男性に頼むのもやめるべき」「それくらいやってもいいと思う」「コミュニケーションが取りやすくなるから、むしろやりたい」などの意見もあり、賛否両論が飛び交っています。
識者の見解とはどのようなものでしょうか。職場のコミュニケーション術に詳しい、人材開発コンサルタントでコラムニストの松尾知枝さんに聞きました。
先進国として恥ずべき文化
Q.職場において、お土産や差し入れなどを「女性が配る文化」についてどう思われますか。
松尾さん「先進国として恥ずべき文化だと思います。しかし、古い社風の色濃く残る会社や年齢が高い男性社員には、いまだにこうした男尊女卑の価値観が強く根付いているのは事実です。私自身、国内線の客室乗務員として働いていた際、年配男性のお客様に『おい、新聞!』と言われてびっくりしたのを覚えています。
『補助的で家庭的なニュアンスのある業務は女性が行って当然』という感覚が抜け切れていない人が多い職場では、『若い女性が配った方がおいしく感じられる』『そんなもの、男がやるもんじゃない』など、職場における業務分担として、およそ合理的とは言いがたい言い分がまかり通っているケースが少なくありません。
『女性がお酒の席で男性社員、あるいは取引先にお酌(しゃく)をする』という『お酌文化』も同様です」
Q.具体的にどのような問題があるのでしょうか。
松尾さん「『女性がお菓子の配布やお酌を行う』慣習の背景には『女性はホステスのようなもの』という感覚が見え隠れしており、セクハラの温床になりかねません。
また、女性に本来の業務とは関係ない雑用を任せても違和感を感じないという感覚は、男女雇用機会均等法の観点からも問題です。厚生労働省公式サイトでは、『男性労働者は通常の業務のみに従事させ、女性労働者についてのみ通常の業務に加えてお茶くみ・掃除等を行わせることは均等法に違反します』と明記されています」
Q.このような文化のある職場において、男性と女性はそれぞれどのように振る舞うべきだと思われますか。
松尾さん「男性の場合、傍観しているのは加担しているのと同罪です。職場に差し入れなどがあった際、女性に任せるのではなく、自ら率先して動くのもよいでしょう。しかし、伝統的な会社ほど、また、社員の平均年齢が高い会社ほど、こうした保守的な文化が根強く残っているものです。急にこれまでの慣習と異なる動きをして、社内で反感を買うのはスマートとは言えません。
まず、ほとんどの女性は『“喜んで”お菓子の配布やお酌をしているわけではない』ということを肝に銘じておきましょう。その上で、配ってくれた女性社員にお礼の気持ちを伝えるなどしていくと、職場全体の意識や雰囲気も徐々に変わっていくものです。
一方、女性の方も長年の文化にすっかり染まっていて、それがおかしいことだと気付いていない場合があります。気付いたとしても、先述の通り、保守的な雰囲気の社内で、いきなり『私はやりません!』などと言い出すのは、得策とは言えないでしょう。
手土産の配布を任された際、自分はこれまで通り動いたとしても、後輩の女性社員には必要以上にそういった補助的な仕事をさせないというのも一つです。会社の慣習ではあっても、社会的には『普通』『当たり前』ではないことを、後輩たちに教えていくことが大切です」
Q.実際にお土産を配ることになった際、気をつけるポイントや振る舞い方はありますか。
松尾さん「最近では、セルフサービス形式を採用する企業が増えています。共有スペースに置いておき、各自、取りに行くように促すのがベストです。しかし、カットしたフルーツやケーキなど、臨機応変に配った方がよいケースもあります。その場合は、女性だけでなく、男性にも協力を仰ぐとよいでしょう。『分担した方が効率的なので、一緒にいかがですか』などと一言添えると、スムーズに協力してもらいやすくなります」
(ライフスタイルチーム)
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