交番で「お金」が借りられる!? 緊急時に利用できる制度「公衆接遇弁償費」って何? 弁護士に聞いてみた
財布を落としてしまい、帰宅するための現金がなくなった――。そんな緊急時に利用できる「公衆接遇弁償費」という制度について知っていますか。弁護士が解説します。
「財布を落としてしまった」「盗難に遭って財布がなくなった」といった理由で手持ちの現金がなくなり、家に帰ることができなくなった経験、あなたにはありませんか。実は、このような事態に陥った際、警察署や交番などへ行ってお金を借りることができる「公衆接遇弁償費(こうしゅうせつぐうべんしょうひ)」という制度があるそうです。
覚えておくと、いざというときに役立つこともあるかもしれない「公衆接遇弁償費」、どんな制度なのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
借りられる金額は原則1000円まで
Q.「公衆接遇弁償費」とはどんな制度ですか。
牧野さん「公衆接遇弁償費とは、財布を落としたり盗難に遭ったりしたときに、電車賃など帰宅に必要な交通費、または事故に遭った人を救済するためにかかる一時的に少額のお金を、警察(行政機関)から借りることができる制度のことです。
この制度は、全ての都道府県で利用できるわけではありません。公衆接遇弁償費が導入されているのは北海道、岩手県、群馬県、東京都、山梨県、大阪府、京都府、石川県、熊本県の9都道府県です」
Q.公衆接遇弁償費は、どうやって利用するのですか。また、借りられる金額の上限は。
牧野さん「公衆接遇弁償費の利用が認められる『借り入れ理由』は次の通りです。
(1)外出先で所持金を盗まれ、または遺失した者に対する交通費
(2)行方不明者等の保護にあたり、応急的な措置に要する経費
(3)行路病人の保護または交通事故等による負傷者の救護にあたり、一時的応急措置に要する経費
(4)その他公衆接遇の適性を期するため必要とする経費
利用できる行政機関としては交番や警察署、また近くにパトカーや白バイがいれば対応してもらえます。借りられる金額は原則1000円までですが、電車賃が高い傾向にある地方の場合、1000円以上借りられる都道府県もあります(熊本県は上限5000円)。
未成年者(現在は民法改正で18歳未満)が『財布を失くした』などの理由で交番へ行き、制度の利用を申請した場合には、必ず親に連絡されます。民法の規定により、未成年者は親の同意がなければお金を借りられない(第5条)ためです。
なお、所持金が残っていたり、『家族に迎えに来てもらえる』など他に対処法があったりする場合には、この制度を利用することができません」
Q.警察署で借りたお金は、いつまでに、どうやって返すのでしょうか。また、もし返さなかった場合はどうなるのですか。
牧野さん「借りたお金の返済は、実際にお金を借りた交番へ返済書と現金を持って行くことが原則です。返済期限や利息はありませんが、なるべく早く返しに行くべきです。
お金を借りた交番へ出向くのが難しい人は、自宅近くで返済することも可能です(「公衆接遇弁償費事務取扱要綱」より)。例えば、最寄りの交番や警察署、パトカーでも返済を受け付けてもらえます。
返済する意思がないと判断されてしまうと、詐欺罪(寸借詐欺)で逮捕される可能性があるので注意しましょう」
(オトナンサー編集部)
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