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卒園式で初めて「別れ」を認識 自閉症の息子に感じた“大きな成長”

息子が初めて見せた感情表現

 息子は1歳半健診で発達の遅れを指摘されたため、2歳から療育に通い始めました。もろもろの理由から、いくつもの施設を転々としながら幼児期を過ごしたため、毎日のように通っていた居場所を離れる経験は、初めてではありません。

 しかし、どの別れのときも、親の私は悲しいのに息子はあまりにドライで、「別れ」をあまり認識していなかったように思います。それは人や居場所への思い入れが、障害の特性ゆえに薄かったからなのかもしれません。

 そして、息子は別れた実感がないまま次の生活に移るので、しばらくたってから時間差で不安定になることもありました。私は息子のそういった部分に対して、どこかむなしく残念に思っていたのです。

 しかし、幼稚園と療育の卒園式では、息子はこれまでの「別れ」とは明らかに違う姿を見せました。ちゃんと「お別れ」を悲しんでいたのです。

 それは、知的障害があり、物事の理解が難しい息子の大きな成長の一歩でした。だから、私が最も気になっていた「息子は別れを理解できず、いつの間にか園生活を終えてしまうのではないか」という不安が払拭されたことが、何よりもうれしかったのです。

 誰だって、長い間過ごした居場所を離れるのは怖いものです。それは大人も子どもも、健常者も障害者も同じです。「出会いがあれば別れがある」と言うのは簡単ですが、6歳の息子がそれを受け入れるのは相当な試練です。

 これまでたくさんの出会いと別れを経験してきた息子が、初めて「別れ」を理解したこと。そして葛藤して導き出したであろう卒園式での行動は、的外れではあるけれど、私にとっては愛すべき成長の形でした。

 そして、息子にとって「失いたくない、別れたくない居場所」をつくれたことがうれしく、関わってくれた方々に感謝しています。

子どもの成長を見逃したくない

 息子のように障害があったり、発達に課題があったりする子を育てていると、どうしても園生活や学校生活の節目の行事でうまくいかないこともあると思います。時に、みんなと同じように行動できず、1人だけ目立ってしまうわが子にヤキモキしたり、悲しくなってしまったりすることもあるのではないでしょうか。

 しかし、一見困った行動に見えた子どもの行動の裏には、意外な成長が隠されているかもしれません。

「どうしてそんな行動を取ったの?」と、本人に聞けるなら聞いてみてもいいですし、聞けないのなら想像を巡らせてみると、もっと子どもの心に近づけるかもしれません。

 これからも、子どもにとって大切な一つ一つの節目をかけがえのない思い出として迎え、子どもの成長を見逃さずにいたいと思います。

(ライター、イラストレーター べっこうあめアマミ)

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べっこうあめアマミ(べっこうあめあまみ)

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

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