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飲酒前に「牛乳」「飲むヨーグルト」摂取→酔いが遅くなる&二日酔い予防は本当? 管理栄養士に真偽を聞いた

飲酒前に「牛乳」や「飲むヨーグルト」を飲むことで「酔いが遅くなる」「二日酔いを予防できる」という情報があるようです。実際のところはどうなのか、管理栄養士に聞いてみました。

牛乳やヨーグルトで「酔いが遅くなる」?
牛乳やヨーグルトで「酔いが遅くなる」?

 新年会など、お酒を飲む機会が増えるシーズンです。飲酒による“酔い”に関して、ネット上では「お酒を飲む前に、牛乳や『飲むヨーグルト』を飲んでおくと、酔いの回りを遅らせたり、二日酔いを予防したりする効果がある」という情報がみられます。これについて、「本当なの?」「ヨーグルトにそんな効果があるのか」「食べるヨーグルトじゃダメ?」といった声が聞かれます。

「飲酒前に、牛乳や『飲むヨーグルト』を飲む」ことで、実際にそうした効果は期待できるのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

タンパク質、ビタミンB1がアルコール分解を助ける

Q.「飲酒前に牛乳やヨーグルトを飲むと、酔いの回りが遅くなる」のは本当ですか。

岸さん「間違ってはいないかと思います。アルコールのみの場合は胃や腸ですぐに吸収されますが、ヨーグルトや牛乳には乳脂肪(脂質)が含まれているため、空腹状態でアルコールを摂取するよりも消化が緩やかになります。よく聞く『牛乳が胃の中に膜を張るので、アルコールがゆっくり吸収される』ということではなく、乳脂肪が胃の動きを抑制し、アルコールの吸収を遅らせるということです。

また、一般的な牛乳やヨーグルトには、アルコールを分解するときに必要な栄養素の一つであるタンパク質や、アルコールの分解を助けるビタミンB1も少量含まれています。ヨーグルトでこれらの栄養素が摂取できることも、酔いの回りが遅くなる理由の一つだと考えられます」

Q.牛乳やヨーグルトを飲むタイミングや量について教えてください。ヨーグルトの場合、食べるタイプのものでも同様の効果がありますか。

岸さん「飲むタイミングは、飲酒する30分前~直前くらいがよいでしょう。飲む量は100~200cc(コップ1杯分)程度が適量です。食べるタイプのヨーグルトでも同様の効果は期待できますが、飲むヨーグルトの方が簡単に取り入れやすいというメリットがあるかと思います。牛乳など他の乳製品でも、『乳脂肪ゼロ』のものでなければ同様の効果が期待できるでしょう。

ただし、飲むヨーグルトは多くの砂糖が含まれているため、飲み過ぎによるカロリーオーバーに注意しましょう。また、ヨーグルトには脂質も多く含まれる上、飲みの席では唐揚げなど脂質の多いメニューも多いので、脂質の取り過ぎに注意してください。

そして、重要なのは『牛乳やヨーグルトさえ飲んでいれば酔わない』『お酒が飲めるようになる』というわけではないことです。『空腹時にお酒を飲むよりかは少しマシ』程度に認識してほしいと思います」

Q.その他、飲酒前・飲酒中に摂取することで酔いの回りを遅らせることができる食べ物などはありますか。

岸さん「シジミに多く含まれるオルニチンは、肝臓で有害な毒素を無害にする役割をもち、イカやタコに含まれるタウリンには、アルコール分解に必要な酵素の働きを助ける働きがあります。どちらも、サプリメントや栄養ドリンクなどでよく見る成分かと思いますが、おつまみなどからも摂取できると、二日酔いや疲労感の軽減にも効果が期待できます。

また、ダイエットを意識している人は、お酒の席でご飯などの糖質を控えることが多いと思います。しかし、飲酒時に糖質を取らない場合、肝臓のエネルギー源が不足し、アルコールの処理能力が低下することで、二日酔いや胃もたれが起こりやすくなります。糖質が多いご飯や麺類を食べることで、これらを防ぐことが期待できます。

『おつまみに生野菜や、タンパク質を含む枝豆、豆腐、卵、肉などを選ぶ』『ご飯もしっかり食べる』など、アルコールを摂取するときもバランスのいい食事に気を付けることで、アルコール分解に必要な栄養素を補給しやすくなります。さらに、水も多く飲むなど工夫しながら、肝臓の負担を減らしていくとよいでしょう。ヨーグルトや牛乳だけに頼らず、お酒を飲む前や飲んでいる最中のおつまみなども工夫して、お酒を上手に楽しみましょう」

(オトナンサー編集部)

岸百合恵(きし・ゆりえ)

プロボクサー、管理栄養士、日本糖尿病療養指導士

病院食の管理・調理業務や企業での特定保健指導を経て、生活習慣病診療を専門とするクリニックにおいて5年間、栄養指導を実施。アスリートとしても夢を追い掛け、2017年に日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストに挑戦し、一発合格。「闘う管理栄養士」として、チャンピオンを目指して日々トレーニングに励みながら、ボディーメークや健康管理の指導を行う。現在は、スポーツ・睡眠歯科分野の診療を行う歯科医院で、アスリートへの食事指導や、一般患者へのダイエット、フレイル・サルコペニア予防の指導を行う他、内科クリニックで生活習慣病患者に対する食事指導を行っている。

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